掌編小説【うっかり】♯毎週ショートショートnote

お題「大増殖」「天使のキス」

【うっかり】(410文字)

「これはいったいどうしたことか！」
「申し訳ありません天使長様。ついうっかり～」
「どうするのだ」
「下界に投下するしかねぇかと」

天界では、下界に住む者たちへの恵みをいったん天のプールに溜めておくことになっている。そしてタイミングを見計らい必要量を投下するのである。
しかし今回、『天使のキス』が溜められたプールに、増殖材である『愛』を投入しすぎてしまった。それは新参者の、うっかり八兵衛がやらかした事であった。

「八兵衛、そもそもそなたクリスチャンだったか？」
「へえ。ちょいと前にうっかり洗礼受けちまいまして」
やれやれと天使長は首を振った。それを見た八兵衛は投下の合図と思い、プールの中の『大増殖天使のキス』をひっくり返した。
「あっ！」

それは、たまたま真下にあった北の戦場に降り注ぎ、兵士や政治家の荒みきった心を大量の愛で潤すことになった。
愛はやがて彼らの愛を呼び覚まし、戦争は終結した。

うっかり八兵衛もたまにはいい仕事をする。

おわり

(2023/1/24 作)

上記の『たらはかに』様の1/22～1/28のイベントに参加させていただきました☆
うっかり八兵衛ってご存知でしょうかねぇ…(;・∀・)水戸黄門というドラマに出てくる、うっかり者です…
なんか、うっかり出てきちゃったんですよね…どうしてかしら。ナゾ。