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#7 森林の大切さを今こそ伝えるとき――コーディネーター・鈴木進

木の家だいすきの会のメンバーの、人となりを紹介していくこの企画。第7弾は、会の代表理事で、コーディネーターの鈴木進さん。都市開発をバリバリ行っていた鈴木さんが、緑や森の重要性に気づき団体を立ち上げたのは、ちょっとした気づき、それとピュアな思いがあったからでした。

森を壊して生まれる街で、人は緑を求める

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――木の家だいすきの会の代表である鈴木さんですが、そもそも昔から木造建築が好きだったのですか?
鈴木
 熱狂的に、というわけではなかったですが建築は好きで。大学は建築学科に行きました。フランク・ロイド・ライトやル・コルビュジエが好きでしたね。でも、今思うとライトの感性は、日本建築に通じるところがある気もしますね。

――では建築家になりたかった。
鈴木
 そうですね。でもね、大学で早々に挫折しちゃったんです。

――なぜですか?
鈴木
 周りの人たちをみると、もう明らかにかなわない。才能の差が歴然で…。それで、建築から都市計画の方向に進んだんです。

――そっちは自分の肌にあっていた?
鈴木
 そうですね、やっぱり設計はとがっていないとだめだと思うんです。個の世界。一方で都市計画は、たくさんの人を巻き込みながら合意形成して、公共の力をボトムアップしていくもの。そのほうが自分の性格にあっていました。

――都市計画の世界に足を踏み入れて、どのようなことをしていたんですか?
鈴木
 当時はニュータウンや団地、市街地再開発などが多かったですね。計画を立て、どのように事業をつくり、合意形成をしていくか。そのうち自分は合意形成が得意で、日々コミュニティやネットワークづくりに奔走していました。

――コミュニティ・デザインですね!
鈴木
 当時はそんな言葉もありませんでしたが(笑)。やっていることは泥臭いですけどね、たくさんの意見を聞きながらひとつの方向にまとめあげていく。行政や企業の計画を押し付けるのではなくて、自分たちが街をつくっていくという流れが生まれた頃でした。

――まさに今のコーディネーターという仕事につながっていますね。そこから、どうやって「木の家」にたどりついたのですか?
鈴木
 郊外にある公団(現在の都市再生機構)の仕事をしていて、気づいたことがあったんです。郊外のニュータウンは山や森を削ってつくったようなところが多い。それにも関わらず、来る人はみんな緑を求めている、と。それはなんでだろう、と思って学ぶうちに、森林保全の重要性と問題をはじめて知ったんです。2000年前後のことです。

――具体的にどのような学びを得たんですか?
鈴木
 それまでは木を伐採することが森林破壊だと思っていたんだけれど、日本の場合は人工林のため木を切って循環利用しないと破壊される。森が壊れると、生態系も壊れ、雨を吸収するなどの自然の防災機能も衰えていく。でも、年々林業に従事する人が少なくなっていく。そんな構造的な問題を、実際に産地に足を運んで話を聞くうちに体感していきました。

暮らしのそばに木があるということ
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――そうした日本の森林問題に対して立ち上がったのが「木の家だいすきの会」。
鈴木
 そうですね。もともとは自分が得意としていた合意形成やネットワークづくりのスキルを活かして、総合的に課題解決できないかと考えました。具体的には志を同じくする設計士や大工さんたちとタッグを組んで木の家を増やすことで、日本の森の木の需要を高める。すると林業の担い手が増え、森の保全につながる。そんなサイクルを描きました。

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――活動をはじめた当初の反響はいかがでしたか?
鈴木
 そういう活動をしている団体が他にいなかったからか、思ったより関心を持っていただきましたね。NHKなどのメディアでも取り上げられて。

――共感してくれる方はどのようにみつけていったんですか?
鈴木
 それこそネットワークですね。あそこの職人は自然素材を扱うのがうまい、と聞いたら会いに行ったり、勉強会で声をかけたり。いつの間にか20人を超える設計士や大工が会のメンバーです。

――このマガジンではだいすきの会メンバーのインタビューを掲載していますが、みなさん本当にそれぞれの道のプロフェッショナルですよね。
鈴木
 木をはじめとする自然素材の扱いは本当に難しくて、生きているからこその経年変化も考えたりしなければいけない。また、手間もツーバイフォーなどに比べて多くかかる。だからといってすごく儲かるわけでもない(笑)。それでもやってくれているのは、技術はもちろんですが、やはり自然素材に対する愛情が強いからだと感じています。まさに、木の家だいすき、というか。

――そんな凄腕たちとお客さんをマッチングし、竣工までコーディネートしていくのが鈴木さん。
鈴木
 はい、自分では家をつくれないけど、チームを組んで課題解決していくことは得意だったので。そういう意味では、設計士にはれなかったけど、こうして住まいづくりに携われるのは幸せですね。ちなみに一度、自宅を新築した時に、自分でプランを練ってみたんです。でも、「これはだめだな」と思いました(笑)。

――木の家だいすきの会も20年を超えました。これからどんなことを仕掛けていきたいですか?
鈴木
 社会的にも森林の大切さは認知されてきている。これからはより地域の林業ともタッグを組んで、産地の顔が見えるようにし木材自体の価値を高めていきたいですね。私が幼少の頃、奥武蔵の森や木造校舎でめいっぱい遊んでいました。木が生活のそばにあった。今の子どもたちにも、そんな原体験をしてもらいたいし、それができる環境づくりを進めていきます!

木の家だいすきの会

2000年に活動を開始したNPO法人。ニーズに合わせて専門的な設計士や工務店をマッチングし、木をはじめとする自然素材を活かした家づくりをコーディネートする。家づくりだけでなく、森林保全や林業に関するセミナーなどを行い、森の大切さを発信し続けている。
http://www.kinoie.org/


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