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コンビニでの出来事

おはようございます。
kindle作家のTAKAYUKIでございます☆彡

ぼーっと毎日を生きていたら、野良猫と戯れていたら、熱燗をチビチビ飲んでいたら、あっという間に年末を迎えようとしております。
1日を懸命に生きていると言うよりは、「それは明日やればいいじゃん」、「とりあえず先手だけ打っておくか」、ってな感じで緩い枠組みの中で生きているのが実情でございます。

過日、コンビニに入店。お手洗いのあとで、僕はアメリカンドッグを購入しようと思い、所定の位置に並ぼうと通路を進んで行った。すると総菜コーナー側から、物凄い勢いでおじいさんが割り込んできた。もう少しで衝突するところだった。
推定70歳のおじいさん。かろうじて髪の毛が残っている。
僕と目が合ったおじいさんが、一瞬、ビクッとした。僕の存在に気づかなかったようだ。
「あっ…どうぞ」
僕の声掛けに、おじいさんは照れくさそうに会釈をすると、僕の前に並んだ。
おじいさんはスエットの上下を着て、茶色のサンダルを履いている。そのサンダルは、タイル式のトイレ内で履き替えた、あの便所サンダルにそっくりだ。色も茶色だし。
僕はちょっと懐かしさを覚えた。

レジカウンターの店員さんが、おじいさんをコールした。
「次の方…」
かなり食い気味で、おじいさんが「これ!」と言いながら、レジカウンターにレシートを置いた。
「こちら、無糖と微糖がございますが」
店員さんの問いに、おじいさんが詰まった。
「なんなの。それ?」
おじいさんがぶっきら棒に言った。
「こちらの引換券には、無糖と微糖のどちらかをお選びいただく事になっております」
「どうちがうの?」
おじいさんは、ずっと食い気味で言葉を発している。
「コーヒーに砂糖が入っているか、いないかの違いです」
店員さんは心底丁寧に対応している。僕も見習わなくてはならない。
「ったくよお」
半分切れ気味のおじいさんは、スエットのポケットからスマートフォンを取り出すと、自分の顔の前で操作を始めた。
「はいよ」
スマートフォンから、おばあさんの声が聞こえた。
するとおじいさんが、またビクッとなった。
「おめえ~砂糖いるのか?」
おじいさんがスマートフォンに向かって言った。音量からして、スピーカー状態で通話をしている。これはまずい。店内中の人たちが聞き耳を立てている。

個人情報ダダ漏れ状態。

「砂糖はまだあるだよ」
おばあさんが言った。
「料理の砂糖じゃねえべ。飲む砂糖だョ」
「砂糖は飲まねえョ。わたしゃあ」
会話が全く嚙み合っていない。
ってか、おじいさんが焦っていて、肝心の『コーヒー』を言い忘れている。今のところ、おばあさんは何も間違った事は言っていない。

すると、店員さんが小声でおじいさんに言った。
「あっ…コーヒーの砂糖だお。武藤か…尾藤か…どっちだ?」
僕は吹き出してしまった。
イントネーションが違い過ぎている。
「はあ? わたしゃどちらも存じ上げませんョ」
おばあさんが絶望の声を上げた。
せっかちなおじいさんに振り回されるおばあさん。

また店員さんが、おじいさんにアドバイスをした。
「おめえいつも珈琲に砂糖を入れて飲むのかって」
ついにおじいさんが、今日1番のショットを放った。
「あたしゃ、お茶しか飲まねえ。知ってっぺョ」
通話が切れた。
レジカウンターを見つめているおじいさん。その後ろ姿は、今年僕が見た中で1番の哀愁が漂っている。
顔を上げたおじいさんが言った。
「武藤をくれ」

平々凡々の日々を送っている僕に、こんな刺激的な出来事を見せてくれたおじいさんに幸あれッ!


【了】

https://note.com/kind_willet742/n/n279caad02bb7?sub_rt=share_pw




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