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ウェブストアスタッフが8月に読んだ本

こんにちは!ウェブストアスタッフのノラです。

8月は数日お休みをもらって、故郷の青森に帰省してまいりました。
東京よりも涼しい空気にほっと一息。往復の移動中に本も読めて、しっかりリフレッシュできました!
9月に入ってもまだまだ暑いですが、日差しには少し秋を感じるこの頃。何となくひと区切りついた感覚で、ここからまた頑張りたいなと思っています。

では、恒例の「ウェブストアスタッフが読んだ本」紹介にまいりましょう!


■ノラ・1冊目

今年、第70回江戸川乱歩賞を受賞した話題作!「筋トレ×ミステリー」という、あまり見ない組み合わせが気になりすぎます。

「人気アイドルの大峰颯太がたった3ヵ月のトレーニング期間でボディービル大会入賞」というニュースに、「そんな短期間で鍛えられるわけがない」と炎上するSNS。このドーピング疑惑を追及するため、週刊鶏鳴の新人記者・松村健太郎は、大峰のパーソナルジムに潜入取材を命じられる。
この松村君、もともと文芸書の編集者を目指して入社したものの、現在は週刊誌の記者という意に染まない仕事にやる気を失っている状態。しかも筋トレなんてしたこともない。
どうなっちゃうの!?と、最初から興味を惹かれる展開で、一気に読んでしまいました。

ドーピング疑惑の真相を探るミステリーの要素はありつつ、あの手この手で潜入調査を進める中で、記者としての仕事に向き合っていく松村君の成長物語にもなっており、清々しい気持ちで読み終えることができました。
飽きさせない展開で、エンターテインメント作品としてもおすすめの1冊です!


●ミケ・1冊目

ドードー鳥ーー『不思議の国のアリス』や「ドラえもん」あるいは「ポケモン」でその名を知ったという方も多いかもしれない。本書はこのドードー鳥とソリテア(ロドリゲスドードー)をメインとした絶滅動物をテーマに、ふたりの主人公の人生の交錯とゲノム技術の光と影を描く物語だ。
丹念な取材とふんだんな文献・図版の引用により、絶滅動物や科学技術について追ってゆくだけでとても楽しい。反面、フィクションとしてのストーリーは弱い印象も受ける。もちろん結論の出ない問いを扱った作品であるし、本書の目的はおそらくこれを読んで絶滅動物の過去と未来に思い馳せながら「堂々巡り」することではあると思うのだが……。

突然だが、私は古生物がとても好きだ。ドードー鳥が人間によって絶滅に追いやられるもっとずっと前に滅んだいきものたち。けれど遥か昔確かにこの海を大地を駆けていたいきものたち。
今現在この世に生きていない生物を、蘇らせる。かの有名な映画『ジュラシックパーク』シリーズでも描かれたように、それは研究者にとってのひとつの夢なのかもしれない。しかし古生物学者を志した時代もあった私は、そこに興味はあまりなかったように思う。本書の言葉を借りるなら、彼らは絶滅によって(私の中で)永遠になっているのだろう。
古生物学者になる夢は終わった今も、化石を見に行き、撫で、そうして絶滅に思いを馳せることはよくあることだ。

ドードー鳥に己を見出したタマキと、ソリテアに己を見出したケイナ。
遺伝子操作による絶滅動物の復活は、人間の贖罪か、傲慢か。専門家ではない私には答えの出ない問題であるし、専門の研究者にとっても答えの出ない問題であるだろう。
ただひとつ、考え続けること、思考を止めないことが、人間に生まれた私たちにできる唯一のことなのかもしれない。


■ノラ・2冊目

黒地に赤い彼岸花の装丁が印象的な京極夏彦さんの新刊。歌舞伎の脚本として書き下ろされた新作とのことで、発売前から予約して楽しみにしておりました。
ちなみに、タイトルは「きつねばな はもみずにあのよのみちゆき」と読みます。作中でこのタイトルの意味も明かされますので、ぜひ最後までお読みいただければ。

舞台は江戸時代。作事奉行の上月監物は、自分の周囲にたびたび現れる彼岸花の着物の男・萩之介を疎ましく思っている。それは、材木問屋の近江屋、口入屋の辰巳屋も巻き込む監物自身のある過去が関わっているからで…
娘の雪乃、用人の的場、近江屋と辰巳屋…彼岸花の鮮烈な色合いとともに語られるそれぞれの物語。まさに「墓花」「幽霊花」「火事花」「地獄花」など多くの別名があるこの花のようです。
絡み合った因縁を解きほぐすのは黒装束の男、武蔵晴明神社の宮守・中禪寺洲齋。そう、あの百鬼夜行シリーズに登場する中禅寺秋彦の曽祖父です。果たして憑き物は落ちるのか。

そして、せっかくなので歌舞伎も観に行ってまいりました!
もともと中村勘九郎さん贔屓なもので、どうしても監物に目がいってしまったのですが(とっても素敵でした!)…洲齋役の松本幸四郎さん、萩之介役の中村七之助さんをはじめ、役者の皆さんが京極さんの世界を作ってくださっているのに感動。目の前で繰り広げられる、この作品の色の世界に飲み込まれました。原作の抑制された語りから生み出される凄みともまた違った迫力に、すっかり圧倒されて帰路につきました。
もし再演されるなら、原作と併せて多くの人に楽しんでいただきたい作品です!


ということで、今回は3冊紹介してまいりました。いかがでしたでしょうか。

『狐花』に関しては、原作の書籍だけでなく舞台も鑑賞ができたことで、本の世界の広がりと楽しみ方の多様さを実感しているところです。
書籍の魅力を様々なかたちで発信していけるよう、多くの媒体に触れていきたいという思いを新たにしています。

今回もお読みいただきましてありがとうございました!
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。