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「コロナワクチン後遺症に高額をつぎ込む患者たち」

TONOZUKAです。 



コロナワクチン後遺症に高額をつぎ込む患者たち

以下引用

前回は、コロナワクチン後の後遺症(ワクチンとの因果関係の真偽は別にして)に悩む患者たちに対するいわば「押し売り」とも呼べるような一部のクリニックの“ビジネス”について紹介した。高額の自費の血液検査(なんと7万円!)、高額なサプリメントの販売、自費での繰り返しの超音波検査などの実態について報告したわけだが、その後も信じられないようなビジネスの被害を複数の患者から聞いている。以下は全て診察室またはメール相談で患者から直接聞いた情報だ。




・事例A: 「コロナワクチン後遺症は波動でしか治らない」と医師に言われ、別室に呼ばれて看護師(と思わしき女性)から延々1時間も高額な波動治療を受けるように説得された(最終的には逃げ出すことに成功した)。

・事例B: 「海水点滴」なるものを受ければコロナワクチン後遺症が治ると言われ、半ば強引に受けさせられた。終わってから「繰り返し受けないと意味がない」と言われたが、あまりにも高額なためその後は受診していない。

・事例C: コロナワクチン後遺症だと言うと、何の説明もなくステロイドを注射された。さらにイベルメクチンを処方された。再診時に「何も変わりません」というと、ステロイドの注射を続けるしかないと言われた。再診時に担当医は自分のことを覚えておらず、ワクチン後遺症の説明が前回とは全く異なっていたためにその後の治療を断った(このクリニックは全て保険診療だった)。



 事例Cのクリニックは保険診療で“治療”を行っている。ワクチンの後遺症を訴える患者に対しイベルメクチンを保険診療で処方してもいいのだろうか……。

医師を信頼せず「自己治療」する人たち

 さて、今回紹介したいのはクリニックのビジネスではなく、患者自らが望んで高額をつぎ込んでいる「自己治療」についてだ。医師の話を信用せず、健康食品やサプリメント、あるいは個人輸入薬に高額を費やす患者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前から珍しくなかったが、コロナワクチン後遺症(及びコロナ後遺症)の患者の場合、従来の自己治療とは違う点があるように思う。その違いについては後述するとして、まずは事例を紹介しよう(ただしプライバシー確保の観点から、複数の患者から聞いた情報をアレンジして構成しなおしていることを断っておく)。


事例D:40歳代男性

 コロナワクチン(メーカー名は伏せておく)を1回接種した2日後から動悸が出現。その後全身に痛みが生じ、さらに倦怠感、頭痛に苦しむようになった。近くのクリニックを受診したがほとんど相手にしてもらえず、ネットで探したコロナワクチン後遺症に詳しいとされている複数の医療機関を受診した。採血採尿、胸部X線、心電図検査のみならず、心エコー、脳MRI、PETなども受けたが異常がなく、薬については、複数種の漢方薬、ビタミン剤、抗うつ薬(SSRI)、プレガバリンなどが処方されたがいずれも改善せず。「これ以上できることがない」と言われ、事実上の受診拒否をされた。

 SNSで「Bスポット療法が効く」と聞いたため、この治療で有名な遠方のクリニックを受診したがやはり効果がなかった。そんなとき、HIVの治療薬「マラビロク(商品名シーエルセントリ)」がコロナワクチン後遺症に効くという情報をやはりSNSで知った。なんでも、フルボキサミン、アスピリン、イベルメクチン、大量のビタミンCなどと組み合わせると効果が倍増するらしい。しかし、他の薬の購入はさほど難しくないがマラビロクだけは入手が極めて困難だという。そこで、グーグル翻訳を使って英語のSNSから情報収集し、ついにスイスの個人輸入サイトにたどりついて念願のマラビロクを入手した。値段は2カ月分で30万円以上もしたが患者はこれを高いとは全く思わなかった……。


この患者が当院を受診したとき、「日本ではすごく入手が困難な貴重な薬を手に入れることができたんです!」と興奮気味に早口で得意げに話し始めた。まるで、市場にはめったに出てこない希少価値のある商品を探し当てたコレクターのようだ。苦労して手に入れたマラビロクを丁寧に鞄から取り出した患者の言葉に驚かされた。そもそも、必死の思いで探し求めてようやく購入できたマラビロクをすぐに内服せずに当院に持参したのはなぜなのか。患者の目的は「このマラビロクが本物かどうか鑑定してほしい」だった。

 「そんなことできるわけないでしょ」と呆れた素振りで返答したくなったが、ここはぐっと我慢した。今、そのような態度をとればこの患者の医療不信が加速するのは間違いない。そこで、できるだけ穏やかに振舞い、まずは患者を否定しないように努めた。

 だが、このケース、問題はちょっと複雑だ。

 イベルメクチンであれば、個人輸入したり、ネットで知り合った日本人から購入した場合、あるいは(保険でも自費でも)クリニックで処方されたものを飲んでいいかと相談をされたときは、メタアナリシスで効果が否定されていることや(例えばClinical Infectious Disease誌のこの論文)や、世界中の論文を検証しなおし有効性を否定したBBCの記事の話などをして、「個人的には賛成しない」と断った上で、「飲みたいのならどうぞ。もしも副作用などが出れば相談してください」と言っている。そう言えるのは、僕はこれまでイベルメクチンを100人近くの患者に処方しており(もちろん全て疥癬患者)、大きな副作用は一例も経験しておらず、使い慣れたイベルメクチンなら何かトラブルがあっても対処できるだろうという思いがあるからだ。

 ところがマラビロクはそうはいかない。当院に通院しているHIV陽性者にこの薬を内服している患者はいるが、僕自身にはこの薬の処方経験がない。それ以前に、この薬を始めるのならば、内服前にHIV陰性であることを確認しなければならない。もしも、HIV陽性の場合、耐性ウイルスを生み出すことになりかねないからだ。しかし、コロナワクチン後遺症で苦しんでいて、30万円もの大金をはたいてマラビロクを獲得したこの患者にHIVの検査を勧める気にはなれない。医療機関で検査をすれば自費になるし、すぐに飲みたいと考えている患者に保健所などで実施している無料検査を促してもすんなり受け入れられるとは思えないからだ。

 結局、諸事情を勘案して、この患者がHIV陰性であることに賭けることにした。そして、内服後1カ月が経過する頃に血液検査をしようと約束した。個人輸入のマラビロクの副作用の有無を調べるという目的での採血は保険診療の対象外だが、元々この患者は(ワクチンが原因かどうかは別にして)倦怠感や全身の疼痛などの症状を訴えているわけだから、肝腎機能を中心とした採血を一度行うくらいは許されるだろう。

 さて、コロナ流行前から珍しくなかった「医者の言うことを聞かず、ネットやテレビで得た情報からサプリメントや健康食品に高額を費やす患者」と、「コロナワクチン後の症状を治すために高額をつぎ込む患者」の違いはどこにあるのだろうか。
それは、前者は「まだ医者に失望しているわけではない」ということだ。降圧薬を勝手に中止して、テレビのパーソナリティーが効果ありと言っていた高額な健康食品を摂取するような患者たちも、たいていはしばらくすればまたやってくる。少なくとも医師に「失望」はしていない。一方、コロナワクチン後の症状を治すために、イベルメクチンやマラビロクの個人輸入を試みる患者たちの一部には「どうせ医者に相談しても無駄だ……」と諦めの境地にまで来てしまっている人たちが存在する。

 我々は患者からの信頼を大きく失っている。COVID-19のために失ったのではなく、元々信頼されるに値しないことをCOVID-19に暴露されただけなのかもしれない、と最近は思うようになってきた……。





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