呪縛解放? そういうもの、という鎖? 仮❽
電線にとまる雀の群れ。
私が子どものころから随分と数が減ったように思う。
雀たちは仲間が減ってサビシサを感じているのだろうか。
それとも、
生まれた時からそうなのだから、
「そういうもの」だと感じているのだろうか。
まるで、人間のように…
いつからか日本人は、
ハッキリと言うことが素晴らしいことだと、
しっかりと自分の意見を持つことが正しいことだと洗脳(教育)されるようになりました。
悪いことではないことは確かですが、少なくとも長い日本の歴史の中で見れば、それが常識とされるのは異常な時代と言えるでしょう。
日本人はずっと、多くを語らず、他者を慮り、時には裏で立ち回って集団が上手く回るように調整してきたのです。
何千年・何万年と身体に刻まれてきた生き方や考え方をたった、数百年・数十年、もしくは数年で変えてしまうのだから、苦しいに決まっています。
不安になるに決まっている。
だから、人と比べる。
容姿で、年収で、学歴で、性別で、
住む場所で、肩書きで、暮らし方で…。
結婚した奴は不自由だ。自分のやりたいことをしないのを家族がいるからと言い訳する。家族を言い訳の道具にする糞野郎だ。
結婚しないのはサビシイ奴だ。いい年をして結婚しないのは何か性格に問題があるのだろう。社会的に信用ができない奴だ。
私は働いているのに彼女は専業主婦をしている。だから、非常識な面が目立つ。やはり、働いた経験がない女はだめだ。
働いているからなんだ。あの女は働いていることを盾にとやかく人のやり方に口を出してくる。単純に性格が悪い。
自身の不安から目を逸らすために自分と違う存在を悪とする。
不安を生じさせているのはあくまで自分自身であるのだが、脊髄反射的に現れる不快感に抗うことができない。不快感に操られている。
だとすると、その人は不快感という存在そのものと言えてしまうのですが、そのような醜さを直視するのは苦しくて他者を悪とするのです。
その不安は自分自身がそもそも持っている身体と時代が合っていない、という問題から生じているのです。
だったら壊すかい?
時代を…。
そして、あるべきカタチに戻すのだ。
けれど、戻るべき時代とはいつだろう?
どこから間違えてしまったのだろう?
経済が停滞を始めたとき?
他国の戦争を利用して復興を始めたとき?
戦争に負けて教科書を塗りつぶした時?
侵略を始めて戦争を始めた、もしくは巻き込まれたとき?
国を開き西洋の考え方を取り入れ、神道を国教として仏教を排斥したとき?
争いを終わらせ、国を閉じ、理想的な時給自足社会をつくり、一方で古代の王族を被差別民として追いやったとき?
銃やキリスト教を取り入れたとき?
権威を否定して下克上による無秩序が始まったとき?
足利が鎌倉幕府を滅ぼし皇統が二つに分かれたとき?
武士が力を持ち始めたとき?
力が説得力を持ち始めたとき?
仏教を取り入れて「個」という概念が持ち込まれたとき?
稲作と定住を始めたとき?
それとも、もっと前から?
そして、気がつく。
全てが間違っているのかもしれないと。
全てが壊されるべき対象なのかもしれないと。
私の好きな絵、音楽、映画、本。
食べるもの、
仕事、
学校、
家。
父も、母も、兄弟姉妹も、恋人も。
愛、夢、努力、喜び。
憎しみも、日常も、怠惰も、悲しみも。
そして、私自身すらも壊されるべきものだったとしたら…。
全てを理解した上で、
それでも壊すことを選んだモノ
全てを理解した上で、
それでも続けることを選んだモノ
あなたは何を善とする?
何を、悪とする?
あるいは、こう言うかもしれない。
「生まれたときからこうなのだから、そんなことは知らない」、と。
あの雀たちのように。
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