見出し画像

虚構がリアルを超える時〜weekndのスーパーボウルハーフタイムショー〜

ちょっと時間が経ってしまいましたが、2月7日(現地時間)にフロリダ州タンパのレイモンド・ジェームス・スタジアムで開催されたThe Weekndのスーパーボウルハーフタイムショー、本当に素晴らしかったですね。

The Weekndはその美しいファウルセットの声や、R&Bをベースにしたポップな曲調から「マイケルジャクソンの再来」と言われ続けてきました。しかしマイケルと決定的に違うのはその世界観。長いストリート下積み時代を経ている彼は、ドラッグ・アルコールにまみれた死を予感させる退廃的な歌詞が特徴です。

そして彼は、アルバムを出すシーズン毎にキャラクターを変える、日本ではあまり馴染みのないキャンペーンを行うアーティストです。これについて話し出すと止まらないので、また後ほど…笑 (ちなみに私は2019年ごろのとにかくモテモテだったころの「My Dear melancholy」が彼史上最も好きなアルバムです)2019年から始まった「After Hours」アルバムにまつわる一連の包帯男のキャンペーンは、ハーフタイムショーで完成したといっても過言ではないでしょう。

「顔中を覆った包帯は、他の人を喜ばせたい、自分を証明したいという表面的な理由からハリウッドの人々やセレブリティが自らを巧みに操る、くだらない文化を映し出したものだ」
(引用:https://www.ellegirl.jp/celeb/a35412764/c-the-weekned-reveals-the-real-reason-21-0204/)

自身が違和感を感じる文化を象徴するコスチュームに身を包み、ダークな歌詞を歌い上げる「AfterHours」は、ポップスター王道の「前向き・ポジティブ・エンパワメント」とは真逆です。しかし、2020年コロナ禍での先行きの見えない不安な日々と恐ろしいほどマッチし、このアルバムは世界中でメガヒットとなりました。

ハーフタイムショーは、世界中の誰もがその場に立つことを夢見る、世界一の大舞台のひとつです。ポップスターを揶揄するようなキャンペーンののちにこの舞台に彼が立つことは、あまりに皮肉が効いているなぁと感じたのは私だけではないのでしょうか。しかし、コロナ禍でのショーということを最大限考慮しながら、自身の特徴であるダークな世界観も残しつつ、演出も歌唱もぐうの音も出ないほど完璧だった今回のショー。彼が作り上げてきた虚構のポップスターが、リアルの熱狂を超えた瞬間でした。

来年は一体誰がこの舞台に立つのでしょうか?今から楽しみです!

きん
twitter→@heaco65
Instagram→@heaco65

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?