見出し画像

ブータン旅行記 第3章 ブータンよもやま話

移動の車の中で、サンゲが私に聞いた。
「ナイトハンティングって知ってマスカ?」
出~た~!夜の狩り、つまり夜這いである。
ブータンにはそのような風習があるらしいと、日本を出る前に知人から聞いていたが、本当だったのか。
うんうん、聞いたことあるよ。
「田舎の方では今もアルンデスヨ。」
えー、そうなの。それはすごいね。
「ワタシもヤッタコトアリマス。」
・・・ええーっ?!まじ?!
その話ききたい!!

サンゲ曰く、ナイトハンティングは過酷なものらしい。
最初は目当ての女の子の部屋のドアをノックするらしいが(意外に真っ向勝負)、もちろん必ずしも開けてもらえるわけではない。
ということで次は窓からの進入を試みるのだが、これがなかなか大変。
間違って女の子でなく両親の部屋の窓をノックしてしまうこともあるし、何より開けてもらえなかったときの失望といったらない。

彼は一度、冬の凍えそうな雪の日に好きな女の子の部屋の窓から入ろうとして、思いっきり水をぶっかけられたことがあるそうだ。
そんな寒い日に敢行した理由も気になるが、とにかく寒くて寒くて、震えながら帰ったという。
想像するだけで悲惨すぎて涙が出そうだ・・・。
「ガンバッテ行っても開けてもらえないと悲しいデス」とサンゲは言う。

なんとか迎え入れてもらうことができたら、二人でいろいろな話をしてお互いの気持ちを確かめる。
そして最終的な合意を得られたならば、めでたく結ばれるということらしい。
ブータンの少年たちはそうやって心身共に鍛えられて、本物の男になっていくのである。

そこまでがんばってもらえると、女子としては嬉しいなあと思ってしまう。
窓をよじ登ってやってきた男が、一晩かけて口説き倒しにかかるわけだから。
ある意味これが正しい男女の形のような気がしないでもない。
うじうじしてはっきり好きとも言えない日本の男子には、是非とも見習っていただきたい。

ところでこのナイトハンティング、最近は携帯電話の普及により成功率が上がっているらしい。
というのも、男の子は夜這いをする前に女の子にメールをして、なんとなくいけそうかどうか、相手の気持ちを確かめられるからだそうだ。
なんだそれ、ずるいじゃねえか軟弱者め。
しかし、ということはブータンの男女はあんまり面と向かってそういう話はしないってことなのだろうか。
おもしろい。なんか奥ゆかしい。

しかし大変なのは男の子だけではない。
女の子にとって最も過酷なことに、人生で初めて夜這いをされたときは、相手が誰であれ絶対に受け入れねばならないという決まりがあるらしいのだ。
ひいいーーーー!これは恐ろしい。
話を聞けば聞くほど、これは非常に興味深い風習である。
女の方からアプローチできないのはすごく不利な感じがするけど、でもいろんな男がガンガンやって来て、その中から好きな人が来たときだけOKすればいい、ということで、何とはなしに成り立っているようだ。

サンゲにはどうやら成功より失敗体験の方が多いらしく、
「女の人はワタシのことあんまり好きじゃないネ」と寂しそうに言っていた。
男子は鍛えられるよなぁ。
ブータンの男の人たちが堂々としてかっこよく見える理由のひとつは、こういうところにあるのかもしれない。
 

田舎ではあちこちの建物に男根崇拝の象徴が。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?