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5分早起き、そして水やり

昔から朝が苦手で、太陽の光が苦手だった。

大人になった今も、相変わらず朝は弱いけれど、お日様のありがたみは、少し分かるようになった。
それは、年を重ねるごとに、うまく眠れなくなったせいかもしれない。
「朝起きたらすぐに窓を開けて、太陽の光を浴びましょう」と、どの眠りの本にも書いてある。眠りのための準備は、朝から始まっているのだ。

とはいえ朝は苦手のままなので、平日の朝はバタバタだ。
屋外で育てているボケの盆栽の水やりも、いつも夜に帰ってきてからしていた。

あるとき、夜に水をやり忘れて寝てしまい、翌朝慌てて振りかけたら、苔に水がさあっと染み込んで、きらきらきらきら、春の小川のようにきらめいた。
なんだか、祝福されたような気持ち。

隣のハナミズキもいつの間にか紅葉が進んで、緑だった実が、真っ赤に輝いている。
いつも夜に見ていたから、全然気がつかなかった。

夜は気持ちが沈みがちで、怒りやら悲しみやらを抱えながら、よろよろと帰る。
そんな状態で水やりをするより、少しだけ早起きして、朝の祝福を受けよう。

爆弾を抱えるようにやわらかなトートバッグとゆれる地下鉄
(2023.10現代歌人協会全国短歌大会佳作・梅内美華子選)



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