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【朗読】声

所要時間:約2分
人数:1人用

それは突然の出来事だった。
友人から勧められて何の気なしにはじめた配信アプリから突如キミの声が聞こえてきた。

気がつくと、ボクはお気に入りにキミの配信を登録していた。
ボクは自他ともに認める”声フェチ”だ。
男女問わず、好きな声を聴くと頭のなかがぼーっとしてきて夢見心地になってしまう特異体質なのだ。

そのなかでも特にキミの声は特別なものだった。
聞いた瞬間、全身に雷が落ちたような衝撃を受けたのだ。
キミの声が聞こえるとボクの思考は一切ストップしてしまい、何も考えられなくなってしまう。

転機がおとずれたのは、それから1か月後のことだった。
キミの配信枠でたまたまコメントしたところ、それがキミの笑いのツボにハマッたのだ。ずっと、笑いっぱなしのキミに他のリスナーさんたちも釣られて結果的にキミの枠内でおおいに盛り上がりをみせた。
ボクは思わず有頂天になってしまい、つづけてコメントを投下していった。

その後、ボクはハガキ職人と化し、キミの枠内でなんどもコメントを重ねていった。キミにもすっかり存在を認識してもらうことができ、今考えるとその頃がボクにとって幸せのピークだったのかもしれない。

お別れは突然におとずれた。
キミが配信を卒業すると宣言したのだ。
理由はいっさい明かされず、ただ一身上の都合ということだった。
いっかいのリスナーであるボクにはそれ以上なにも問うことはできず、キミはボクの前から姿を消したのだ。

その後、ボク自身が配信者となり、いまではそこそこの人気配信者をやらせてもらっている。ある程度、コアなリスナーさんが配信にきてくれるようになり、配信そのものが次第に楽しくなっていった。

あるとき、急にあがってもいいですか?ときいてきたリスナーさんがいた。
ボクはとまどいを隠し切れなかったが、その同様は隠したまま、余裕ぶって

「ああ、どうぞ」

とだけ言った。

驚いたのはその直後だった。

なんと、あがってきたのはキミだった。
なんどもきいてきたキミの声だ。
まちがうはずがないっ!!
動揺を隠しきれいボクはその後しどろもどろな配信をしてしまい、リスナーさんから恰好のいじりの的となってしまった。。。

その後、まさかのキミがボクの配信枠のヘビーリスナーとなっていったのは
神様のいたずらとしか思えない。
なにを気にいってくれたのだろうか。。。

今、となりをみるとそのキミが笑顔で料理を作ってくれている。
そう、キミは今ボクのパートナーになっているのだ。

みなさん、信じるか信じないかはあなた次第です。笑

End

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