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黒い霧の奥に潜む者

こんにちは👋😃きんじょうです。

今回は終戦直後の日本で起きた数々の奇怪な事件を描いた名作ノンフィクション、『日本の黒い霧』(松本清張・著)から話を始めていきたいと思います。


占領下の日本の黒い霧


太平洋戦争で敗北した日本は米国GHQによって占領・統治されることになります。

GHQが戦後行った占領政策の数々は広く知られるところとなっていますが、占領時代の当時に発生した怪事件群については知名度が低いものが多いと思います。

かくいうわたしも戦後史や昭和史に全くというほど感心がなかったため、本書『日本の黒い霧』に収録された事件について、知っていることは殆どありませんでした。

おぼろげながらに帝銀事件やM資金といったキーワードに見覚えがある程度。
しかし、この事前知識が無いというのがよかったのです。

未知の怪事件の核心に迫っていく、稀代のノンフィクションとして楽しんで読むことができました。😊

本書は著者の松本清張さんがそれぞれの事件の大量の情報を分析して、事件の真相はこうであったのではないか、という推理を展開するというミステリーとしての嗜好もあるのです。

わたしはこの『日本の黒い霧』が松本清張作品のなかでも一押しというくらいお気に入りなのですが(事件ものノンフィクションが好きなので☺️)、案外批判的な評価もあるようです。 

批判内容の1つに
「事件の全てにGHQなど米国機関が関与している、という米国の陰謀ありきで結論づけられている」
というものがあります。

この批判は昭和35年の文藝春秋連載当時から読者のあいだで起こっていました。
作家の大岡昇平さんは「松本清張批判」と名指しで題して、雑誌に批判意見を掲載しました。

これに対して著者の松本さんは、

私はこのシリーズを書くのに、最初から反米的な意識で試みたのでは少しもない。
また、当初から「占領軍の謀略」というコンパスを用いて、すべての事件を分割したのでもない。
そういう印象になったのは、それぞれの事件を追及してみて、帰納的にそういう結果になったにすぎないのである。

『日本の黒い霧(下)巻末より 』

と巻末のあとがきで答えています。

自身が導きだした結論に、GHQの関与を示唆するものが多いのは、事件の情報を精査した結果である。というワケです。

しかし連載当時は公表されていない、または判明していない事実も多く、松本さんの結論が間違っているケースもあり、後の経緯が間違いを証明してしまう(伊藤律のスパイ疑惑など)ことも起こりました。

本書は連載当時の時代背景と、当時入手することが出来た限られた情報の中に生まれた作品である、という前提に立って読むべきです。


令和日本の黒い霧の奥には

松本さんは多様な情報を収集・分析していく中で、米国GHQの謀略という可能性を見出だしていきます。

しかし断片的な事実と推論の組み合わせであり、例えファクトベースの推理であろうともGHQを告発する程の証拠力は無いのです。

結果として、文学史に残る名作であっても陰謀論扱いをされてしまうこともあるのです。

確かに推理の方向性といいますか、目線がGHQ側に向いている印象はあります。

ただそれは、それ程に占領時代のGHQの支配力・影響力が広範に及んでいたことの証なのだと思います。

法律、政治、経済、教育、マスメディアその他あらゆる分野を改造しコントロールしたGHQですから、その超法規的な力が常に視野に入ってきたのでしょう。

絶対的な支配力を持つGHQが日本を去り、民主主義国家として生まれ変わった日本。
生みの親である米国に、どこまでも従属し続ける日本の黒い霧は去ったのでしょうか?😒

民主主義という割には政治が国民を豊かにさせない国。
政治以外の何かがおかしいのではないか、そんな想像は陰謀論的でしょうか。


また長くなってしまいました。ここまでお読みいただきありがとうございました。😊

次回は経済アナリストの森永卓郎さんの著書
『なぜ日本だけが成長できないのか』
のお話をしたいと思います。

また次回もお読みいただければ光栄です。


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