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掌編小説【おもちゃ箱】♯毎週ショートショートnote

お題「立方体」「の思い出」

「おもちゃ箱」(410文字)

立方体のおもちゃ箱を見ると哀しくなる。
ぎゅうぎゅうと押し込められたおもちゃ達が、幼子の気まぐれによって解放される。
解放されたおもちゃ達は四方八方に飛び散る。
混沌。
「もうっ、またこんなに散らかして!ごはんまでに片付けるのよ!」
「あとでまたあそぶからいいんだもん」
「いいわけしない!」
部屋いっぱいに拡散したものは収縮するしかない。
混沌は主の一喝によって回収されていく。
クマのぬいぐるみ、ブリキの自動車、ゴムボール、松ぼっくり…。
柔らかいぬいぐるみは後から…などという常識は幼子には通用しない。微笑んだまま捻じ曲げられ立方体に押し込められていくクマは、未来のわたくしを暗示しているようだ。

はるか昔、わたくしも立方体の闇にいた。
しかしある時、主によって立方体は解放された。
この解放を人は『ビッグバン』と呼ぶ。
しかし拡散したものは、いつか主の一喝によって収縮へと向かう運命だ。
そんな立方体の思い出が、ぬぐえない哀しみとして、ある。

おわり (2022/11/7 作)

上記の『たらはかに』様の11/6-11/12のイベントに参加させていただきました(*´ω`*)
書いている時は風邪を発症し始めており、このあと二日間寝込んでおりました。ただの風邪でよかったですけれど~
妙な仕上がりなのは、そのせい…と、いいわけです。(;・∀・)
みなさまも、ご自愛くださいませ…

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