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【映画批評】#4「家出レスラー」ガチプロレスファンかつ岩谷個ファン、私の複雑な心境

現役プロレスラー岩谷麻優の自伝映画「家出レスラー」を批評!
ファンムービーとしては満点。ただブシロードよ、その志でいいのか?


鑑賞メモ

タイトル
 家出レスラー(105分)

鑑賞日
 5月29日(水)19:20
映画館
 大阪ステーションシティシネマ(梅田)
鑑賞料金
 実質0円(ムビチケ:エポスポイント購入)
事前準備
 当該団体・選手の大ファン、原作も読了済
体調
 仕事からの飲酒後、良し


点数(100点満点)

65点

ファンムービーとしての役割に徹しすぎでは?
「マニアがジャンルを潰す」と言った当人に問いたい。


あらすじ

「家出レスラー」HPより引用

ネタバレなし感想&X短評

岩谷麻優の半生を描いたファンムービーとしては◎
プロレスファン以外に届くのかと問われれば「?」としか言えない。


ネタバレあり感想&考察

プロレスとの出会い
スターダム、岩谷麻優にハマるまで

実は私、プロレスファンでして…
(過去記事読めばすぐわかるぐらい引用多数)
もともと新日Uインター対抗戦も幼いなりにテレビで観ていたぐらい、プロレスは好きでしたが、1997年5月3日、大阪ドームプロレスこけら落としである新日本プロレスのビッグマッチが初めてのプロレス観戦。(当時小3なりたての8歳、○橋本vs小川●2戦目がメインの大会)
そこからプロレスの虜になりました。ちなみに橋本だけでなく、その大会のスコット・ノートンに大興奮していたみたいです。現地観戦自体は2012年2月府立のレインメーカーショック(ここから観戦するようになる)までしていなかったですが、ワールドプロレスリングはほぼ毎週観ていたような少年時代でした。
今の今まで新日本プロレスはずっと観てきて、ここ数年はスターダムを中心にプロレスを観ている感じです。(現在、新日本プロレスとスターダムの親会社は同じブシロードです。)

スターダムとの出会いは、2014か15年あたりに大阪のどこかの区民ホールの大会を遠めの席で観たぐらいで正直あまり覚えていません。岩谷選手もいたのでしょうが、正直記憶にないです。もちろん楽しんだ記憶はあります。美闘陽子がかわいいから観てみたいという会社の先輩についていっただけで、スターダムとはそれっきりでした。その前後にあの世Ⅳ虎vs安川戦があり、女子は…という気持ちになってしまい、結局疎遠になります。岩谷選手自体は知っている状態、週プロ等で成長や活躍っぷり(3人娘時代やタイトル獲得等)を把握している状態ではありました。
そこから本格的に興味を持ったのはやはりブシロード(新日の親会社)がスターダムを買収してから。ジュリアの移籍騒動もあって面白いぞこれは、となってYoutubeを観ていくと面白い面白い。
コロナ禍も相まって観戦は控えていましたが、ついに2021年10月9日の大阪城ホール大会にてスターダムビッグマッチ初観戦。
セミがワンダーオブスターダム(通称白ベルト)のタイトル戦。当時の王者中野たむに挑戦したのが、本作主人公のモデル、岩谷麻優選手でした。

ここで一つ、話題を変えます。
プロレスの醍醐味って何でしょう?
試合、技の応酬、勝ち負け、ユニット抗争、マイク、思想のぶつかり合い…
これらも当然大事ですし、これらを醍醐味とするのも正解だと思います。

それでは私が思う、プロレスの醍醐味とは何か?

入場です。

これだけ長くプロレスを観ていると全く知らない団体でも、これで実力や選手のステータスがある程度わかります。

そしてこの城ホール大会で彼女の入場曲、「THE ICON」を初めて聴き、入場する姿を観たとき、何かがパーンと弾けました。

この日は女子としては異例の30分時間切れ引き分けで、タイトル挑戦は失敗に終わりました。興行通して観ましたが、間違いなく団体のエースだなと確信してから彼女の大ファンです。
新日本では橋本真也以外は長く観て中邑や棚橋など、個別に選手を好きになっていきましたが、いきなり心を掴まれたのは少年期の橋本以来です。
そのぐらい衝撃的な何かを感じ、現地観戦も新日からスターダム中心にシフトしていきました。
そうです。私はリアルガチにマユランドに引き込まれた一人なのです。

※この曲は私にとって、ジョックロック級の魔曲です。

女子プロレス=スターダム=岩谷麻優
スクリーンで体感できたのは貴重な経験
まずはありがとうと言わせてください

見出しのとおり。以上!(柴田勝頼) で終わっていいですか?笑
そういうわけにはいかないみたいなので、よかった点を挙げましょう。

①主演の平井杏奈さん

完全に憑依してましたね。ある種、演技を超えた何かというか、公開オーディションの時から観ていたので、彼女のドキュメンタリー映画といった要素もあり、そういった点でも楽しめる一作だと思います。
彼女の今後の活躍にも期待したいです。
(ブシロードは今後ちゃんと面倒を見るように!!)

②東子(世志琥)をちゃんと描いている

ゆきぽよが世志琥ちゃん役やるんかぇ?!って思ってしまいましたが、アイコンの半生を描くなら絶対外せないキャラクター。社会的なバッシングを受けた、巨瀬川(安川)との凄惨マッチを映画でしっかり描いていたのも誠実だと思いました。
せっかくなので、武道館での記念試合をラストに持っていってくれたらなぁと思う部分はありますが、世志琥選手(今は別団体)とのコンセンサスやすり合わせ、武道館クラスの会場の表現どうするの?とかいろいろ調整も必要だったかと思うので、そこは我慢できる範疇かなと。(ムリヤリ納得)

③現役選手のナイス演技

まずは朱里姉ちゃんから。羅月(花月)選手役として、プロレス指導監修として、大活躍でした。
もともと総合格闘技の選手で固い試合はお手の物ですが、楽しい試合もできる選手です。こういう選手が団体に一人いるかいないかで説得力が大きく違ってきますから、本当に貴重な選手だと思います。今回の演技でまた一つ新たな一面が観れてうれしい限りです。
そして、向後桃選手。もともと女優で大河ドラマにも出演経験のある方ですし、ハッキリした顔立ちでスクリーンでしっかり映えていました。今回の活躍でプロレス以外のアプローチも積極的にしてほしいと思います。STARS(岩谷・向後所属の団体内ユニット)のファンでもあるので、さらなる活躍を期待しています。

④プロレス特有の「スター性」を描く

岩谷選手は弱い時代から人気があった選手です。
この映画内で確実に岩谷選手より努力をしてきて、実力もある選手たちが次々と団体を去っていきます。これは何もスターダムに限った話ではなく、プロレスでは起こりやすい事象です。
プロレスは本当に不思議なジャンルで実力はあるけど何だかな~と思ってしまう選手を今まで数々観てきました。逆に実力以外の部分で観客の支持を得てしまう選手も実際にいるのです。(わかりやすい例で言うと大仁田厚)
何の気なしで言った一言で一気に人気に火がついたり、逆にブーイングのきっかけになることも大いにあります。実力と観客の支持におけるかい離や、それらの因果関係に説明がつかないことが多々あるのがこのジャンルの魅力なのです。
そういった部分が、面白くも残酷であることを真面目に描いていたのが個人的に一番好きなポイントでした。夢を掴む者、夢を諦めた者、両面を描き、この世界の厳しさにちゃんと触れていたのはナイスです。
※「アイアンクロー」もここに踏み込んでいます。マジ名作!

⑤マユランドのアニメが「SUPER!」のOPみたいでサイコー!

テイストも力の入り具合も全然違うけど、大好きな映画のオープニングと共通点を感じて、個人的にアガっただけです。笑

⑥ラストの本人映像

あれはズルい!世志琥に代弁してもらおう!

※文脈分からない方は、そのまま受け取らないでください

ファンムービーとしては◎
新規ファン獲得という意味では…

感謝もできたし、褒めるべきポイントは褒めたし、以上!(柴田勝頼)で締めたいところですが、ここからは自発的にモノ申したいところを述べます。

①映画としてのルック、見栄えについて

これは「アントニオ猪木をさがして」の演技パートについても言えるかもしれないが、映画としての見栄えという意味ではやっぱり劣る。
今回は主人公本人がスラップスティックな存在なので、何とか目線は合わせられましたが、実際の寮とはかけ離れたキラキラした美術の感じや、アイテムの過剰な使い方、演出等はテレビの再現Vのように感じてしまう部分は正直ありました。
ファンムービーとして十分機能しているのはわかっていますが、こっちだって映画ファンでもあるので、おいそれオッケーとスルーするわけにもいきません。予算や興行収入の回収見込みとのバランスの懸念も理解していますが、エンタメ企業とはいえ映画に関してはブシロードはまだまだという認識にはなってしまいました。
今回の企画はブシロード木谷会長の発案と聞いてますが、あまりにも性急にやりすぎではないかと感じます。竹中直人以外は演技経験の薄い面々なのは否めないし、もうちょっと脚本を練る期間があれば、映画としての質も担保できたはず。
これはスターダムが性急に成長を進めすぎたせいで、昨年歪みが出たタイミングと被るし、そこはやっぱりノイズになってしまった。映画なんてそんなにポコポコ作れるようなものではないので、企画側の皆さんにはその点留意してほしいなと。(エライ人に言ってます)
誤解なきように言いますが、演者さんや制作サイドは与えられた環境で十分以上の力量を発揮していると思います。そこは重々理解しています。

②新規ファンに届けるという意味では疑問が残る発案者の志

興行収入の面で苦戦していると聞いています。
もともと採算は度外視なのかもしれませんが、それにしても寂しい結果だなと感じます。プロレスファンは観に来ているでしょうが、それ以外の新規にアプローチできているのか、正直疑問が残ります。
ただ、良い意味でも悪い意味でも成熟しているジャンルなので、新規へのアプローチが難しいのもまた、理解しすぎるほど理解しています。

ただひとつ言いたいことがあるとすれば、オーナー木谷会長自ら嬉々として映画に出演している風に映ること。

門外漢の人がこういう映画を観て、関係者がカメオ出演するみたいなことをされると鼻白まないかなと。自分は完全にそう思ってしまうタイプです。ファンムービーの域を出ない閉塞感を感じてしまいました。気にしすぎとは思うが、気にして出ない判断をすれば、こうした疑念も生まれないはずでは?
「マニアがジャンルを潰す」と言ったあなたがそういうことしてどうするの?という疑問は拭えなかったです。ハッキリ言ってものすごいノイズでした。
真剣みを削がれるんです、こういうことされると。ブシロードがスターダムを買収したシーンはわかりますが、笑いに持っていくために後楽園の観客席で商売敵と並んで観戦してるシーンを差し込むとか正直サブかったです。めっちゃイヤでした。

結局マニアに媚びてるだけやん

これが偽らざる正直な発案者・企画側への感想です。
次作以降は少しばかり、ご検討いただきたいです。
ただブシロードの経営参画には本当に感謝しています。引き続きよろしくお願いいたします。

どうせなら一緒に岩谷麻優を知ろう

いろいろ言ってきましたが、スターダム、岩谷麻優のプロレスは素晴らしいので、せっかくですし、ここで紹介したいと思います。
イヤなこと言って終わり、は自分もしたくないので。

①映画で扱われた名試合
 vs花月戦(羅月戦のモデル)

②スターダム・岩谷の集大成的な試合
 vs世志琥戦(スターダム10周年記念シングルマッチ@武道館)

※この動画の後半にあるvsウナギ・サヤカ戦も必見(怖いアイコン)

③技がスゴイ

ダイビング・フブキラナ

ムーンサルトプレス&二段式ドラゴンスープレックスホールド

④受けもスゴイ

名古屋国際会議場での階段落ち

ラダー上段からのブレーンバスター受け

⑤面白くてカワイイ

柔道マッチでの腰の引けっぷり

両国国技館が言えないレベルではすまされない滑舌

なぜか笑いに包まれる調印式(これは鹿島沙希のせい)


まとめ

感動と文句をグダグダ言う情緒不安定さを露呈してしまいましたが、概ね満足はしています。「アントニオ猪木をさがして」も散々文句は言いながらも結局は好きな映画ではあるので、今回も似たような感想かなと。

やっぱりプロレス自体、プロレスそのものが面白いですから、もっともっとそれが伝わるように全団体、力を注いでほしいです。(マリーゴールドは除く)


最後に

今までで一番難しい批評でした。
ハッキリ言って5,000文字も費やすような映画ではない。笑

ただ、それぐらいのパワーと魅力はこの映画と岩谷麻優という選手にはあるので、公開終了の映画館もチラホラ出ていますが、プロレス好きな人も、知らない人も、観に行って元気をもらいに行ってください。あざした!

2023年8月13日@大阪府立体育館 筆者撮影

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