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「カランコロン」

想い人がきたのだろうかと、そわそわしている私は、入り口に振り向くが、残念ながら待ち人ではなかった。

今日はネットで出会った人との初対面。声は聴いたこともあり、なんとなくだが性格もわかる。待ち合わせに選んだ場所は、少し背伸びをした喫茶店で、周りはビジネスマンというよりカップルが多いイメージ。そこを待ち合わせにしたのは、彼女が喫茶店が好きだから。

正直、喫茶店にくるのは初めてで、萎縮しまくっている。周りから浮いているんじゃないだろうか、彼女がきたらどんな話をしようか。期待と不安がまるでシーソーのように行き来している。考えても仕方のないことだとはわかってるのだが。

そんなことを考えていると、手汗がでてくる。誤魔化すために水滴のついたグラスにあえて触れ、「ゴクリ」と一口。喉を潤す。

なかなか来ないな。一時間ほど待っているが、連絡もない。どうしたのだろうか。連絡をしないで遅れてくるような人ではないと思っていたので、心配で仕方なかった。こちらから連絡をしたほうがいいのだろうか。変に思われたくない私は、そんなことですら躊躇してしまう。

その時「カランコロン」

ばっ!と振り向いた。

が、そこで私は夢から覚めた。時計を見る。着信履歴でいっぱいのスマホを見つめながら

「遅刻は、俺の方だったのか」

連絡をしつつ、待っているであろう喫茶店に、急いで向かうも、彼女の姿はなく連絡もそれっきりだった。

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