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ベトナムに見切りをつけて出ていく外国人たち

「東南アジアは経済成長がすごい」と思うだろう。実際に住んでていても、毎年家賃や物価がガンガン上がっているし、現地の人の給料も右肩上がりだし、街を行き交う人の平均年齢も若く、勢いを肌で感じる。その中でも、ベトナムは伸びしろの大きい国の一つだ。特にベトナムのホーチミンに至っては人口も1000万人近く、外国人も非常に多い都市だ。

ところが、意外にも最近ベトナムに見切りをつけて国を去っていく外国人のことをちらほら聞くようになった。FDI(Foreign Direct Investment)がベトナムには多いのだが、外国人投資家からすると、ベトナム国内での投資状況が芳しくなく、撤退するケースが増えてきている。

最近だと、首相が入れ替わったタイミングで前政権の汚職にメスを入れており、大手不動産デベロッパーや債権を発行している証券会社、証券会社に融資をしている銀行あたりの会長や取締役が汚職で逮捕されている。一時SCBという現地の銀行では取り付け騒ぎが起こったほどだ。こういった国内の情勢が悪くなったのと、ドルが強くなっていたのもあり、金利がものすごく上がった。一時、定期預金の金利がなんと10%に到達したほどである(100万円貯金したら1年後に10万円もらえる、という世界なのだ!)。消費者金融の業界も、そもそもの金利がめちゃくちゃ上がったことに加え、以前みたいな無理やりな債権回収に対する取り締まりが厳しくなったこともあり、どの会社も不良債権を多く抱えることになった。

こうしたことが2022年の後半以降に立て続けに起こって、投資環境が悪くなったのである。プライベートエクイティの会社でベトナム・ホーチミンで15年間勤めている南米出身の知人も、もう国を出ると言っていた。

他にも、外国人のビザの取得も厳しくなっていたり、物価が想像以上に上がっていたり、とネガティブな要素は多い。投資とは関係なく現地の企業に勤めている日本人含め外国人からすると、キャリア生存戦略的にベトナムだと今後が不安という感は否めない。

外国人だけでなく、ベトナム人もやはり、高い教育水準を求めて大学から海外、というケースは多い。そういう人材は母国に帰らずそのまま海外でチャレンジしている人も多いようだ。ベトナム人のパスポートは非常に不便なので(日本に来るにも相当一苦労)、そのまま他の国に帰化して新しいパスポートを入手するというのもよく聞く。オーストラリアに留学しに行ってそのままオーストラリアに帰化したという元ベトナム人を3人くらい見かけた。

このように新興国は、まだまだ経済成長の余地がある一方で、不安定さも伴うというのが非常に伝わってくる。いいところもたくさんあるが、成長しているからと言って、負の側面がないというわけではないので気をつけねばならない。


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