note開設にあたって

 この度、不老不死研究の最前線という名前でnoteを開設しました。最初の記事として、このnoteで何を発信していくのか、何を目指していくのかということを書いていきたいと思います。


簡単な自己紹介

 僕は関連分野の研究をしている大学院生です。とはいっても不老不死の研究をすると掲げている研究室なんてほぼ皆無なわけで、あくまでも今後の発展次第で不老不死の実現につながる可能性があると僕が考えているという話です。普段は研究室に引きこもってひたすら研究をしています。
 そんな僕がこのnoteを開設することを決めた理由について、簡単に書いていきたいと思います。

不老不死研究の情報は少ない?

 僕がこのnoteを開設しようとした理由は、これです。
 不老不死研究、もっと広くいえば老化やアンチエイジングといった分野に興味がある人はたくさんいると思います。人間誰しもが死や老いへの恐怖を抱えており、哲学や宗教の源泉になっていわけです。実際、不老不死というワードの検索数を調べてみたところ、日本語でも月に数万回検索されているらしいです。
 しかしその需要に比べて、「不老不死研究」という形で現在の最先端の研究を紹介するような情報媒体はほとんどないなと感じました。これはある意味当然で、そもそも現在直接的に不老不死を目標とすると喧伝している研究はほとんど皆無(全く皆無というわけではありませんが)だからだと思います。今の科学水準だとまだまだ実現には程遠く、糸口すら掴めていないのが現状だと思います。
 ただし、将来的に不老不死の実現につながる可能性のある研究はもちろん行われていますし、論文もたくさん出ています。後に詳しく触れますが、分子生物学、薬学、神経科学、機械工学など、様々な分野があります。そういった研究の最先端について網羅的に紹介してくれるような情報媒体があってもいいのにな、と僕は思いました。

 このような思いは、僕の個人的な経験にも紐づいています。
 高校生の頃、僕は進路を選択する際に、不老不死の研究をしたいと漠然と考えていました。しかし具体的に科学の最先端でどのような研究が行われており、どのような研究分野に進むのが一番良さそうかということは全くわからなかったのです。周りに相談しても、不老不死なんて実現不可能だよ、とか言われました。そもそも良い大人になって不老不死なんて妄言を口にしているのは恥ずかしいという風潮さえあるみたいです。
 でも、僕と同じように不老不死の研究をしたいと密かに思っている高校生や学部生は表に現れないだけでたくさんいるんじゃないかと思っていますし、そういった人の中は何の情報を頼りにすればいいのか、誰に相談すればいいのか、途方に暮れている人もいるんじゃないかと思います。
 また、最近では老化本やYoutube動画などで断片的な情報は紹介されるようになってきましたが、そういった場所で情報を仕入れた一般の方の中にはより最新、最先端の知見に触れたいと考える方もいるんじゃないかと思います。そして、そういう人たちがニーズを満たすことのできる情報媒体は、少なくとも日本語では乏しいんじゃないかと僕は勝手に考えています。

 そこで不老不死の実現につながる可能性のある最先端の研究をたくさん紹介していく場所を作ろうと考えて、このnoteを開設することにしました。

どのような研究が不老不死の実現に繋がる?

 note開設の動機を説明したので、次はそもそも不老不死の実現につながる可能性のある研究というのは何を想定してるんだという話をしましょう。

 不老不死を実現しようとすると、大まかに2つのアプローチに分けられると思います。①身体を維持する方法(生命科学的アプローチ)、②身体を維持せずに意識を持続させる方法(機械工学的アプローチ)です。
 この2つのアプローチの優劣を本当に個人的に評価してみます。まず生命科学的アプローチの優れている点としては、部分的に取っ掛かりが見え始めている点でしょう。FDA(アメリカ食品医薬品局)やWHO(世界保健機関)でも老化を自然現象ではなく疾患と捉える動きが出始めていますし、専門誌としてNature Aging誌がNature系列の姉妹誌として2021年に創刊しました。いわゆる老化本・アンチエイジング本は日本語でもたくさん出版され、ベストセラーになる本も出てくるなど盛り上がりを見せています。着実に研究成果の蓄積が進んでいるという印象です。
 ただ生命科学的アプローチの難しいのは、寿命を延ばす(120歳まで生きられるようになる、200歳まで生きられるようになる)という意味での達成については見込めるものの、完全な不老や不死の実現は難しいという点です。多くの老化研究者は、健康寿命を延ばすことや最大寿命を延ばすことは可能だと考えているものの、それでも完全な不死を手に入れることは不可能だと考えています。電化製品をいくら丁寧に扱って適切な修理を繰り返したとしても、それが物である以上いつかは壊れてしまうのと同じです。

 一方で機械工学的アプローチはより「不老不死」という言葉のイメージに近い結果を実現するポテンシャルを持っています。具体的にどのようなイメージかというと、意識を機械に移植するといった感じです。これはMind uploadやmind transferと呼ばれ、多くのSF作品に登場するアイデアです。このアプローチを採用すれば有限な身体に依存する必要もなく、機械の身体が壊れそうになったらまた新しい身体に乗り換えればいいわけで、(地球や宇宙の寿命といった壮大なことを一旦考えなければ)完全な不死に近い状態が実現できることになります。
 しかしこのアプローチの問題点は、現時点で全く取っ掛かりが見えていないことです。無数の神経細胞を機械で再現する方法に目途は経っていませんし、そもそも理論的根拠として、意識とは何かというのがわかっていないのです。近年、統合情報理論などの意識の科学的理論は提案されているものの、通説といえるようなものは全くないのが現状です。マイルストーンといえるような成果が得られるのさえ、生命科学的アプローチに比べれば遥か先のこととなるでしょう。

 要するに、一長一短あるわけで、一方のアプローチが他方より優れているというわけではないと僕は思います。その前提で、人類が不老不死に取り組むのなら、生命科学的アプローチで「時間を稼ぎ」、機械工学的アプローチで最終的な不老不死を実現するのが現時点で一番有望なアプローチなのかなと思っています。そこで本noteでは、①生命科学的アプローチの土台として分子生物学や老年学、薬学などを、②機械工学的アプローチの土台として神経科学や意識の科学、神経工学などを、それぞれ取り扱っていこうと考えています。どちらも、バランス良く紹介していけたらと思います。

このnoteでやっていくこと

 というわけで、ここからは具体的なこのnoteの内容に触れます。
 「不老不死研究の最前線」という名前の通り、基本的には最新の英語論文を紹介したり、国際学会での議論を紹介したりということをしていきたいと思います。このnoteに辿り着くような方であれば、既に書籍やYoutube動画などである程度の知識を獲得している場合も多いと思うので、ここでは差別化のために最新情報・専門的な情報を供給していきたいと考えています。
 たとえば、昨日出た科学論文をわかりやすく日本語で紹介する、といったことは書籍などでは無理な芸当ですが、ここでは可能です。そうやって最先端の情報を紹介していくことで、不老不死研究についての情報収集をしたい方がまず訪れる場所、そんなプラットフォームにしたいと考えています。

 とはいえ正直なところ探り探りで、どれだけ需要があるかもわかっていないので、このnoteに辿り着いた方で興味があるという方がいましたら何らかのリアクションをしていただけると嬉しいです。また、こういう情報がほしいという要望も歓迎です。試行錯誤で良いものにしていきたいと思っているので、ぜひよろしくお願いします!


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