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星のかけら

ながい一日の始まりだ。。。
いまは何時だろうか?
すっきりとしないまま朝をむかえたようだ
きょうはそもそも何曜日なのだろうか?
りかいできていないのは曜日だけだろうか。。。
ゆめをみているのだろうか?
うまい言葉がみつからない。

ボクには強烈な個性がある。
それは難病をかかえていることだ。
ボクはその厄介な奴のことを個性と思うことにした。
ながくつきあっていくためにはそのほうがお互いによいからだ。
ボクは一日中暗い世界で生きている。
それがボクが置かれている世界のすべてだ。

あるとき、ふと外の世界とつながりたくなったボクは友人に代筆をお願いして手紙を書くことにした。
タイトルは、「ソファのうえの冒険」

手紙のなかのボクは自由気ままに外の世界を旅することにした。
ハワイ、台湾、シンガポール、オーストラリア、アメリカ、フランス。。。
ボクは旅先でも臆することなく誰とでも仲良くなることが出来た。
現地でおいしい食べ物を食べ、歌い、ときにはそのまま野宿することもあった。

手紙をかきはじめてしばらくたったある日、友人がこんな相談をしてきた。
これまでの手紙のなかからランダムにひとつ選んで海に流してみないか?というアイデアだった。
きっと彼なりに外出ができないボクに気をつかってくれているのだろう。
ボクはあまり乗り気ではなかったが友人のそのアイデアにのることにした。
(友人を喜ばせたい気持ちがそうさせたらしい)

それから友人と手紙を海に流すスケジュールについて話し合いをした。
決行日はボクの誕生日とすることにした。
ボクが選んだ手紙を瓶につめ、コルクで蓋をして友人に海に流してもらう想定だ。
当初乗り気でなかったはずなのに、いつのまにかボクはワクワクしていた。

待ちに待った誕生日がきた。
仕事終わりの友人がボクの家にやってきたのは19時過ぎのことだった。
友人がボクに告げた。

「今日はサプライズがあるんだ。車に乗せて連れて行くから自分の手で手紙を海に流してみないか?」

友人の提案にボクは動揺していた。
ボクが外の世界に出るのは数年ぶりのことだったからだ。
友人はそのために全面的にバックアップすると言ってくれた。
ボクは勇気をだしてその提案を受け入れることにした。

そのまま友人が運転する車で海に着いた。
しばらくして海の近くにいったところでたくさんの人の気配がした。
そのなかから一人また一人とボクの名前を呼ぶ声がした。

そこにいたのはボクを慕ってくれる仲間たちだった。
すすり泣く声のほうを見ると友人が泣いているのがわかった。
そうか、キミはこのことを計画してくれていたんだな。
まったくキミってやつは。。。

ありがとうサム。
キミにはいつも助けられてばかりだな。

そのあと、みんなが見守る中ボクはそっと手紙の入った瓶を海に流した。
夜空に照らされた瓶はまるで星のかけらのようだった。。。

End

※この作品を強烈な個性をかかえた友におくる。



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