ミニシアター支援と配給者
前回の投稿からちょうど1週間。その間に、ミニシアター界隈の動きは益々活発化した。
4/7(火)に #SaveTheCinema 「ミニシアターを救え!」プロジェクト の署名活動が始まった。
10万人集めたいところというが、現在5万人弱。有名俳優や監督も数多く呼びかけていて、タイムラインにはしつこいほどに上がっていたが、ミニシアターが一般的にはマイナーであることが返って露呈した。#赤木さんを忘れない の署名のスピード感とはだいぶ異なる。そして同日に、配給したすべての作品でお世話になっている神戸・元町映画館さんからメールをいただき、関西の劇場が集まって Save our local cinemas〈関西劇場応援Tシャツ販売〉(4/12で販売終了)が立ち上がったことを知る。取り急ぎTシャツをポチ。
先日立ち上がった #ミニシアターエイド も今週にはクラウドファンディングが始まるようだし、個々の劇場でそれぞれ具体的な支援の形が整いつつあり、SNSで告知が見受けられるようになった。そして、先週は新聞やwebメディアでも、ミニシアター支援の記事は大きく扱われていた。
◎日本経済新聞「映画館、配信に挑む 危機下で『作品届ける』作家の思い」
◎朝日新聞「観客9割減で休館、ミニシアターを救え 是枝監督ら支援」
◎朝日新聞 RONZA「ミニシアターを救え!――新型コロナで、小規模映画館は存続の危機に」
◎CINRA.NET 「『ミニシアターを救え!』是枝裕和、井浦新ら呼びかけで署名運動」
記事の内容としては、ミニシアター支援の立ち上がりと共に、
アップリンクの「オンラインの映画館「アップリンク・クラウド」
ユーロスペースにて公開中の映画「インディペンデントリビング」の劇場公開同時ネット配信
シアター・イメージフォーラム他で5/2より公開予定だった映画「精神0」が「#仮設の映画館」として公開日から3週間限定配信
について、主に新たなトピックとして伝えられていた(上記2作品とも配信による売上は劇場上映と同じく、劇場と配給者が折半する)。「劇場と配信は両立する」とするアップリンクは、配給者でもあるが、どちらかというと「アップリンク・クラウド」は劇場救済の策として語られている。そして、「インディペンデントリビング」や「精神0」のトピックで前面に出ているのは、製作/制作者と劇場である(「インディペンデントリビング」は製作者が配給業務も担っており、「精神0」想田監督によるステートメントには配給者・東風と相談の上と記されている)。この非常時においても、配給者に存在感がないことは否めない。そんな時に掲載されたのが下記の記事である。
◎4/10 毎日新聞「シネマの週末・チャートの裏側 配給会社への手当ても」(リンクは有料記事)
ここでは、ジム・ジャームッシュ監督最新作『デッド・ドント・ダイ』の拡大公開が延期になった配給会社・ロングライドについて書かれており、ミニシアターだけでなく、中小の配給者への手当も緊急の課題であると述べられている。配給者について言及した初めての記事だったのではないだろうか。
ミニシアターと同様に、中小の配給者の多くは、買付→宣伝→公開のサイクルを自転車操業でこなしている。このサイクルの中で宣伝が終わる頃に最大限の予算をかけており、公開して初めて回収することができる。今回のコロナ禍で、直前で公開を迎えることができなかった配給者は、ほぼ予算を使い切っているだろう。宣伝を支えているのは、パブリストやデザイナーといった小規模や個人の事業者であり、公開による回収ができなくなると、彼らへの支払いが滞ることも懸念される。支え手が崩れていくと、業界全体が一気に脆くなっていくことだろう。2010年代に入ってからDVDレンタル市場の縮小が進み、1本の映画における配給者の収益全体の中で、劇場上映による収入が占める割合が大きくなっている。配信市場は少しずつ大きくはなっているものの、DVDレンタル市場の縮小を補うほどの規模にはなっていない。こうやって他に有力な収入の柱が新たに立てられないうちに、コロナ禍が起きてしまった。韓国では公開延期になった作品のマーケティング(宣伝)費の支援があるというが、残念ながら日本にはない。サイクルを完全に乱したコロナ禍が収束し、配給者が何とか生き残ることができたとしたら、これまでと同じパラダイムで生きてはならないし、そもそも生きていけないだろう。製作/制作者や劇場も独自の変化を見せていくように、配給者も新たなシステムを築いていく必要を感じている。では、配給者は具体的に何をするべきだろうか。
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