週末に投資アイデアを考える (5/12~5/18)
<マーケットチェック>
株価
今週はこの絵がXに掲載されたところからスタートしました。
Roaring Kittyが載せたこのツイートは直接的に株に言及しているわけではなく、今後の相場に影響を与えるかは全く分かりません。
ただ、2021年に起こった事をのことを振り返ると、ファンダメンタルLong/shortのGrossレバレッジが低下、ショートを個別株から先物などマクロプロダクトへの移行させる動きが出ました。一方でヘッジファンドのネットレバレッジはそこまで低下しませんでした。
当時、株式ファンドのパフォーマンスはどうであったかと言うと、ヘッジファンドのショートポジションは大きくアンダーパフォームしましたが、指数全体には特に影響はありませんでした。
一方でファクター的には大きなリバーサルはみられませんでした。ただ、今回の場合にはアクティブファンドのファクターはモメンタムに寄っている状況と言われており、仮に、MEME株の動きが意識されるならば相場的にはリバーサル要因になると考えられます。
しばらく個別のショートは難しい展開になるかもしれません。
日本株の欧米株に対する出遅れが継続しています。やはり業績がコンセンサスを下振れているのが原因だと考えられます。米国ではテクノロジー株が調整している間、NYダウ構成銘柄のオールドエコノミー株がリードすることで、物色の好循環が起きていますが、日本の内需株はマチマチながら内需全体としては低迷しています。
金利
日銀の金融緩和の正常化観測で金利の先高観が強まるなか、企業による社債の大量発行に投資家の需要が追いつかない状態となっており、社債利回りが4月後半から上昇しています。
日銀は、5月からは社債の買い入れオペ(公開市場操作)の金額を750億円と、4月までの1000億円から減らす方針です。
対象は3年以下の社債ですが、3年債で日銀の支えがなくなれば、5年債などに影響が波及することも十分ありえるので意識する必要があります。
為替
日本国内でのトーンは為替介入はそれなりの効果があったというものが多いと思いますが、海外の新聞ではFT “The limits of yen intervention”やThe Economist “Let the yen fall”といった具合で、円安の原因となっている経済的な理由は日米金利差というシンプルな理由なので、為替介入は無駄だったというトーンの説明がされています。
<注目したニュース記事>
The Economist May4 “New Arrivals: Thousands are flying”
先進国はかつてないほどの移民ブームとなっている。
2023年の米国への移民数は330万人と、2010年代平均の約4倍となった。
カナダには190万人、英国には120万人、オーストラリアには74万人の移民が入った。
オーストラリアとカナダの移民純増はコロナ前の2倍以上である。英国の移民数は2019年の3.5倍である。
人々の大きな動きは、大きな経済的な効果を引き起こしている。
米国は移民急増によって、経済規模が今後10年に以前の予想より2%大きくなる。つまり、米国の強い経済成長率を労働者の増加で説明できる。
最近の移民はかつてよりも、低スキル者が多い。多くの政治家は、移民が労働力不足を緩和することで、インフレを抑制できると主張していたが、最近の研究では、むしろ逆の効果をもたらしているようだ。
移民は国に到着次第、様々なものを買う必要があるので、需要を増やす。
カナダ中銀の調査によると、移民の増加は短期的にインフレ圧力を高める。
移民増加はGDPを増やすが、1人当たりGDPの低下につながる。オーストラリアでは4半期連続、英国では7四半期連続で1人当たりGDPが増えなかった。
米国では2023年に240万人の不法移民があった。2023年のオーストラリアへの移民のうち、熟練労働者は2019年より20%減った。
農業やサービス産業など人手不足に悩む産業では、資格や経験を問わずに移民を雇っており、安い賃金や悪い労働条件をオファーしている。
移民増加は賃金上昇率を抑制し、安い外国人労働者の流入で、企業が生産性向上のための投資を抑制するとの懸念が出ている。
カナダとオーストラリアでは労働者当たりの資本投資が減っている。移民増加で道路は混雑し、公共のヘルスケアや病院の待ち時間は長くなる。
熟練外国人労働者の流入は財政をネットで改善させるが、非熟練外国人労働者の増加の財政への効果は評価が定まっていない。
英国では移民の3分の1は10年以内に帰国している。
<河北>
人口減少が経済に与える影響については、様々な議論がありますが、実証的にマクロ経済への影響を分析している分析は大切に読んだ方がいいと思います。
なぜならば、この議論は感覚的な捉えられ方をしているものが多いからです。
GDPへのインパクトだけで言うと、例えば道路に穴をあけて、それを埋めて舗装するという作業をくりかえるとGDPは上がります。
しかしながら、実際の経済効果としては道路が増えるではないので、生活が便利になるわけではありません。
人口減少のインパクトや移民の増加が経済に与える影響も同様で、マクロ統計的にプラスのインパクトが出るという話と、実際の経済効果は分けて考える必要があります。
人が1人増えると、その人が何も生み出さず犯罪を繰り返したとしても、その人の消費や、その人が生活するためにかかる社会的なコストは増加します。つまりGDPにはプラスに働くわけです。
ただ、合理的に考えると生産的な活動をせず、コストが掛かる事をする人たちで人口増を稼ぐことが効果的とは考えられません。
本文中に、「熟練外国人労働者の流入は財政をネットで改善させるが、非熟練外国人労働者の増加の財政への効果は評価が定まっていない」。という部分は重要です。
現在世界的に成長している産業は、人手を必要としません。熟練外国人労働者にとって魅力的な国であることは重要ですが、単に移民を増やして人口の反転を目指すと社会的なコストが増加し、トータルでは国にとってプラスにならない場合もある事も確認して行かなければなりません。
人口減少と移民の議論は、やや荒っぽい議論が多いので注意が必要です。
5/12 排出量取引、電力や鉄鋼に参加義務
<河北>
日本は多排出企業の取り組みが海外に比べて遅れていると指摘されてきました。
今回の政府主導の取り組みは、これが待ったなしの状態となっている事を受けたものです。これにより、企業の設備投資動向に大きな影響が出ると考えられます。
5/14 脱炭素電源、国力を左右
<河北>
外国ではIT大手などが送電ロスを避けるためにも、原子力など脱炭素電源の隣接地にデータセンターを建設する動きがあります。
先週も書きましたが、再生可能エネルギーの適地は北海道や九州、稼働している原発は西日本に偏っており、データセンターなど電力を大量消費する産業拠点を、こうした地域に戦略的に集積させるのは待ったなしです。
日本は原発再稼働の議論で、再生可能エネルギーへの投資が圧倒的に遅れており、早急に対応する事が必要です。
5/14 チャットGPT、2倍速く、5/15 グーグル、検索に生成AI 無償公開
<河北>
今週もAI関連のニュースがいろいろありました。
なかでもGPT-4oは大変な話題で、既に様々なレビューが出ています。これらをうまく使いこなしていく事で、業務の大幅な効率化が期待出来そうです。
グーグル検索も大きく変わり、使い勝手はかなり変わりそうです。
また、それに向けたインフラ整備は幅広い関連業界に影響を与えることが想定されています。
5/17 How is the US Doing? The Big Dichotomies
ちょうど、レイダリオがChat GPTに関してもコメントしているので載せておきます。
英文なのでChat GPTを使って要約しましたが、ちょっと分かりにくかったので少しだけ修正しました。
<河北>
AIに対するコメントに加えて移民についての考え方も書かれています。AIの活用や一部の超優秀な移民の存在は米国経済の成長に寄与していますが、その事が貧富の格差をさらに拡大し、社会不安となっている事をレイ・ダリオは繰り返し警告しています。
5/16 日本株、薄れる存在感
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