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「自筆証書遺言」とは?

前回は「遺言」についての概要を説明しました。

今回は、その中でも「自筆証書遺言」についてお話していきます。


「自筆証書遺言」は手書きで

「自筆証書遺言」とは文字通り自筆で書く遺言のことです。これにも明確なルールが定められており、例えば本文をパソコンで書いた場合には遺言自体が無効になります。

ルールがある!


自筆証書遺言を書く上でのルールを以下挙げてみます。

その1

①必ず本人の自筆で書く。
本人の自筆で必ず記載します。
ただし、別紙として「財産目録」を作成して財産を列挙する場合、この「財産目録」については、パソコンで作成しても構いません。ただし、この場合も財産目録の下部などに氏名を自署し捺印しておくことが必要です。

その2

②作成日付を記載する。
前回お話ししましたように、遺言は何回書き直してもよく死亡に近いものが優先されます。したがって、作成日付を記載していないとその前後がわからないため無効になります。
かつて、裁判で争われたものとして「吉日」と記載した場合の効力があります。例えば、作成日を「令和5年4月吉日」とした場合に有効か無効か、ということです。これで考えると、「令和6年7月吉日」の遺言が別に出てきてもその前後はわかるので、一見すると有効とも考えられるのですが、「無効」という判決になっています。
せっかく残される人のことを考えて遺言を書いても、日付を省略したばっかりに無効になっては残念なので、しっかり記載するようにしてください。

その3

③氏名を記載する。
これは当然といえば当然ですね。氏名がなければ誰の遺言かわかりません。
氏名は戸籍上の氏名を記載しましょう。例えば、有名な方で芸名や通称名などで本人が特定できる場合には遺言が有効とされるケースもあるのですが、ケースバイケースなのでできれば避けたいですね。

その4

④押印する。
押印も法律上のルールとして規定されています。ただし、実印でなくともOKです。
これについては、今後の時代の流れとともに不要になるときがくるのかもしれません。
また、間違えた箇所の訂正の仕方も法律で明記されており、これに従う必要があります。
具体的には、訂正箇所に押印し、欄外に例えば「三行目、一字削除」などのように記載します。できれば、せっかくの大切な遺言なので、間違えたら最初から書き直す方がよいでしょう。

メリット

≪自筆証書遺言のメリット≫
自筆証書遺言を作成するメリットは、以下のようなものになります。
①いつでも自分の都合にあわせて簡単に作成できる。
②お金がかからない。

デメリット

≪自筆証書遺言のデメリット≫
一方でデメリットとしては以下のものが挙げられます。
①ルールを間違えると無効になることがある。
②紛失するおそれがある。
③書いた本人の作成時の意思能力が死後に争われることがある。
④遺言にもとづいて相続手続きをするときに家庭裁判所で「検認手続き」をしなければならない。
「検認手続き」は、遺言者の死後に遺言の状態を保存するため(後に偽造をされることを防止するなど)、家庭裁判所で現在の状態を確認してもらい証明をしてもらうものです。
この手続きをすれば、遺言に書かれた内容が争われないということではありません。

少しでもデメリットをなくしたい方!

          ☟デメリットを緩和させる方法

令和2年7月10日に法律の改正があり、「自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度」が施行されました。
この制度を使えば、上記デメリットのうち①②④は心配しなくてもよくなります。
法務局で形式上のルールに沿っているかを確認してもらい、死後50年間(データは150年間)は保管されますから紛失の恐れがありません。
また、法務局という官公署によって保管されるため偽造のおそれがないため、検認手続きも必要なくなります。
保管の申請には3900円がかかりますが、この制度を利用するメリットは大きいといえます。
ただし、遺言者本人の遺言書作成時の意思能力などが後に争われた場合には、この制度では担保されませんから、デメリットの③を解消することができないことになります。

「公正証書遺言」はこれらのデメリットなし!

これらのデメリットをすべて解消したい場合には「公正証書遺言」を利用するとよいです。

ご参考までに

【法務局による自筆証書遺言保管制度参考URL】
02 遺言者の手続 | 自筆証書遺言書保管制度 (moj.go.jp)

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