イレブンアンダーのクライマーが外岩で殺されないために必要なこと
こんにちは。クライマーのKinnyです。
今日は、初心者クライマーが、外岩に行くときに、課題選びで気を付けるべきこと、を紹介します。
1)日本の岩場は、(身長165㎝程度)×(外岩5.12まで登れる人)だけが安全になるよう設計されていることが多いと知る。
2)ランナウトの意味を知る。
3)ボルトを見分けられるようになり、古いボルトの課題は登らないか、対処して登る。
4)下部核心の課題は登らない。
5)プロテクションディフィクルトの課題は登らない。
6)ビレイヤーからクライマーが見えなくなる課題は登らない。
7)短かしい課題は登らない。
■ 1)外岩5.12まで登れる人が安全になるよう設計されている件
日本の岩場は、開拓された時期の、主たるクライマーたちの体格に沿って、
ボルト間の距離
が決定されています。現在は、人工壁やインドアクライミングジムの普及により、女性や子供も登るようになっていますが、岩場が開拓された40年前は、ほとんど成人男性しか登っていなかったため、同じ、5.9でも、成人男性がクリッピングしやすい位置にボルトが設置されています。
そのため、背の低い子供や女性が、同じフットホールドで、ボルトにクリップしようとしても、身長の制限のため、手が届きません。
つまり、手繰り落ちのリスクが大きい です。
しかし、このリスク自体が、男性クライマーからは理解されておらず、背が低い人(女性や子供に限らず男性でもいます)が、本人らより、大きなリスクを背負っていることが理解されていません。
身長165㎝の人のモノサシで、「なにが難しいんだよ」というのが現在の平均的な判断ですが、同じところに立って届く手の範囲は個人によって異なる、ということは度外視されて課題設計されています。
易しいとされる課題を登っても、身長が低い人にとっては、易しくない場合が非常に多いです。
したがって、グレードで課題を判断する習慣を先に改めないと、安全に外岩で登ることはできません。
これはインドアジムでクライミングをスタートしたクライマーには盲点になっています。
■2)ランナウトの意味を知る
ランナウトというのは、ロープを出していても、ボルト間の位置が遠いので、墜落したら、地面まで落ちれてしまう、と言う意味です。
ただボルト間の位置が遠いだけ、なら、見かけ上怖いだけで、本当の意味で危険というわけではありませんが、日本の岩場では、40mランナウトなどがもてはやされてきた過去があり、是正されていないので、そのような課題は登らないということが大事です。
またそのような課題をもてはやしてきた文化自体が、フリークライミングの興隆以前の文化であり、どちらかと言えば、現在は、もはや陳腐化した価値観であるので、それに踊らされて登らないことが、安全に外岩でフリークライミングを楽しむためには、大事です。
外岩ショートのフリークライミングではなく、アルパインクライミングやロッククライミングでは、おかれた状況から、やむを得ずランナウトせざるを得ない場面も見られます。そのようなときに、底力は取っておきましょう。
最も安全とされるプリフィックスのプロテクションである、ボルトルートでランナウトなんて、そもそも陳腐です。
■3)古いボルトの課題は登らない
日本の岩場のフリークライミングの課題は、40年前のカットアンカーや異種金属のボルトが一般的にまだ使われており、更新されていません。
参考:https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/Portals/0/images/contents/syusai/2021/tozankensyu36/2-7.pdf
そのため、人工壁のように腕力セーブのために気楽に墜落するスタイルは許容できないことが多いです。
そのよう古いボルトで安全に登るには、落ちないで登る、必要があります。いわゆるテンション登りというもので、落ちずに静荷重でテンションを掛けます。
ベストプラクティスはそのような課題は避けて、きちんとJFAによる整備が行き届いた課題だけを登ることです。テンション登りは妥協の産物です。
■ 4)下部核心の課題は登らない
下部核心の課題は、どんなにビレイヤーが上手でも、落ちたときグランドフォールする可能性が、当然、上部核心の課題より高いです。
指導者で、下部核心の課題を初心者に勧めるような、知見の低い人もいますので、勧められても、断りましょう。
■ 5)プロテクションディフィクルトの課題は登らない
主にトラッドの課題ですが、登ること自体は簡単でも、クラックがパラレルではない、などで、プロテクションディフィクルト(PDと表記)される課題があります。初心者は、登れますが、プロテクションが確実ではないので、クライミングを遠慮するか、トップロープにしましょう。
このような課題は、疑似リードに適しています。このような課題で、確実なプロテクションのセットを覚えましょう。
例:小川山 愛情物語 5.8
■ 6)ビレイヤーからクライマーが見えなくなる課題は登らない
どんな優れたビレイヤーでも、クライマーが見え無くなれば、墜落に心の準備ができる訳がありません。
いつ落ちるか、予期できないのが初心者クライマーなので、いかに簡単そうでも、ビレイヤーからクライマーが見えない位置にロープが伸びる課題は、初心者向きではありません。
■ 7)短かしい課題は登らない
同じ5.9なら、短い課題のほうが、長い課題より、ムーブが難しく、そのような課題を みじかしい、と言う風にクライマー界では言います。
短しい課題は、そのグレードを初めて登る初心者には向きません。
普段5.9が登れていて、初めて5.10aに挑戦する人は長い5.10aに登ります。なぜなら、長さがグレードに加味されて、ムーブ自体は5.9であるからです。
短い課題は、短さゆえにムーブ自体が難しいです。また短さゆえにビレイがシビアになり、グランドフォールの可能性が増えます。
■ まとめ
以上、7つの課題選択の課題選びのコツをお伝えしましたが、外岩初心者はじゃ、前はどうやって練習していたの?という疑問がわいた人がいるかもしれません。
むかしは、ジムがなかったので、リードの許可が出るのが、5年の外岩経験とかそういう感じで年レベルの修行時間があったのです。クラッギングにおけるリードはさほど難しいものではありませんが、以前はクラッギングは、もっと大きな山のマルチピッチの練習場とされており、目標到達レベルが今と比べると多くの知識が要求され、ただ岩場でレッドポイントで課題が落とせることを望むだけでなく、大きな山でのオンサイトが課題だったという事情がそうさせてきたようです。
しかし、そのような時代は終わり、外岩はちょっとした楽しみで登る時代になりましたが、依然として昔のままの形態なので、先輩後輩の絆で、長い間、セカンドをしてやっとリードをするようになった人にはなかったリスクが、現在の若い人で、初心者で外岩をしたい人には出てきています。
とはいってもちょっと考えてみれば、わかるようなリスクです。
自衛して安全に初心者時代を乗り切りましょう。
余談になりますが、海外の岩場に行けば、7つのコツを無視できる場合もあります。初心者ほど海外の岩場が必要、とされる理由です。
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