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米津玄師:HYPE tour

「HYPE」ツアー 2020年2月16日

 コロナウィルスが流行る前、最後に行ったのが米津玄師のライブだった。このライブ後の他バンドのライブは全て延期と中止になった。それは今現在も変わらない、1ヶ月先の夏フェスでさえもう中止の告知がきてしまった。挙句、ついにロッキンまでも死んでしまった。

 夏フェスがない夏なんて、トマトソーススパゲッティのトマトソースないやつと一緒。

 多くの払い戻しに追われて、宙に浮いてしまったお金が沢山ある。そのお陰でお金持ちだけど、全然嬉しくないわけで、せっかく良いことしたのに、それ別にやらなくてもよかったやつだよ?と言われるくらいには嬉しくないやつ。ああいうの後からいうのやめてほしい。

 バンドマンもこのご時世にあわせて、インスタライブや、無料でYouTubeにプレミア公開でライブ映像を流してくれる。なんて幸せな世界だとおもうのだけど、やっぱり我々はライブハウスに行きたい。自分の目で、音楽を見て感じたいと思う。

 もしかしたら、今年最後だったかもしれないそんな米津玄師のライブを今更ながら振り返ろうとnoteを開いてしまった。

米酢ってやると、米酢ってでるから、このまま米酢って書きたいけど、多方面から怒られるから米津にする。

 そもそも私が米津玄師にはじめて出逢ったのは、パソコンの中だった。中学生の時、動画サイトで流行した電子音から生まれた彼の曲が、ネットを通して私の鼓膜を震わしていた。まるで御伽噺話のような物語性とメッセージの強い言葉を綴った音楽が特徴だった彼の曲に釘付けだった。



 勿論、声は彼自身の声ではなく「初音ミク」などボーカロイドの声を使用していた音楽。しかし、いつしか彼が自らの声で、音源をあげるようになり、なんとライブまで行うまでになった。そういうのもアリなんだと、思ったけど、なにがアリなんだ。アリだよ。

 そんな、生身の彼を初めて観たのは、2015年に行われた「RADWIMPS」の胎盤ツアーだ。

 目の前で感じた彼の歌声と姿に宙を見るような瞳で彼を捕らえ息をのむ、それほどまでに聞き惚れたのを今でも覚えている。ライブ終わりのあの耳鳴りさえ愛おしく思えたのだ。恐ろしい子、米酢。米津。
 それから彼のワンマンツアーに毎年、足を運ぶようになってしまった。勿論フェスに出ている時は彼のステージを観に行った。しかし、ワンマンはフェスや対バンでは見せない彼だけの世界があり、それに足を踏み入れると、その魅力に引き摺り込まれていくのがわかった。


 そして、今年2020年の2月16日の「HYPE」のワンマンツアー。

この日も私の目には、新たな彼の姿があった。
 横浜アリーナ全体に、イントロダクションが響きはじめると徐々に米津のシルエットがステージに映り込む。

 観客が騒めいているうちにステージが一面赤くなり、米津の掛け声で幕が上がった。
 休まず楽曲は続いていき、響き渡る美しい高音と穏やかな静けささえ感じる儚く優しい低音が私を撫でるようだった。彼の歌声や演奏から情景も感情も全身を駆け巡っていった。
 世間に広まった有名な曲もパソコンの中で釘付けになった曲も披露されていく。下手をすれば不協和音になりかねないメロディや複雑なリズムの構成も、音楽へのキャッチーさを損なわない音作りをするのが彼だ。

 上がると思ったら、上がらなくて、下がると思ったら下がらない、単体できくときっとバラバラなその音は、彼の中に収まってしまえば彼のものになる。(特にでしょましょと、ポッピンアパシーとかほんとそう思う)

 そんな数々の曲は、もう二度と戻らない懐かしい記憶を思い出す感覚になって、思わず感嘆の吐息がもれる。彼らがだす空気の振動を、全身で受け止めると足の指先から頭の先まで、鳥肌がたつようなのだ。
 多彩な彼の表現力は、歌や演奏だけではない。ステージだからこそできる映像を使った演出も彼の個性がステージを乗っ取っていく。

やめろ、これ以上良いものをつくるのはやめろ!と叫びたくなる。

 高鳴り合う鼓動が身体に浸透し、目の前で映像と音楽が遊んでいる。年々とライブパフォーマンスが進化しているのだ。
 なんだか、5年前のあの頃はまだ彼の中をそっと覗き込んでいるような感覚だった。陰鬱だったようにみえたあの頃から進化し続け、彼の音楽への「自信」が目に見えるように満ち溢れ、彼は舞台で煌々と輝いていっていた。

 あぁ、かっこいい、成長したなぁ、こんなにチケットも取れなくなって、こんなに大きいところで歌を歌って、そんなに大きな声をあげれるようになって。あんなに声小さかったのにね。ボソボソなパンを食べてみたいなMCしてたのに。

昔から知っているから、

という理由ではなくて、純粋にそう思った。嬉しい反面、寂しい。テレビに使われて、メディアへの露出も増えた。皆んなが口を揃えて「米津玄師」めっちゃ良い、lemon凄く好きと言ってカラオケで歌ってくれるのも凄く好き。(lemonに関してはメロディも歌詞も綺麗すぎて、怖いくらい米津じゃなくて米酢。)

 画面の中で、まだひっそり音楽を作って、まだ少し小さいステージでマイクを握って、触れるんじゃないかと思うくらいの近さにいた彼が、今はこんなに遠い。そりゃ、制服を着ていた私がパソコンを背負って会社に行ってるくらいだもん、成長するよね、と思うけど成長しすぎだ。

 彼の歌と音楽は、私たちの寂しさを覆い隠すように、今や大勢の心に入り込み、熱狂と心酔をさせていく。

あ、これはあれ。その感嘆の連鎖はまるで、ウィルスなのだ。

【セットリスト】

1.LOSER
2.砂の惑星
3.Flamingo
4.WOODEN DOLL
5.海の幽霊
6.眼福
7.アイネクライネ
8.パプリカ
9.ごめんね
10.ピースサイン
11.パンダヒーロー
12.しどど晴天大迷惑
13.爱丽丝(アリス)
14.TEENAGE RIOT
15.でしょましょ
16.Lemon
17.ララバイさよなら
18.馬と鹿

アンコール

19.ゴーゴー幽霊船
20.灰色と青
21.ホープランド

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