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掌編小説【懺悔】♯毎週ショートショートnote

お題「告白雨雲」

「懺悔」(410文字)

ポツリ、と雨粒が落ちてきた。
上空の雨雲がゆっくりと降りてきて、徐々にわたしを包み込む。
足が地面から離れるのがわかる。
間もなくわたしの全身は完全に雨雲に包みこまれてしまうだろう。
その時わたしは告白しなくてはならない。真実を。
そうしなければ私の身体は少しずつ水滴化していつしか雨になってしまうのだ。
「さあ、本当のことを言いなさい」
低く湿った声が耳元で優しくささやく。私はぶるっと身を震わせる。
「『告白雨雲』で語られた罪は解放されるのです。恐れることはありません」
私はすでに全身ずぶ濡れで、口の中も水でいっぱいだったがなんとか声を絞り出した。
「わたしが…やりました」
「なにをやったのですか」
「すべて…です」
「この惨状の責任はすべてお前にあると言うのですか」
「そう…です」
『告白雨雲』はさらに低く湿った声でささやいた。
「お前の罪は解放された」
その声とともに雨雲は消え、取り残された私は上空五千メートルから地上に急降下していった。

おわり (2022/10 作)

上記の『たらはかに』様の10/23-10/29のイベントに参加させていただきました(*'ω'*)
参加の仕方、合ってるかしら…

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