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「公正証書遺言」とは?

前回は遺言の作成方式のうち「自筆証書遺言」について説明しました。
今回は、「公正証書遺言」についてお話していきます。


「公正証書遺言」を簡単に言うと

「公正証書遺言」とは、公証人に遺言書を作成してもらう遺言方式です。

公証人とは

公証人とは、法律上の公務員ではありませんが、各法務局の管轄に所属し国の公務である公証作用を担う実質的な公務員です。公証人は原則として法曹の職務を経験した元裁判官・元検察官・元弁護士がなっていますから、法律のプロです。

公正証書遺言は、そのような公的な立場で法律のプロである公証人に依頼して作成するため、その証明力は非常に高いです。したがって、ご自分が亡くなった後に、相続人が遺言の効力を争うような事態を回避するためには、この「公正証書遺言」を利用して遺言を作成することが確実な方法といえます。

では、ここでそのメリット・デメリットを確認してみましょう。前回の自筆証書遺言と比較していただけるとわかりやすいかと思います。

メリットとデメリット

【メリット】
・紛失のおそれがない。
・公証人が遺言者の意思能力を確認するので、意思能力をめぐる争いが避けられる。
・検認手続きが不要。
・体が不自由であっても、公証人が自宅や病院などに出張して作成してもらえる。

【デメリット】
・費用がかかる。

デメリットなさすぎでは?!

そうです。公正証書遺言は、費用がかかることを除いてのデメリットがないのです。

かかる費用は?

≪公正証書遺言の作成費用≫
公正証書遺言の作成は、2種類の費用がかかります。
1つは、「公証人の手数料」でもう一つは、「専門家(弁護士・司法書士など)に依頼した場合の報酬」です。

ご参考までに

公証人の手数料は、遺言に記載する財産の価額を基準にして算出されます。詳しくは、下記の日本公証人連合会HPに明記されています。
Q7.公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらい掛かるのですか。 | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)

もう1つの専門家に依頼した場合ですが、これについては依頼しなくても作成は可能です。ただ、事前に周辺の事情などを相談しながら進めたいような場合には、依頼するのがよいでしょう。専門家の報酬は、事務所単位で決定できるため一概にはいえませんが、おおよそ10万円前後であるケースが多いかと思います。依頼される場合は、事前に見積もりを確認するとよいでしょう。
ちなみに、当事務所では9万円(証人2人の立会日当含む)で承っております。

公正証書遺言作成には〝証人2人”の立会いが必要になりますが、専門家に依頼すればその手配を含めてすべてを段取りしてもらえます。公証役場でも証人の手配は可能ですので、専門家を利用せずに作成する場合には公証人にその旨伝えましょう。
証人は自分でも手配することができますが、成人でかつ法律上相続とは無関係な人でなくてはなりません。具体的には以下の人は承認になることができません。
①未成年者
②推定相続人(将来、遺言者の相続人となる予定の人)
③推定相続人以外でも、遺言の中で財産を受ける人として指定されている人(受遺者)
④上記②③の配偶者、直系血族(祖父母・両親・子供・孫などの縦のつながりの人)

遺言でき上がりまでの手順

≪公正証書遺言作成の流れ≫
次に、公正証書遺言作成の流れを確認していきましょう。
①遺言の内容を考えて、下書きする。
⇒ここが一番重要です。
     ☟
②公証役場に確認してもらう。
⇒公証役場にFAXするなどして、内容や記載をチェックしてもらいます。作成してもらう公証役場は居住地などには関係なく、どこの公証役場でも構いません。
公証役場の詳細は下記から検索してください。
公証役場一覧 | 日本公証人連合会 (koshonin.gr.jp)
     ☟
③必要書類を集める。
⇒公正証書遺言作成には以下の書類が必要となります。
・遺言者の印鑑証明書(3ヵ月)
・遺言者と財産をもらう相続人の関係がわかる戸籍謄本
・遺言で相続人以外の人が受遺者となる場合には住民票
・財産の資料(不動産の登記事項証明書及び評価証明書、預貯金通帳コピーなど)
※その他事前に公証役場に確認しておくこととよいでしょう。
     ☟
④遺言作成日時を予約する。
⇒公証役場に日時を予約します。自宅などに出張を希望する場合はその旨も伝えます。
     ☟
⑤予約した日時に遺言書作成
⇒当日は、公証人・遺言者・証人2人で遺言書を作成します。家族などが付き添うこともできますが、作成中は別の場所で待機するよう指示されます。
     ☟
⑥謄本を受け取り、手数料を支払って終了。
⇒原本は公証役場で保管され、その謄本(写し)が渡されます。仮に紛失しても、公証役場に原本がありますから効力は失いませんが、大事に保管するようにしましょう。   

今回は、公正証書遺言について確認してきました。
遺言の種類の中でも、最も確実な方式ですので、可能であれば公正証書遺言を利用されることをおすすめします。

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