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幼児期の大切さ 〜幼児教育を『商売』に利用するな〜

今日は、息子と娘の通う幼稚園の入園説明会に行きました。
在園児のパパとして話す機会といただきましたので、行ってきました。

園長先生のお話、副園長先生のお話、その後が私の出番でした。
私の他に、息子と同じ学年のママさんからお話する流れでした。
そのママさんは、きちっとPowerPointを作ってきて話をしていました。

妻から、「◯◯ちゃんのママはPowerPoint作って話すみたいだよ。」と予め聞いていました。
“おいらはマイク一本で勝負じゃ!”と謎の意地を張っていましたが、お話が素晴らしく、しかも、結構網羅してお話しされていたので、何から話そうと私の順番が来るまでかなり悩みました。

私は順番が回ってくると、そのママさんのお話に感心したことを話してから、かなーりフランクな感じで話し始めました。

「妻から聞いた話なんですけど、幼稚園選びをしている時、ここの幼稚園は“地味だ”と周りから言われたそうです。(園長先生と副園長先生が笑う)
でも、私は息子と娘を通わせていて地味は違うな〜と、改めて思いますね。地味と言うより、“自然体”な幼稚園だと思っています。子どもそれぞれの思いが自然な流れで実現されていく生活がこの園にはあります。
アンパンマンやミッキーの音楽が爆音で流れていて、子どもの声が一切聞こえない体操の時間とかそういう場面は絶対にないんですよね。」

という話から、短い時間でしたが、私が感じているこの幼稚園のよさを多く伝えるとともに、私の職業も明かし、幼稚園という場は小学校に入る準備期間ではないこと、小学校がむしろ幼稚園の保育や教育から多くを学ぶ必要があることも少し話しました。

そんな私が話したことは実はどうでもよくて、説明会後に私のところに個別でお話をしに来てくださった方のお話が印象に残ったので、書き残そうと思いました。

ママさんお一人で来ていた方、ご夫婦で来ていた方からの様々なお話の中で共通していたことが『ひらがなが書けること』でした。

私の息子や娘が通っているこの幼稚園は、ひらがなを練習する時間などありませんし、そういった小学校準備をほとんど意識していません。
園長先生のお話の中にも「字の練習とかそういったことは一切していません。その時間があるならば、子どもたちの遊びの時間をしっかり確保したいと思っています。」とお話されていました。

私は、ママさんやご夫婦に

「ひらがななんて、子どもたちは遊びの中で勝手に覚えていきますよ。誰々ちゃんが手紙をくれたとか、好きな生き物や乗り物、町の看板が好きな子だっていますし、そういった“好き”から字を獲得していく子が多くいるのは事実ですよ。必要に迫られたり、字を書きたいと思ったり、そこから思い切り表現していくってことが大事だと思います。
うちの子はえんぴつの持ち方、書き方なんて教えていないのに、友達からお手紙をもらってから一気に字を書くことを自分でやっています。ただ、ひらがなとカタカナがまざっていたり、鏡文字だったりすることもありますし、一つの文に横書きと縦書きが混在して読みにくいこともありますが、私は口出ししていません。
なんだか楽しく書いていますから。「幼稚園の車遊びで看板使うから!」と行って字を書いていることもありますよ。
小学校に入れば嫌でもきちっと座って、きちっと字を書く時間なんてありますから、気にしなくていいと思います。むしろ子どもにとって大事な遊びの時間が削がれる小学校の前に、たくさん遊んだ方がいいです。
小学校1年生の先生は、ひらがなや片仮名を習得『させる』のはある意味使命ですから。笑」

と話しました。

ご夫婦の方からのお話では、字を書く時間を確保し、小学校準備を売りにしている幼稚園や降園後の習い事をセットを売りにしている幼稚園があると聞きました。そのご夫婦は『それってどうなの?』とこの園への説明会を聞きに行こうという運びになったそうです。

小学校には、幼保小連携というものが長い間設定されています。
ただずーっと課題だらけで有意義なものになっているという話は、私の周りでは聞いたことがありません。
小学校教育というのは、幼児の保育や教育に対して、いつからこんなに驕るようになったのだろうと思ってしまいます。

幼児期(小学校段階でも)におけるとても大切な“遊び”の時間を削ぎ落とし、小学校に入りための字や話の聞き方、座り方のスキルアップが人生においてそんなに重要なのでしょうか。
また、残念なことに小学校の準備をしっかりしてから小学校に入ってもらいたいと思っている小学校教員が多くいることも事実です。

私は、我が子が通う園の行事や公開日、日常の様子などから、創造的であり、個別最適であり、協同的な様子に先生方に敬意を高くもち、とてもたくさんのことを学ばせていただいている反面、小学校現場の実際に胸が苦しくなります。

幼児期の保育や教育が正解ではないのかもしれませんが、学校教育の質を高める上でかなり重要なのではないかと思っています。

また、最近とても気になるのが、幼児教育を利用した金儲けという社会的な面です。

上にも書いた通り、息子が字を書くことにかなり興味をもってきたころから、100均や本屋にある遊び感覚で字を書けるものを買っていたのですが、何気にお金がかかってしまうことと、ページ数が少なく、息子は夢中になって一気にやってしまうので、通信教材を始めました。トラのキャラクターが中心のやつです。

始めた動機がそんななので、時間を決めてきっちりやるなんてことはしていません。子どもがやりたいと言った時に一緒にやっています。

昨年からですが、その通信教材に徐々に1年生に向けた準備的なチラシやサンプルが入るようになりました。

私は、こんな性格ですし、公立の小学校教員の中ではマイノリティな感覚をもつ一人なので、通信教材についてくるそういったチラシやサンプルに「こりゃただの金儲けだな」と思って資源ゴミ行きになります。
無料サンプルで入っていたDVDには、話をきちっと聞けないと小学校生にはなれない的な洗脳的アニメが入っていました。
私はこのDVDを見て
「こんなことをあたかも正解のようにアニメーションされたら、学校が嫌になる子とか、プレッシャーに感じてしまう親がいるだろうな。」と思いました。
ちなみに息子は、付属の赤と青のメガネをかけると浮き出て見える場面があるので、このDVDを何回も見ています(笑)
内容は何も気にしていない様子です。
英会話の宣伝もすごいですね。

ただ、字を書けることや話の聞き方、そして、様々な宣伝は我が家がとっている通信教材以外にもかなり多くなってきていることを感じます。

そういった社会の流れが、乳幼児や幼児をもつ保護者を焦らせ、知らないうちに子どもの大切な時間を奪ってしまい、受動的な子どもを育てていっているのではないかと、社会問題として深刻に考える必要があると、今日出会ったママさんやご夫婦から、改めて感じました。

また、ほとんど保育や教育に関心がなく、家庭環境的に厳しい中で育ってきた子が小学校に入ってくるという、乳幼児期・幼児期にすでに発生している保育・教育格差にも、もっと真剣に小学校教員は考えなくてはいけないと思います。
できるだけ早期に寄り添い、その家庭と一緒に、よりよい生活を目指していくパートナーが地域社会にもっと存在すべきだとも感じています。

やはり日本の保育・教育は課題が山積みだと感じる今日この頃です。


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