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「医療用コロナ抗原検査キットを薬局で扱う意味」

TONOZUKAです。


医療用コロナ抗原検査キットを薬局で扱う意味

以下引用

2022年度調剤報酬改定への議論が少しずつ熱を帯びる中、数日前からマスコミでは報じられていましたが、新型コロナウイルスの医療用抗原検査キットについて、2021年9月27日に厚生労働省から事務連絡が出されました。一次情報を見ておくことは、何事においても重要なので、7ページの書類ですが、ぜひご覧いただきたいと思います。

 というのは、この件は諸々、一般のメディアでも報じられていますが、それを表面的に読むだけでは、来局者が咳込みながら「抗原検査キット、買えますか……」と言ってくるようなイメージ(!?)を想像してしまう薬剤師も少なくないのではと危惧するからです。決してそういうことではありませんし、今後の薬局の未来を左右する大きなテーマになると思いますので、この抗原検査キットに関する薬局でのポイントを、大きく3つに分けてまとめてみました。

(1)薬局医薬品として「特例的に」販売される

 薬局で販売できる医薬品としては、OTC薬があります。今回、そうではないようですが、医療用の特例販売許可ということです。

 今回の事務連絡では「薬局医薬品」という聞き慣れない言葉が出てきますが、OTC薬を念頭に置くとすれば、少なくとも第1類医薬品以上ということになるでしょうし、医療用医薬品を念頭に置けば零売に近いものになるでしょう。ですので、今回のキットの販売においては、薬剤師が「この来局者に販売してもよいものかどうか」を聞き取りを通じてチェックし、正しい使い方を丁寧に説明するだけでなく、改正医薬品医療機器等法(薬機法)でも示されたように、販売後のフォローアップを行う必要があります。

 すなわち、今回の抗原定性検査の特性上、「安心して旅行に行くために、事前にチェックしたい」といういわゆる「陰性証明」を希望する来局者には、適さない検査ですので、販売の際には十二分に説明し、理解してもらう必要があります。

 また、呼吸器症状や発熱がある人が、薬局で購入した検査キットで陰性だった場合に、「あぁ、良かった!コロナじゃないわ!」と安心するためのツールでもありません。当然のことながら偽陰性の可能性もありますので、引き続き感染対策を行いながら生活していただくように指導する必要があります。

 このような検査を自分で行うのが初めての一般の人が、その手技や結果の見方に悩む例も出てくるでしょう。「もし、使用される際やその後の結果でお聞きになりたいことがあれば、ご連絡くださいね」という声掛けは、購入者にとっても心強いのではないでしょうか。

 そして、万が一陽性であった場合には、その地域の感染症指定医療機関など対応できる医療機関への受診を速やかに促すフォローや、その際に医師に今までの経過を知らせるような取り組みが必要になります。まさに、かかりつけ薬局、健康サポート薬局、地域連携薬局として、ふさわしい役割であると感じます。

 そういった意味では、いつも申し上げているFollow、Assessment、Feedbackが求められる、まさに薬剤師が取り組むべき「薬局用医薬品」と言えるのではないでしょうか。

(2)調子の悪い人が買いに来て店頭でチェックするわけではない

 私自身、最初にこのニュースを耳にしたとき、「熱があるのでコロナかどうか調べたいのです」という人が来局するようになったら、感染対策や当社スタッフへの趣旨説明、注意事項の徹底などをどうしようか、と思いました。

 もちろん、対策・説明・徹底はいずれにしても必要かつ極めて重要なのですが、今回薬局で販売する抗原検査キットの用途は、万が一のときのために自宅にキットを備えてもらい、「体調がおかしいな」と思ったらセルフチェックし、その結果に応じて速やかに医療機関を受診してもらうといったイメージです。

 ですので、薬局店頭では、処方箋を応需したり、発熱や呼吸器症状などがない来局者に薬を交付したりする際に、「もし熱が出た場合に、ご自宅で測定できるキットが特別に許可されて、薬局でもお買い求めいただけるようになりました。いかがでしょうか」とお薦めするイメージです。

 そして、「じゃぁ、念のため1個買っておこうかな」と購入を希望された患者さんには、(1)で述べたような対応が必須になると思います。

(3)これからの薬局のあり方を変えるきっかけになり得る

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という世界のあり方を一変させた疾患に対して、薬局薬剤師が、抗原検査キットという「薬局医薬品」を通じて、最初に患者さんに接点を持つことができるということです。

 私が「薬局2.0」、そして最近では「水車小屋型薬局」とお話ししている「調剤薬局」というあり方は、厚労省の検討会の議論でも、脱却すべきだとの意見が出ています。この形態の薬局では、患者さんとの最初の接点は医師が担当し、その後、処方箋を持って来局するスタイルでした。

 薬局薬剤師がセルフメディケーションに取り組もうとするとき、薬剤師自身も患者さんも少なからず違和感を抱くのは、この「ファーストコンタクトを薬局薬剤師が担う」ということを、医薬分業が急速に進展したこの30年ほどの間、してこなかったということにあるのかもしれません。

 また、OTC薬の販売では、売るところまでを担当するイメージであったため、アクセスが良く最安値で購入するという合理的な行動が当然広まりますから、アクセスや価格で劣る「調剤薬局」での販売は広がらなかったのだと思います。

 今後、抗原検査キットという「薬局医薬品」に取り組むことで、薬局薬剤師がファーストアクセスを自然に担当するようになります。次に販売においては、適応や説明が極めて重要になります。購入者にとって、OTC薬や使い慣れた医療用医薬品の零売においては、それほど適応や説明は重要ではないですが(だからこそ、自分で購入されますよね!)、今回のキットは違います。しかも、重症化や感染拡大が懸念されるCOVID-19に対する「薬局医薬品」ですから、ごく自然に、また熱心に薬剤師の説明に耳を傾けてくれるでしょう。

 そして最も大事なことは、実際に使用する際には、改めて実施方法や検査結果の判定、さらには、その結果に応じてどう行動すべきかといったサポートを、薬剤師がフォローすることがこれまで以上に意味を持つという点です。こういった経験を通して、薬剤師も患者さんも、薬局という社会インフラの持つ意味や可能性について、視野が広がっていくのではないかと思います。だからこそ、この抗原検査キットという「薬局医薬品」の販売にどう取り組むのかが、薬局や薬剤師の未来を大きく左右すると言えるでしょう。

 最後に、今回の事務連絡の目的は、(1)セルフチェックを適切に行うこと、(2)医療機関への受診がスムーズに行えることを通じて、新型コロナウイルスの感染拡大防止を図ることです。この大きなテーマに、薬局・薬剤師が前向きに取り組み、「医薬協業」を進めていくことを、今回の「特例」は求めていると思います。






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