" haori " への想い

2019年度の取り組み。
「 京小紋の保存・継承 」を目的とした新商品の開発。

その1つとして " haori "  を制作しました。

「 和と洋の間 」
「 性差・年齢・体格 に関わらず纏える形 」を目指しました。

形はひとつ。色柄は無限大。
日本の着物に回帰する。
そして、より日常的に身につけられるもの。

そこで、ひとつの形を様々に変化させて纏えるように考え、制作しました*

纏う人と、生地の色柄で大きく印象を変えられます。

纏う人それぞれの色に、まさに「染めて」もらえたらな、という思いです。

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「 なぜこの形?」

■ 小幅生地であること

服部染工で染めているのは純粋に着物になる生地のみ。
小幅と呼ばれる幅約38cmの正絹生地です。
洋服を作るための生地と比較すると格段に短いのです。
そのため、複雑なパターンのお洋服はなかなか作りにくく、
「 この生地は一体なにに生まれ変われるのだろう? 」とにらめっこすること数年。
その間、作家さんにご協力いただき、アーカイブから小物を制作していました。

正絹の肌触りの良さを最大限活かせるもの、と考えるとやはり衣服。
着物にするのが1番適した生地ですが、日常的に身につけてもらうためにはもう少し気軽に纏えるものでないと。けれど小幅ゆえに洋服のような複雑なパターンでは作れるものが限られてしまう(生地幅が足りない)。。

そこで「 和と洋の間 」の衣服という着想になりました。
小幅生地で自然に成り立つ形であるもの。和服でも洋服でもないもの。

■ 私のコンプレックス

私は145cmという身長ゆえ、これまでの人生で衣服を選ぶことを諦めるシーンが多かったです。

楽しいはずのショッピングが悲しいものになる。私が既製服を買う時には、多くの時間と根気が必要です。

素敵!と思ったお洋服も、試着すると店員さんも一瞬苦笑い。目をつぶって購入しても、やっぱり着心地が良くなく、着なくなってしまったり。

年齢を重ね、それなりに学習すると
これは着られる・これは着られない
の選別がある程度、試着前に出来るようになりましたが、それでも平均的な体格の人と比べると、購入までの道のりは長い。。。
というか、サイズない。本当にない。
子ども服も昔より大人っぽいデザインが多くなり、購入しますが、やっぱり何かちがう。

なので、最近はオーダーで作ってもらうことの方が多くなってきましたが、急ぎの買い物は難しい。

心から楽しめる瞬間って、人より少ないのかも知れません。

■ 民族衣装っていいよね

気が付けば、巻きスカートや、肩位置の決まっていない落袖の衣服が増えていました。
ゆるっとしたシルエット、付属の紐やベルトでコントロール出来るものなど。

形としてのデザインではあまりあそべないから、柄物を選ぶことも多かった。昨年はパーニュにときめきました。

そして

ん、これ民族衣装に近いよね?

という、狙ったわけではない、体格ゆえの自然な流れでそこへ行き着きました。

シンプルに四角い布を体に巻き付けたり、体と布の間にふわりと余裕のある着方。

基本、体に合わせた複雑なパターンの洋服だから、サイズないのかという当たり前な気付きでした。

様々な失敗を繰り返した中で、ふわっと纏える羽織は、私の中で最も汎用性が高く、男女問わずに使える優れものだったのです。

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「 同じ悩みの人へ 」

百貨店の婦人服担当だった時代。
担当ブランドの洋服の中から「着られる」ものを毎シーズン何とか探し、それを着て店頭に立っていました。

様々な方が通ってくださっていたけれど、印象的だったのは、ボストンから帰国する度に私のもとへ通ってくださる顧客さまが居らしたこと。
その方は、私と同じくらいの身長でとても華奢でした。
「今シーズン、私にもサイズが合うものあるかしら?」
と訪ねて来てくださることが嬉しかった。

私を通して選んでくださる喜びを感じ、私がこの体格であることが、少しは誰かの役に立っていると思えた時でした。

きっと体の大きい人も同じ悩みを持っているでしょうし、人それぞれのコンプレックスがあると思います。

そんな人たちに届くと良いなあ。

あのお客さまも、どこかでこれを見てくださっていたら良いなあ。

■ こんな風に

平均的な体格から外れた人たちは、きっと私と同じく、服選びが難しいと思います。
何着も気に入ったものを購入できない。

だから、1着で様々な表情を見せられる形は重宝するはずだと思ったのです。
流行に流されず、自分のスタイルで着てほしい。
文化的背景があり、素材の良いものを永く大切に使ってもらえれば、という願いをこめて。

そもそも着物もそうだものね。
纏う人に合わせて、たくし上げて、おはしょり作って…
( 私はおはしょりの処理も大変ですけど )

形はひとつ。色柄は無限大。
日本の着物に回帰する。

ひとつの形を様々に変化させて纏えるようにデザイナー鷲尾華子さまと考え、制作していただきました*

色柄で大きく印象も変わる。

纏う人それぞれの色に、まさに「染めて」もらえたらな、という思いです。

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