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「抗体カクテル療法の広がりは現場に明るい兆し」

2021/09/20



TONOZUKAです。


抗体カクテル療法の広がりは現場に明るい兆し

以下引用

全国的に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性者が第5波で急増しており、宿泊施設に入所する人も増えてきました(図1、図2)。大阪府、東京都いずれも、コロナ禍で過去最高の水準に達しています。宿泊施設に勤務する看護師から、業務負担の増加を懸念する声が上がっています。



肺の予備能が高い若年の患者さんが多いとはいえ、宿泊療養者が増加すると、入院を要する軽症中等症患者も増えてしまいます。これを抑制するためには、いかに重症化させないかが肝要になります。

 そこで現在、進められている施策が、抗体カクテル療法を感染早期の療養者に投与することです。

宿泊施設や外来で抗体カクテル療法を




カシリビマブとイムデビマブによる抗体カクテル療法(商品名ロナプリーブ)は、発症から7日以内の重症化リスクがある軽症~中等症IのCOVID-19患者を対象に承認されていました。しかし、基本的に入院患者にしか用いることができなかった上、入院してからロナプリーブ登録センターに発注することから、投与する頃には時期を逸している現象が多くみられました。当院でも、軽症で入院したものの納入までに時間を要してしまい、投与日に中等症IIになってしまったケースがありました。

 「どうすれば早期にロナプリーブを投与できるか」。これが軽症中等症のCOVID-19患者における一つの課題になっていました。

 現在、1泊2日などの短期入院で抗体カクテル療法を始めていますが、事務方も含めて入退院処理が大変なことや、搬送に関わる人手が潤沢でないこと、点滴後の経過観察などがハードルになっています。そこで、厚生労働省は8月26日の中央社会保険医療協議会総会で、中等症患者や急変リスクの高い入院患者のCOVID-19診療に対する評価を引き上げました。具体的には、これまで特例として救急医療管理加算の3倍(2850点)を算定できるようにしていたところを、4倍(3800点)算定できるようにし、この対象には、抗体カクテル療法を行う患者さんも含むよう明記しています(図3)。


また、宿泊療養施設の中で投与する仕組みも充実させました。

 その一つの方法として使っているのが「宿泊療養施設を医療施設と見なす」という仕組みです。以前、私が勤務している大阪府の第4波では、宿泊施設で酸素療法が必要になるケースが多発しました。そこで、2021年2月15日に発出された「新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正を踏まえた臨時の医療施設における医療の提供等に当たっての留意事項について」(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000739057.pdf)において、「新型コロナウイルス感染症患者の医療・療養体制については、都道府県において地域の実情に応じて整備を進めていただいているところであるが、この中で、プレハブ等の設置やホテル等宿泊施設の活用等により、臨時の医療施設を整備することも、医療・療養体制整備の選択肢の一つとして考えられる」と明記されていることから、療養用の宿泊施設を「軽症患者向けの医療施設」と位置付けて、酸素濃縮器を設置していました。

 今回も同様に「宿泊施設」を「医療施設」に位置付けることで抗体カクテル療法を行う取り組みが徐々に動き出しています(大阪府では26日から)。宿泊療養施設の低層階を臨時の医療施設にする自治体もあれば、敷地内に有床の臨時医療施設を設ける自治体もあります。

 さらに厚労省は現状に鑑みて、条件付きで外来投与できるよう25日に自治体に通知しました(関連記事:抗体カクテル療法が外来でも使用可能に)。「新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬『カシリビマブ及びイムデビマブ』の医療機関への配分について(質疑応答集の修正・追加)」という資料に詳しく載っていますが、これによって、外来に加えて、有床診療所や「臨時の医療施設」に位置付けていない施設などで療養している人に対しても、一定の要件を満たす場合に処方が可能となっています(図4)。


将来的に外来や宿泊施設用にどのくらいロナプリーブが納入できるのかはまだ分かりませんが、これらの取り組みで入院に至るような患者さんが減ってくることを期待しています。

 一方で、抗体カクテル療法を実施する施設が増えるということは、それに関わる医療従事者の増員も必要になるでしょう。大阪府では、4000室ある看護師常駐宿泊施設を8400室にまで増やす見込みです。看護協会の協力もあって、めどは立っているとのことですが、大変なプランになることは想像できます。

 ただこれにも明るい兆しがあります。抗体カクテル療法は、点滴静注以外に皮下注射の有効性も示されているのです1)。販売元の中外製薬は皮下注射でも投与できるよう厚労省に承認申請をする方針を明らかにしました。これも現場としてはかなり助かる対応です。


(参考文献)
1) O’Brien MP, et al. Subcutaneous REGEN-COV Antibody Combination to Prevent Covid-19. N Engl J Med. 2021 Aug 4:NEJMoa2109682.






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