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胡瓜

今日は朝から、胡瓜ばかり食べている。 生で。 塩もみをしていないのでとても硬い。 頭に噛み付いてばきっと折る。 がりがり、ごりごりと口の中で音が鳴る。 大きなかけらを小さくするのには、そこそこ顎に力を入れなくてはいけなかった。 でもそれが心地よかった。 前歯で噛み切ったかけらを、奥歯で噛み砕く手順に集中できる。 余計なことばかり考えてしまう前頭葉を、 胡瓜の砕ける音が支配してくれる。 涼やかな青臭さが鼻から抜け、喉の奥に落ちる。 口の中は空になった。

    • うに食いたい

      • voidピーナッツ

        「温めお願いします。」店員が聞かないので、自ら積極的にお願いする。店員は客観的ににこやかだと判定されるであろう口角の角度を維持したまま、いかにも億劫そうな間を隠しきれずに、しかしさも隠しきったかのような態度をとりながら答えた。「かしこまりました。」思いのほか声が大きくなってしまった。実家にいるとき、「お前は変なタイミングで声がでかくなるな。」と指摘されて、それから異様に人としゃべるのが苦手になったことを思い出した。店員は僕の購入品の中から鳥のトマト煮込みと、ナスの揚げ浸しと、

        • 供養

          【こんなPTAは嫌だ】 ・お互いを「その方」と呼び合っている ・メスが少ない場合はオスが転化する性質がある ・家から持ってきた腐りかけの食べ物をぶつけ合う年に一度の行事でしか笑い合えない ・会議室のことをコロッセウムと呼ぶのが流行っている ・会長が生物ではなく、「子供を守りたい思い」が集まってできた思念体だ

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        • 味玉
          4本
        • ミス日本昔話
          2本

        記事

          コントラバス売り

          「たのもう、たのもう」 武術太極拳連盟東京都へじま区支部の門は、建物が建設されたときからこれまで、延べ689回たたかれてきた。本日新たに「690~693回目の叩き」を行ったのは、瓜田小甚(うりたこはなはだ)という青年だった。日本列島にぎりぎり含まれるが、地図上ではなく索引にしか名前が載っていないほど小さな島で生まれ育った彼は、クラウドファンディングで募ったお金で都内進出を果たしたというわけだった。残った金はすべてディアゴスティーニに消えた。今日明日の飯にも困っていて、消費者金

          コントラバス売り

          かにの絵

          かにの絵1 「全く、なんでひどい美術館だ。」 「かにの絵を飾るなんて、倫理観にもとるどころの話ではありません。」 先ほどまでにこやかに接客していたはずのAIロボットがぎこぎこと首を回転させながら憤慨する。耳元から蒸気のような煙が吹き出す。 「ええ、全くですね。」 美術館を後にした我々は、コーヒー店のカウンターで隣合っていた。 テーブルは全面が有機物体生成装置とタッチパネルを兼備していて、操作かするとニョッキリとコーヒーが生える。これは楽しい。 「ところで、あのかにの

          かにの絵

          「部屋を借りに来た犬」

          設問1. 犬が部屋を借りに来た理由を15字以内で書きなさい。 設問2. 空白になっている以下原文の読みを漢字に直しなさい。 犬は(ひとみ)をうるうるとさせながら榊の目を見る。あまりの愛らしさに思わず、心が(かたむ)きかけた榊だったが、ぐっと(こらえ)て言った。「申し訳ないが、家賃の値下げ(こうしょう)には応じられない決まりになっている。」 設問3. 本文17行目「犬がこぼしたココア」から、19行目「木枠に擦り付けていた。」までの内容について、主人公(榊)の心情を書きなさ

          「部屋を借りに来た犬」

          化石先輩

          犬の散歩をしていた際の話です。 僕の家の裏手には、露頭(※)がありました。 ※岩石や鉱脈が地表に現れているところという意味らしいです 僕はいつもなんとなく、露頭にツータッチくらいして通ります。 表面がちょっとだけ削れて、ザラザラとアスファルトに落ちます。 いずれ波が削ってできた貴重な地形とか、海風が数千年かけて作った空洞とか、そういうのみたいになるのを妄想すると楽しかったので、そうやっていました。 その日もいつもと同じで、ツータッチくらいして通り抜けようとしたら、

          化石先輩

          顕微鏡を買った日

          顕微鏡を買った日 おとといから、皿を洗っていない。 季節は夏に差し掛かっている。 人間がおよそ暮らせる温度ではなくなってきているというのに、まだまだピークではないとのことだ。 吐き気のするほど青い空に入道雲が悠々と泳ぐ。 その一つが、大きな山椒魚に見え、どうだといわんばかりに顎を突き出していた。 腹が立つ。 人間様のお通りだ。 こっちは種の霊長なのだ。 のどが渇いたので自動販売機に出た。 マンション前の十字路は空いている。 子供が一人二人、砂場に山を作って遊んでいた。

          顕微鏡を買った日

          リムスキーコルサコフ 熊蜂の飛行

          リムスキーコルサコフ 熊蜂の飛行

          やる気がちょうどゼロの時に、仕事を振ってる人から「やることありますか?」って来たので「ないっす、うんち、ぶりぶり」って返そうとしたのを思いとどまりました。

          やる気がちょうどゼロの時に、仕事を振ってる人から「やることありますか?」って来たので「ないっす、うんち、ぶりぶり」って返そうとしたのを思いとどまりました。

          虚言物語

          「俺が明るさを獲得できたのはほかならぬ俺のおかでなのさ」 「おかでって言ったのは完全に俺のミスだが」 【経済産業省のチャップリン】こと椋川(むくがわ)はひげをこしらえた鼻下をかいがいしくさすりながら 第三、第四の手の甲をマンホールの上に掲げる あたりにはたちまち光が満ちた、光源もないのに 美しい光鱗のようなかけらがその場に漂っては上空へと舞い上がり、消えてゆく 声の主のわからない声が耳元でささやいてすらいた 「へぇー、決まるじゃん」 仲間の一人がつぶやいた声も、刹那に

          虚言物語

          味玉 南蛮

          フォーマットを忘れた。 ・チキン南蛮を作ったあとの甘酢あん ・水 混ぜたもの 着けた時間:1日 味:有りー 総評:鳥なので合う。有りに「ー」を付け足すくらい有り 雑記:別カット

          味玉 南蛮

          味噌汁に胡瓜を入れよう

          輪切りの唐辛子と赤い太輪ゴムの間を行ったり来たりしている画像があるので見てほしい。 チキン南蛮を作った。 ゲンコツサイズのやつが良かったので、そこはこだわった。 設備が乏しいので、作る過程だけで食器を使い切った。 茶碗がないので、米はコップに入れた。 衣として使われなかった卵がかかっている。 チキン南蛮は目論見通りデカく、一つ食うのに三口は必要だ。 タルタルソースも手作りした。 生の玉ねぎが苦手で生きた二十数年だったが、 自分で作ったものだからか余裕だった。

          味噌汁に胡瓜を入れよう

          人外短歌(季語なし)

          人間の 生き血をすすり 生きるのに 早く人間に なりたいなどと

          人外短歌(季語なし)

          味玉3 エビのアヒージョ

          ・オリーブオイル ・マジックソルト ・ニンニクチューブ 上記でエビのアヒージョをしたもの 着けた時間:1日 ・味:塩味、ほのかにアヒージョ ・総評:たのしい ・雑記:アヒージョ、たのしいが、油っこい

          味玉3 エビのアヒージョ