自己肯定感って、上げなきゃいけないの?
「日本の学生は、自己肯定感が低い!!なんとかしなければ!!」
こんな声を、教育機関だけではなく色んなところで耳にします。
確かに2015年の調査によると、日本の高校生の72%が、「自分をダメな人間だとおもったことがある」と回答しており、これは日中米韓で比較するとダントツで高い数値だったようです。(ちなみに韓国は37%)
そもそも自己肯定感とは、「ありのままの自分を受け入れ、尊重する感覚」(一般社団法人・日本セルフエスティーム普及協会)であり、精神的に追い詰められても、「自分には価値がある」と思えることです。いつでもポジティブで居られる能力ともいえるでしょう。
もちろん自己肯定感が高いことは素晴らしいことですし、私も学校においてそれは改善していくべき課題であると認識していました。
―――ついこの間までは。
次に示すのは、ある先生とお話させていただいた際の言葉です。
私は衝撃を受けました。
日本人は自己肯定感が低いと言われるけど、メタ認知が優れている、つまり集団の中での自分がよく見えているから表に出さないだけで、潜在的にはそこまで低くないんじゃないかなあ。
メタ認知とは、「自分を客観視すること」です。自分を客観視できると、集団生活の中での適切な振る舞いが見えてきます。
さらにメタ認知は、自己肯定感と対をなすものと言われています。自己肯定感が自信を加速させるアクセルなら、自分を客観視するメタ認知はブレーキといったところでしょうか。このブレーキが壊れてしまうと、いわゆる自信過剰の「浮いた人」になってしまうことが予想されます。日本の高校生は、このブレーキに関して優れたものをもっているといえるでしょう。
また、日本は「謙遜」を美とする文化です。これは善でも悪でもなく、日本の特徴の1つとして存在しているだけです。日本の高校生の自己肯定感が低かったのも、日本において「自己肯定感がある/ない」の基準が諸外国より高いからかもしれません。
その先生のお話を聞いてからというもの、「あれ、じゃあ無理に自己肯定感だけをあげようとしなくてもいいのでは??」という頭になってきました。もちろん、ある程度の自己肯定感の高さは必要ですが、それだけに注目してしまうとアクセルがぶっ壊れた「浮いた人」になってしまいます。
「いや、むしろそういう飛びぬけた人材を育成していかなければならないだろ!!」という方、よーく聞いてください。飛びぬけた人材を育成するには、メタ認知の育成は避けて通れないのです。先日、総合格闘家の朝倉未来さんが、雑誌のインタビューの中でこうおっしゃっていました。
「客観視」ができなければ、勝負に勝ちきれない。思い込みと現実のギャップを埋めることで、自分の弱みをつぶし、新たな強みを身につけることができるようになる。
「客観視」をすることで、自分の新たな面に気づき、そこを埋めていくことで成長につながっていくということを、朝倉さんはおっしゃっています。ちなみに朝倉未来さんのYoutubeはとても刺激的で面白いです。笑
なので、教育で自己肯定感をあげよう!!というスローガンのもと「すごいぞ!!」「その調子!!」といった声掛け等で自己肯定感というアクセルを発達させるよりも(そんなもので発達するかはわかりませんが)、メタ認知、つまり自分を客観視できる能力を育て、そのプロセスの中で様々な経験をし成長していくことによって、結果的に自己肯定感の育成につなげる、というルートの方が、この国や時代に合っている気がするのです。
以上、「自己肯定感って、上げなきゃいけないの?」でした。こういう物事をナナメから見るクセは、常にもっておきたいと思ってます。
最後までご拝読いただき、ありがとうございました。
2020.7.11
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