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市場動向の確認と経済ニュースの注目点(6/23~6/29)

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<マーケットチェック>


ファンダメンタルズ面では特に好材料はありませんでしたが、週初の3営業日で日経平均が一時1000円以上上昇、海外との比較でも弱含みが際立っていた日本株ですが、この四半期も大崩れせずに終了しました。ただ、来月初めにかけて英国(7/4)、フランス(6/30に第1回投票、7/7に決選投票)、日本の東京都知事選挙(7/7)と政治のイベントが続きます。週末に行われた米大統領候補の討論会でも現職のバイデンが冴えず、現時点ではトランプ優位が明確になりつつあります。政治イベントがマーケットに与える影響にも注意してきたいと思います。
 

株価


日本株に関しても個人的には押し目買い目線の人が多いとは思いますが、テクニカル的には教科書通りのデットクロスを形成しており、テクニカル的な売り主体をトリガーする可能性が十分にあると懸念していましたが、週初から大きく値上がりし少し意表を突かれました。需給的には配当再投資や四半期末リバランスは買い方向に作用しそうな一方で、ETF分配金売り等も意識され始めるため読みづらい状況だったのですが、上方向に動きました。
こういった局面では上下に振られた局面でそれをサポートする意見が大きくなりがちですが、強気派はそれほど増えていないように思います。四半期末なので7-9月にどう動くかといった視点が増えがちな時期なのですが、足もとの円安で輸出企業の業績は底堅く推移すると考えられるものの、円安によってダメージを受ける企業も多く、キャピタルフライトへの懸念もある事から、それほど楽観的には見ていないようです。
また、株主総会シーズンが終わりましたが、7月はじめにはその集計結果が一部出て来ます。今回はアクティビストからの株主提案も多かったのでその賛否の比率には注目したいと思います。
 

金利


金利は先週書いた通り7 月会合で決定される国債買入れの減額計画がどの様なものになるのかが気になりますが、トランプ当選にシナリオが強まってきたことで来たことで米国の金利に影響がないか気になります。現時点ではインフレ鎮静化への期待が高い訳ですが、トランプ大統領が圧勝し、議会も共和党が勝利した場合、法人税カットによって財政悪化リスクがあります。現在、米国の財政見通しはトランプ減税が終了するという前提で作られているため、それが崩れた場合、債務上昇懸念から金利が上昇する可能性を意識しておきたいと思います。
 

為替


日銀のスタンスは金融引き締め方向に動いており、日本は金利引上げ方向、米国は短期的には利下げが先延ばしになっていますが、いずれにしても米国は金利引き下げ方向という見方は変わっていません。
しかし、そのペースは日米ともに市場が当初予想したペースよりもスローという事だと思います。もし米国の金利がなかなか下がらない、あるいはトランプの意図に反して金利が上昇するという事になれば、円高に向かうチャンスを逸するリスクもあります。ここは決め打ちしにく状況だと思います。
 
 

<注目したニュース記事>

6/23日経 「円=安全通貨」は誤解だった

<要約>
円安の要因と影響について
現在の円安の要因は、日米金利差だけでなく、円の価値の再評価によるものです。日米金利差は円安の一因であるものの、円の過大評価が剥がれたことが主な要因。
日本の輸出力の低下や「デジタル赤字」の拡大が、円安を長期化させる要因。
エネルギー自給率や食料自給率の低さも円の下落に寄与しています。


今後の見通しと対策金利差が縮小しても、円高に戻ることは簡単ではない。金利差が3%に収まるのは2025年末頃と予想。
円安は輸出企業に有利に働くこともありますが、全体的には日本経済の強さを反映するものであり、適正な為替レートの議論は難しい。
外貨を稼ぐ力を回復するためには、民間企業が売れる製品やサービスを生み出すことが重要です。政府主導ではなく、民間の力が重視されている。


渡辺博史氏の見解円安が続く背景には、日本経済の構造変化や市場の認識が影響している。円の価値に対する再評価が進んでおり、円安が恒常化する可能性がある。
日本の経済体力に対する市場の疑問符は簡単には解消されない。

<河北コメント>
このコメントが出た辺りから円安が再加速している様に感じます。為替レートの水準感とは別の所で議論が進んでいるように感じます。

6/23日経 足並みそろわぬAI規制

<要約>
異なるAI規制の問題
:
アジアでは国ごとに異なるAI規制があり、企業にとっては不確実性が増大している。各国政府は自国の課題に応じたAI政策を検討しているため、地域共通の規定が策定されていない。
中国の先行:
中国は他国よりもAI規制に積極的で、業界向けの行政指針を出している。具体的にはアルゴリズムの勧告やディープフェイクに関する指針、さらには社会主義の価値を促進する必要性などが含まれる。
企業への影響:
各国の異なる規制が企業にとっての事業展開の障害となっており、特に15~20のアジア主要国が著しく異なる法律を制定し始めると大きな問題になるとされている。企業は各国で異なる規制を理解し、それに対応する必要がある。
EUの先行事例:
欧州連合(EU)は世界で初めてAI規制法を承認し、透明性の担保を求める包括的な法律を施行する予定。これに対し、アジアは地域全体での協議が進んでおらず、地雷原のような状況になりかねないと指摘されている。
日本や韓国の動向:
日本はこれまで自主規制にとどまっていたが、法的枠組みの議論を開始している。韓国は技術を導入した後に規制する前提で法案を検討しており、AIの国際競争力を高めるために新たな規制環境を整えようとしている。
企業の自主規制:
明確な法的枠組みがないため、一部の企業は自主規制に乗り出している。例えば、ベライゾンは「責任が伴う利用」を求めるAIツールを発表した。
共通規制の必要性:
アジア全体での協議が進まないと、AIに関する発言力が世界で低下する恐れがある。明確で一貫性のある規制が必要だ。

このように、アジア各国の異なるAI規制が企業にとって大きなリスクとなっており、共通規制の策定が求められている。

<河北コメント>
AIに関する規制の必要性に関しては様々な議論があるが、おそらく簡単には決着しない。規制の議論よりも技術の進歩が速く、規制が追い付かない展開が続くだろう。


6/24日経 「キャッシュレスで十分だ」 20年ぶり新紙幣

<要約>
東京都北区の国立印刷局で、新しい一万円札の製造工程が公開された。新紙幣は7月3日から20年ぶりに発行される予定で、偽造防止のホログラムを貼り付け、断裁した後、日銀本支店の金庫へ運ばれる。

前回の新札発行時と比べ、今回の発行に対する銀行の対応は比較的落ち着いている。偽造紙幣の発見件数が大幅に減少し、キャッシュレス決済の普及によって現金の需要が低下しているためである。

新紙幣への対応は、バス業界や飲食店にとって負担が大きい。日本バス協会の清水一郎会長は、運賃箱の更新費用を負担に感じている。また、飲食店でも発券機の更新に多額の費用がかかるため、キャッシュレス化を進める店が増えている。

新紙幣に対応するATMやレジは6月末までにほとんどが準備完了する見込みだが、20年前に比べて普及のペースは遅くなると予想されている。ATM改修などの対応コストは約1.6兆円かかるものの、名目GDPを0.27%押し上げる経済効果があるとされる。

キャッシュレス決済は今後さらに普及する見通しであり、新紙幣が本格的に流通するのは今回が最後になる可能性が高い。

<河北コメント>
今回の新紙幣導入は、キャッシュレス化をさらに進めるという意味で注目されます。既に私たちも現金を使う機会は減っています。子供の話を聞いていると現金のみの店は避けることもあるようです。機械の更新をするよりはキャッシュレスのみにしていく店も増えるかもしれません。


6/24日経BMW、国内全店に急速充電網

独BMWの日本法人ビー・エム・ダブリューは、年内を目途に国内の全約280店舗に急速充電器を設置する計画である。同社の急速充電器は、自宅で使われる充電器より単純換算で最大25倍速く充電できる。充電時間の短縮は電気自動車(EV)の普及を左右する。米国や欧州に遅れていた日本でも欧州メーカーが牽引役となり、充電器の高速化が広がっている。

充電器には普通充電器と急速充電器の2種類がある。一般的に出力が50キロワット以上を急速と呼ぶことが多く、150キロワット以上は超急速といわれる。

政府は2030年に充電器を30万口まで広げることを目指しているが、現状は約4万口にとどまる。そのうち1万口が急速充電器に当たる。

経済産業省によると、急速充電器の大半は出力50キロワット前後。24年3月末時点で出力90〜150キロワット未満は全体の18%程度で、出力150キロワットの超急速充電器に至っては全体の0.6%しかない。

政府も急速充電網の普及を政策で後押しする。4月からEVの購入補助金は急速充電を整備する企業の車両に対し手厚くする方針に変わった。

<河北コメント>
EVを利用していると、急速充電がいかに重要か分かります。自宅で充電している場合は特に問題ありませんが、泊りがけで出かける様な遠出をした時は急速充電のありがたさを感じます。
日本はハイブリッドが強いため、EVのインフラ整備が遅れていましたが、今後急速にインフラを整備していくことになるでしょう。


6/25日経 分断下でも進む脱炭素

<要約>
国際社会が気候変動の脅威に対して一丸となって取り組むことができるかについて疑問が膨らんでいる。欧米でも環境重視の結束が揺らいでおり、欧州議会選挙では右派勢力が伸び、環境会派が議席を減らした。米国では、温暖化対策に否定的なトランプ前大統領の再登場の可能性もささやかれている。

EUは引き続きカーボンニュートラルを目指すものの、政策の進め方に各国政府間で温度差があり、進行速度に影響が出ると指摘されている。ロシアのウクライナ侵略はエネルギー価格の高騰と供給危機を引き起こし、エネルギー安全保障の重要性が再認識された。

シェルのバロー副社長は、国際機関が前例のない国際協力を前提としているが、現実には存在しないため、ばらばらの世界を前提にシナリオを描く必要があると述べている。シェルの最新シナリオ「エネルギー・セキュリティー・シナリオ」では、エネルギー安保を重視する世界で低炭素技術が発展すると予測している。

最新シナリオは、国家ブロック間の分断と競争を前提に描かれており、エネルギー自給の確立に向けた技術革新競争が原動力となる。米国の陣営は水素やアンモニアの製造、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術を追求し、中国は電池や電気自動車(EV)、太陽光パネルなど脱炭素製品の市場支配を目指す。

エネルギー地政学の見据えた議論が必要であり、日本は欧州と米国の影響が混在する中、脱炭素が困難な挑戦の一つとされる。次期エネルギー基本計画では、高い野心を示す必要があるが、国家ブロック間の競争が広がる中で、安定供給の確保策を怠るわけにはいかない。

理想と現実の間で漂流しないためには、エネルギー地政学を見据えた冷静な議論が欠かせない。

<河北コメント>
この記事はとても重要だと思います。今年行われている各国の選挙は脱炭素に向けた動きが後退するという文脈で捉えられる事が多いが、国家ブロック間の競争が広がる中で、エネルギーを安定的に確保するために何が必要かという視点から、今後必要な投資を考えていく事も必要となる。


6/26日経ENEOS改革、見えぬ「社外取」の次

<要約>
ENEOSホールディングス(HD)は26日に定時株主総会を開き、3年連続で経営幹部がセクハラで辞任したことに対する株主からの批判が相次いだ。これに対し、社外取締役の比率を従来の4割から7割に増やす人事案が承認された。社外取締役の議長には外部の女性が据えられ、人権意識の立て直しを図る方針だが、管理職に占める女性比率は依然として低く、統治改革は道半ばである。

質疑応答では、「日本の一流企業で3人もセクハラで辞任するなんて聞いたことがない」「なぜ経験豊富な取締役が企業倫理を守れないのか」といった厳しい声が株主から上がり、質疑が打ち切られると一部の株主から不満の声も出た。

宮田知秀社長は経営トップによる不適切な行為を謝罪し、従業員との対話を重ねて多様な意見に耳を傾け、働きがいのある環境を再整備することを強調した。社外取締役を増やし、議長に川崎博子氏を起用するなど、透明性や客観性を高める新たな布陣を整えた。

ENEOSは女性管理職比率が依然として低く、特約店の監視の目が働きにくい環境でモラルの崩壊が進んでいるとの指摘もある。

収益力の向上も課題であり、自己資本利益率(ROE)を10%以上に高める目標を掲げているが、統治改革と同時に収益力を高める試練にも直面している。

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