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首のないことを選んだニケ

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解離
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#叙情

迷星の追い風~星集め

迷星の追い風~星集め

先生、星の目的とはわたしたちのためにあり得るのでしょうか。

それは隣に座る女が、人体構造学の最中に投じたひとことだった。
 

ふりつづく雨に沈むわたしひとり分が女の影と重なる。一週間以上を絶え間無く降る雨に星など存在すら忘れかけていたところへ、女が無為自然を作為へとした。

人体に無数の宇宙を知ることは間々ある。女のいう星が天地ならば、そこに目的は存在しうると言えるのかもしれない。ただ、ここで

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真理

それは窓の向こう側から気狂いのふりした天使がいったんだ。

わたしは病気じゃない。
縞茄子と赤ピーマン混ぜたような頭の追随を
 
 
それ見たことかとほざく。
見てない
白い皿の上には、干からびたシナプス。
テリーヌではなくスープにすればよかったんだよ。

そうでないなら、一粒のレッドペッパーで事足りた。
なにを食べたい。

気狂いのふりした天使は皿の裏に書いた。

なに等無い。ここは真理だ、って

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人体飽和

臓腑の底に空を魅る、雲ながれ、嵐の吹き荒ぶ。
月の煌々とする胎もあれば、月待ちのものあり。
 
 
 
後は深くこだまを吸うようにとまれば粗粗、
おなじくして人体の飽和と為す。

唯、向かう。それが
理想でないにしろ、理はない。

暇が意図なく恋をするようなものだ。

Christmasは相対に

蝉の眠り覚めぬ、夏というにはまだ遠い。
今年は雨が多いわね、そう云ってあなたの横顔は傘より揺れる。
 
 
 
去年の唄が届きそう。
贈り物を選ぶ、雪のくにへと赤い神さまの鼻唄。忘れてきたわけになく待ち望む。

夏のひとより、冬のひとが好きだから。
いつだって隣に
 
 

あいたいChristmas。
ハナはいつだって赤いもの。

途中下車

途中下車

水の合わぬ池もある。
あまねく蓮の根を潜り、ときおり
一葉の滴りを見晴るかす。 

泳ぐことを止め、明日を数える。
ひと花、ふた花、

蓮の閉じた水に天ノ川の灌ぐよふ鰭を辷らかすも

会えない池に身を映すばかり。

七夜月七の日は、一年に一度訪れる。
わたしの心は、一年に一度後悔をする。
梅雨の明ければ少しも楽になるだろう。
然うして来年をおもふ。

赤のある風景

赤のある風景

彼女は聊か草臥れているよう。
なにかに飽いたのかもしれない。
なにかに嘆息しているのかもしれない。
 
 
主観に好き不好き否めずとも、
赤のある風景を厭う心もなく。
 
 
 
招き入れた部屋、わたしは彼女を磨いた。
すこし歪な容貌に仄か水彩のよう匂いが、
 
閑寂枯淡ともののあわれ。

金魚すくい

罵りあう世の残像よりも、
嘆いている思念を掬いたい。

それも水にとければおなじ。
 
 
影には根も葉も有る。
伸びるか縮むかは日の知るところ。

あとは水温計頼り。

びーるのみたいうた

つきなみなみにそそぐとこ、
やおらねがえりはねうさぎ。
こぼれたつきのゆくすえは、
ふかくふかくありました。

とっぷりくれたあかつきに、
のぼったつきのうたかたよ。

ひとりスイミー

ひとりスイミー

田圃をおよぐ蛙の輪唱と、引き売りの粧う鄙の空。
放熱に金魚は沈思を枕に眠る。

かしく

わたしは手紙が好きだ。
悪筆故にしたためるより待つよりがいい。

筆の根、その脳裏には紛うことなく、
寂寂たるや想いはからんとあるだろう。
 
 

わたしは、
その手紙を七夜ほど鞄に温めてから引出しにしまう。

かしくある。

存在忘却という名のもとにおいて

存在忘却という名のもとにおいて

それに唱えた。

これは薬だ。
それをハンバーガーだと宣う権限はたれない。

鼻カニュラは偉大である。
如何ともせん肺圧を許容する。
 
 
レタスを添えればよかったのだろうか。

有人無人

有人無人

或とき、わたしは山にいた。

山に登るとき、そこには二割の事象とそれにまつわる探求と探究あり、そして残る八割にはなにも無い。無だ。
故にその山にわたしはいなかった、という論を生む。

足の下は幾重もの堆積岩に覆われている。それより遥か下では摂氏何千度というわたしたちの核が息衝く。しかし、そこに人は無い。そして有る。

栗子隧道|とんちん漢|note(ノート)https://note.mu/tont

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野良の粧い

如才さん。
正確には如才無いさん。

それが名前。
敏捷であること、ひとつ。
とりわけて、
 
 
 
片目の利くこと。
動もすると、やおら前肢を畳む。

分けてやれば脂下がる。
 
 
それがあなた。

自覚とはなんぞや。
なおざりでは、塵にも気づかん。
 
 
猫か、金魚か。
金魚か、猫か。