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トーテムポールの記憶 PART1

トーテムポールの記憶 PART1
森の奥深く、霧がかかった古代の森には、数千年の時を超えて立ち続けるトーテムポールがある。その木彫りの彫像には、かつてこの地に栄えた文明の記憶が刻まれている。木肌には風化による細かなひび割れが走り、鳥たちのさえずりが静かにこだまする中で、古代の神々が祀られたその姿は今もなお荘厳だ。
この地を支配した文明は、星々の運行を観察し、自然の声を聞き取ることに長けていたという。彼らはトーテムポールを神聖視し、それぞれの彫像に固有の魂を宿すと信じていた。大地を司る神、風を操る精霊、そして夜空に輝く星の精。これらの神々はトーテムポールを通じて古代の民と語り合い、彼らの運命を導いた。
トーテムポールに刻まれた象徴は、古代の民の知恵と信仰を映し出している。太陽と月が交差する場面、地と天が融合する瞬間、そして生命の輪が繰り返す無限のサイクル。それらは単なる装飾ではなく、古代の知恵を伝えるメッセージであり、時を超えて生きる者たちへの警告でもあった。
ある夜、森の中でひっそりと語られる物語がある。かつて、文明が頂点に達したとき、彼らは星々に触れるほどの力を得た。しかし、その力は自然のバランスを崩し、森の神々の怒りを買ったという。神々は大いなる嵐を呼び起こし、大地を揺るがせ、文明を跡形もなく消し去った。その時、唯一残されたのがこのトーテムポールだった。
今、森を訪れる者は少ない。だが、たまに訪れる者は、トーテムポールに耳を傾けると、風に乗って運ばれてくる古代の囁きを聞くことができるという。その囁きは、忘れられた文明の知恵と後悔、そして希望の物語を伝えている。
トーテムポールの記憶は、単なる古代の遺物ではなく、過去と未来をつなぐ時間の架け橋だ。未来の世代に向けて、古代文明が何を遺したのか、その記憶は今も森の中で生き続けている。

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