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夢の中の最初の彼

以前付き合った彼、彼らが変わる変わる夢に出てくる。
前の彼、その前の彼。たまに、中学時代に好きだった人とも会うことがある。
未練があるからだと、他人は思うだろうか。私からしてみると、ないと言えばないし、あると言われてしまえばあるのかもしれない。その程度だから正直のところ、そこに興味はないのである。
それに、今付き合っている人のことはとても好きだし、交際した人の中でいちばん大事にしたいと感じている。今更、前の彼と会おうという気はない。
そう断言できるのに、夢の中の私はそうではなさそうなのだ。そのせいで、ほんのちょっぴりだが未練があるのかも、だなんて考えてしまう。

「ねえ、私は、今のあなたがどうしているかとか、誰と付き合って、どう過ごしているのかとか、それが知りたいだけなの。もう一度仲良くしたいとか、そういうのじゃないの」

夢の中で、どういった経緯で彼にそう言ったのかは覚えていない。ただ、彼にそう言った記憶がある。
この彼——Rは最初に付き合った人だった。出会ったのは8年前、私が高校2年生の時だ。
放課後にあった進学講座で席が前後だったため、そこで話したのがきっかけだった。
Rには悪い噂があり、学校の中ではよく名前が知られていた。私はそのことを話し始めた後に知るのだけれど、私にとっての彼は悪い人ではなかった。だから、周りには止められたが、仲良くしたのだった。

「あの人、校舎奥の階段で先輩とヤったんだって」
「前の彼女に別れを告げられたら、彼女を脅迫してストーカーしてたんだって」
「あの子は告白されたら断れない。だから告白するな」
「初めての彼氏にするなら、彼はやめたほうがいいと思うよ」
「先生から話を聞いたけど、やめたほうがいいんじゃないか、問題を起こして停学したことがあるようだし」

しまいに先生や親まで出てきて、私を止めた。しかし、周囲の意見など子供の私の耳には届かない。次第に私たちの距離は離せないほど近くなり、付き合うことになったのだった。
そんな彼との交際はおよそ4年ほど続くこととなる。その間に何度も別れる、付き合う、を繰り返した。詰まるところ、うまくいかない男女はいつまで経っても落ち着いた関係になどなれないのだと思った。

「君はあの男と付き合った!あのとき、別の男のもとに言った君が悪いんだ!」

私の首を絞めながら彼は怒っていた。甘いカクテルを頭から浴びせられて、髪がべとべとに絡んで不快だったが、それどころではなかった。
やめて!くるしい!
私はがむしゃらで彼の腕や背中を殴った。
私が大学一年生の頃、別の男性を好きになってRと別れたことがあった。2年経ってもなお、Rはそのとこで私を責め立てるのだった。
元はと言えば、出会い系サイトで知らない女の子と会う約束をしていたRを私が責め立てていたはずなのに。なぜ私が首を絞められているのだろう?

それから、私はその出来事を理由に別れた。とは言っても、4ヶ月ほどは恋人のような関係が続いた。定期的に会っていたし、体も重ねていたから、恋人とは何ら変わりなかった。それでも私たちは彼氏彼女ではないという口約束を結んだから、恋人ではないのだ。
体の関係をもたない恋人が世の中に存在するように、体の関係を持つ友人も存在するのだ。むしろそちらのほうが多くいるのだろうと思う。
セフレと呼ぶには根深い結びつきのある存在を。

最終的に私たちは絶縁したのであった。友人としても付き合えない、私はそれほどまでにRを嫌悪したからだ。
何かあったのかといわれればあった。しかしながら、これというきっかけを答えるとしたら無い。度重なる彼の行動を許容できなくなっていき、引き金となったのが最後にあった出来事だということだけだ。

最後に会った日からおよそ2年半。やはり、今更あの彼と会いたいだとか話したいだとか、そんな気持ちは起こらない。そうだというのに、どうして夢にあなたは出てくるのだろう。


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