金属をカンナのように削る! プレーナー加工の職人技に迫る
切削バイトを自作する技術力
プレーナー加工は、カンナのように金属の表面を真っすぐ削ることで、加工後に高い平面・平行精度を保つことが可能です。また、V溝やU溝などの溝加工においてもシャープで美しい仕上がりを実現し、数メートルの長尺でもその精度が維持されます。
リンゴの皮のように削られた切り屑が熱を放出し、歪みや反りを抑えながら溝加工ができるのも大きな魅力です。さらに、溝の形状や深さなど、お客様のご要望に応じて職人が一つひとつ条件に合わせた切削工具を丁寧に作り上げます。
プレーナー職人は、加工にあわせた切削工具をみずから制作する職人でもあるのです!
プレーナー加工用の切削バイトのストックは1000本以上!
まずは以下の写真を見て下さい。ピタッと刃物と溝が合っていますよね。
こうやってオーダーに合わせた切削工具を自作できるのは、プレーナー加工とその職人の掛け算がなせるワザ。
自ら切削バイト(刃物)を制作する技術力がなければ、プレーナー加工の高い精度が生きてこないなんて驚きますよね。
プレーナー加工は専用工具をつかう
プレーナー加工で使用される切削工具『ロウ付けバイト』とは、異種金属同士を「ロウ」と呼ばれる合金を溶かして結合させることで、強度と耐久性を向上させた切削バイトを指します。摩耗や衝撃に強く重切削でその強さを発揮します。まさにプレーナー加工に適した工具ですね。
以下の写真を見て下さい。2種類の金属が使われているのが一目でわかります。
加えて再研磨を行うことで、チッピングの修正や、製品形状に応じた刃物製作が可能です。これにより、新たに切削バイトを購入することなく再利用でき、長期的なコストパフォーマンスに優れているのも特徴です。
デメリットとしてこの再研磨作業は熟練した技術を必要とし、適切な角度での研ぎが求められるため、職人の育成に多くの時間を必要とする点です。
加工機械の操作を覚えるだけではなく、加工条件に適した工具をその都度、制作することが求められるため、プレーナー加工には幅広い職人の経験が必要となります。
実際に専用工具のメンテナンスや制作を観てみる
今回、特別に埼玉プレーナー工業所が誇るプレーナー職人である中里さんから、切削バイトを再研磨する様子や、制作の過程を見せていただきました。
説明を受けていると、日々プレーナー加工と向き合い研鑚を重ねているのが言葉の端々に感じられて「毎日のことを真剣にやっている」というのがヒシヒシと伝わりました。
まずは切削バイトのメンテナンスとしてチッピング(切削工具の刃先が細かく欠けること)の修正の様子をご覧ください。
次は、溝加工で使用する専用バイトを制作する様子を説明していただきました。
最後に手研ぎ砥石を使って仕上げの研磨をしている様子を説明していただいています。
動画内でも語られておりましたが、グラインダーだけの研磨で使用すると、汚い切り屑になって、面精度に影響が出ているのがすぐにわかるのだそうです。
この辺りの道具作りは、汎用旋盤を使う昔の職人さんは皆さんやっていることだと話されていました。
中里さんの説明には、先人に教わり、自分で調べ(作業場には本棚が用意されていて、いつでも辞書として確認できるスペースがありました)そして何より「自分で研究して自分のやり方を見つける」作業を繰り返しているのが伝わります。
「他のひとはまた違うやり方を説明すると思う」
この言葉に、何度も試したことで得た習得の日々を感じます。
・門型プレーナー加工機『MARUFUKU』
埼玉プレーナー工業所の工場に足を踏み入れると、正面に丸福製の門型プレーナー加工機がドドンと鎮座しています。その貫禄と迫力はテンションが上がります!
加工サイズは[X]6000mm,[Y]2200mm,[Z]1300mm
横軸のオーバーホールの様子をタイムプラスで撮られている動画が、埼玉プレーナー工業所さんのYouTubeにありますのでぜひ観てみてください。その巨大さとメンテナンスの大変さが伝わります。
中里さんは、鈴木社長と共にこのMARUFUKUのメンテナンスも行います。
「古い機械なのでメンテナンスも大事になってきます」
鈴木社長は、「今回約1500万円かけて大きな部品交換を行い、制御盤と主軸のサーボモーターなどのリニューアルを進めているところです」と説明されていました。
日々の細かなメンテナンスは中里さんが行っているそうで、「古い機械だから操作にクセがありますね」と笑いつつ、機械に向き合う姿からは、長い年月を共にした深い愛情を感じました。
積み重ねてきた知識と経験の深さから滲み出る謙虚な姿勢に、これからも日々「試し」「学び」「また試す」が続くのだろうなと想像しました。
その姿勢は、匠の技が永遠に進化し続けると感じさせてくれます。
プレーナー加工は、単に機械を操作するだけでなく、工具の選定、材料への判断や加工条件の設定、そして素材・形状に合わせた切削工具の制作など、幅広い知識と経験による技術が求められます。まさに職人の技が光る仕事ですね。
次の記事が埼玉プレーナー工業所のレポートの最後になります。
ここまで読むと同社が気になってきますよね。
最後の記事は『埼玉プレーナー工業所』や『鈴木社長』に焦点を当てた記事になります!
《追記》
この取材は2024年10月某日に行われたのですが、翌月の11月28日に川口市産業功労表彰式がに行われ【川口技あり賞】を受賞したそうです!
おめでとうございます!良いタイミングで取材できてうれしいです!
《参考資料》
・バイトのすくい角と逃げ角|中川バイト製作所
・すくい角とは|キーエンス
・すくい角|再研磨.COM
・三和製作所カタログ
・ロウ付けバイトのメリットとは?|㈱ビット
・切削加工で「ひずみ」が発生する原因とは?材料の特性や対策ポイントも|宮脇鋼管株式会社
・残留応力の話|株式会社山本金属製作所
・プレーナー加工とは|埼玉プレーナー工業所
・有限会社埼玉プレーナー工業所 「プレーナー加工技術」~曲がり・反り・歪みを格段に少なく
・金属の反り・歪み(ひずみ)の原因|湯本電機株式会社
・プレーナー加工|リョーユウ工業㈱
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