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『地獄一丁目3-1-5』 第1話(創作大賞2023漫画原作部門応募作品)

〈あらすじ〉

「自殺をするのは、最も重い罪」

石出和馬は自ら命を絶ち、地獄へ堕とされた。自ら命を絶った者は、鬼と成り、地獄で永遠の労働を強いられる。
閻魔からはパワハラを受け、同僚の鬼の少女からは見下される毎日。それでもなんとか地獄で、地獄の様な毎日を過ごしていた。
そんな地獄は最近、謎の大賑わい。閻魔も鬼も大慌て。

「いったい現世で何が起こってる?」

更に、状況を悪くする一人の見慣れない亡者が地獄に現れて……。


〈登場人物〉

石出和馬(30)鬼。
大滝ゆい(10)石出の少し先輩の鬼。
藤井ルビー(28)天界の反乱者。
ボフベア(10)ゆいの親友。ぬいぐるみ。
閻魔(不詳)地獄の王。
神(不詳)天界の王。
天使長(42)神の直属の部下。ルビーの上司。
天使A
天使B
天使C
亡者A
亡者B
亡者C



○  石出家・マンションの屋上(夜)
     
     石出和馬(30)が、
     マンションの屋上のヘリに立ち、
     スマホのカメラロールを開き、
     付き合っていた彼女との
     写真を眺める。
     スクロールを何度もする石出。
     大量の彼女の写真が。
     笑っている彼女の写真を
     眺める目からは、涙が落ちる。

○  自室のリビング(回想・3日前)
     
     床に座り、
     テレビを見てる石出に、
     後ろから彼女が声をかける。
彼女「子供ができたの」
     慌てて振り向く石出。
     表情は嬉しそうだ。
石出「え?ホント!?」
     彼女は俯きながら、
     申し訳無さそうに言う。
彼女「ごめん…」
      嬉しさのあまり、
      彼女の声がよく聞こえない。
石出「マジ!?いやぁー。俺も遂にパパかぁー」
      彼女、再度ハッキリと。
彼女「ホントごめん」
石出「ん?」
      石出の事を真っ直ぐ見つめる。
      目が合っている筈だが、
      石出の事を見ていない目。
彼女「あなたの子供じゃないんだよね」
石出「え?え?分かんない…え?ど、どういう…」
彼女「ごめん。分かって欲しいから、もう一回言うね?」
      石出、慌てて立ち上がり。
      右往左往し、落ち着かない様子。
石出「は?は!?いやいやいや…浮気したって事!?」
      冷静な表情の彼女。
      まるで他人を見る様な目で。
彼女「ううん。したんじゃなくて、“してたの。”だから別れて。(綺麗な土下座をし)お願いします」
      どういう表情をしたらいいか
      分からない石出。
      冷や汗を垂らし、
      引き攣った笑顔を浮かべ。
石出「いや…結婚は?約束してたじゃん!」
      彼女、土下座をしながら、
      冷たく突き離す様に。
彼女「すいません。結婚はできせん」
石出「なんで!?な…は!?(震える声をどうにか戻そうと、咳払いを繰り返す)いやいや…なんで!?なんで浮気なんて…」
      土下座を止め、
      正座する膝に両手を置き、
      一呼吸をし、真っ直ぐ石出の目を見て。
彼女「シンプルな理由です。他に好きな人が出来て、あなたの事が好きじゃないと分かったから。昔は好きだったと思う。でもきっとそれは、結婚するほどでもないし、子供を作るほどでもなかったって分かったの。ライクかラブかなら、確実にラブなんだよ?でも、本気のラブではなかったんだと思う。ワガママでごめんなさい。でも、無理してあなたといるより、家庭を築きたいと思える人と、その人の子供と、将来を歩みたいの」
      ハッキリと言われ、
      呆気にとられる石出。
      続け様に彼女が言う。
彼女「子供は、作ろうと思って作りました。作れば、すんなり別れてくれると思って。分かってくれると思って。だからもう一度ハッキリ言うね?」
      彼女の無表情の顔。
      目からも、声を発してる口からも、
      石出への愛なんて何も無く。
彼女「他に好きな人が出来ました。その人と浮気してました。子供を作れば別れてくれると思って、子供を作りました。妊娠してる事が最近分かったので、お願いします。別れて下さい」
      涙すら出ない石出。
      笑って誤魔化すしかない石出。
石出「…。ハハハッ。マジか…。ハハハッ…」

○  石出家・マンションの屋上(回想戻り)

      写真を眺めながらポツリと。
石出「ふざけんなよ…。何の為に頑張ってたんだよ…。俺」

○  職場の飲食店(回想)

      上司に怒られる石出。
      残業をする石出。
      サボるアルバイトにそれとなく注意し、
      陰口を言われる石出。
      パートの主婦連中に、
      ハブにされる石出。

○  石出家・マンションの全景(回想・夜)

      疲れ果ててトボトボ歩く石出。
      彼女が待つマンションの一室を
      外から眺め、明かりが点いてるのを見て
      ホッとする石出。
      早く彼女の元へと、駆け出す石出。

○  石出家、マンションの屋上(回想戻り)

石出「何でまだ俺は好きなんだよ…。馬鹿じゃんかよ…」
      マンションの屋上から、
      飛び降り自殺をする石出。
      地面に落ちた音が、鈍く轟く。
T 一年後。

○  地獄
     
      赤みがかった
      おどろおどろしい場所。
      人間の体内の構造と似ている。
      数多くの亡者達を一時的に
      収容している門の前にある
      木でできた丸テーブルに、
      肘をつき、石出に話しかける少女。
大滝ゆい(10)「なぁ石出?どう思う?」
      石出、背を向けながら。
      鬱陶しい様だ。
石出「何が?」
ゆい「ゆいね、働きたくないんだぁー。どう思う?」
石出「…クソだなって思う」
      ゆい、立ち上がり、
      石出の腰を蹴る。
      門に顔をぶつける。
      亡者達も驚いてる。
ゆい「先輩なんですけどぉー!偉そうなんですけどぉー!」
      石出、顔と腰を摩りながら。
石出「いつつつ…何すんだよクソガキ!」
      ゆいの膝の上に、
      ゆいが大切にしている
      生きて動く熊のぬいぐるみ、
      ボフベアが乗ってくる。
      それを優しい目で愛でる。
ゆい「ボフベアだけだね。昔からゆいの事分かってくれるのは」
ボフベア「ボフ」
      その光景を馬鹿馬鹿しい
      という表情で見る石出。
石出「…。どうでもいいからさ、仕事してくれよ。ただでさえ最近はなんか忙しいんだからさ」
ゆい「知らなーい。石出1人で頑張ってる所が見たいなー」
石出「はぁー。俺は、もう無駄に頑張らないって決めたの!」
      ゆい、鼻で笑いながら。
ゆい「知らねーよオッサン!」
石出「コラ!オッサンとか言うな!どんな育てられ方したら、そんな言葉遣いになるんだ。まったく」
      ゆい、石出を真っ直ぐ見ながら、
      なんだか思い詰めた表情で。
ゆい「…。教えられてねーし…。そんな事」
      2人が話している最中も、
      次から次へと亡者が地獄へと
      堕ちてくる。
      人一人分程の管を通って
      堕ちてくる。まるで大腸の様。

*    *    *    *
     
      嫌々ながら、
      結局ゆいも石出と共に働く。
ゆい「あー!てか多過ぎだろ最近!なんか災害でもあったか?」
石出「…ちょっと異常だな」
      すると、堕ちて来たばかりの
      亡者が一人、二人の元に
      焦った表情で駆けて来る。
亡者「あの…ここは…どこですか…?」
      ゆい、イライラしながら。
ゆい「どこだと思うよ?あ?」
石出「あっ。ここは地獄です」

タイトル『YOUは何しに地獄に?』

*    *    *    *
     
      石出とゆいが、
      亡者を一時的に閉じ込めておく
      牢屋の扉を、閉じる。
      ゆい、石出の頭を指差し。
ゆい「あんたさ、ソレ」
石出「ん?」
ゆい「ツノ」
石出「え!?またデカくなってる?」
ゆい「もう立派な鬼じゃーん」
ボフベア「ボフ」
石出「はぁー。嫌だなー」
ゆい「自殺したあんたが悪い」

*     *    *     *
     
      生きてた頃を思い出す石出。
      楽しかった彼女との思い出と、
      最後の事を、交互に思い出す。

*    *    *    *
     
      少しバツが悪そうに、
      ボソッと呟く石出。

石出「…。お前が言うな」
ゆい「……」

*    *    *    *

      生きてた頃を思い出すゆい。
      楽しかった思い出なんて無い。
      ずっと泣いていたみたいだ。
      強くボフベアを抱き締めてる。
      傷だらけの体の自分ごと
      抱き締める様に。

*    *    *    *

ゆい「…ふんっ。オッサンに何が分かるんだよってね。ねー?ボフベア」
      うるうるした真っ黒な目で、
      ゆいを見つめ。
ボフベア「ボフ!」
      少しピリついた空気が漂う。
      するとそこへ、
      人の頭蓋骨が沢山付いた
      大きな枝で、
      石出をプチっと叩き潰す、
      巨大な閻魔が。
     10mはありそうな身長だ。
      大きな枝に付いた頭蓋骨が、
      ジャラジャラと鳴る。
閻魔「てめーらがやってるのを、無駄口っつうんだよ」
      こんな事には
      慣れっこな様子のゆい。
      棒読みで、見向きもせずに。
ゆい「……。あっ。閻魔様だー」
      閻魔、辺りを見渡し、
      亡者の数を見る。
閻魔「おいおい。またか?なんだこの亡者の量は?俺を過労死させる気か?」
      石出、飛散した体が
      ちょっとずつ集まっていき、
      飛散した体の集合体の中心で、
      石出の口だけがパクパク動いている。
石出「いや、知りませんよ。なんか現世であったんじゃないっすか?」
      ゆい、石出の様子を見て。
ゆい「エグいな」
      ゆい、続け様に、
      閻魔に対して堂々とした態度で。
ゆい「てか過労死すんのはコッチだコラ!」
      閻魔、ゆいの舐めた態度に怒り、
      戻りつつある石出の体に、
      追い討ちをかける様に、
      再び大きな枝で、プチっと石出を潰す。
閻魔「誰に言ってんだクソ餓鬼!そもそもてめーら既に死んでんだろーが!」
ゆい「それを言うならてめーが言い出したことだろ!てめーも死んでるだろ!」
閻魔「俺に死なんて無ぇ!てめーら人間と一緒にすんな!超越者、閻魔だぞ俺は!」
      ゆい、こめかみに血管を浮き出させ。
ゆい「…。なら過労死しねぇーじゃねぇーか!」
閻魔「屁理屈ばっか言ってんじゃねぇぞ!」
石出、ボソッと。
石出「何で俺だけ…」

*    *    *    *
     
      閻魔、亡者達が収容されている
      門の前に顔を近付け。
閻魔「おい。そこのお前。てめー何故死んだ?」
      亡者、怯えながら。
亡者A「あ、あの…。私は、病気で」
      閻魔、他の亡者達を見る。
      他の亡者達も喋り出す。
亡者B「私もです」
亡者C「私も…。みんな流行病で」
      その他の亡者達も揃って。
亡者達「そうそう」
      閻魔、不思議そうな表情を浮かべ。
閻魔「流行病?何だそれ?そんなの聞いてねぇぞ」
石出「どういう事ですか?」
      ゆい、膝に乗せたボフベアの
      顔周りを、モフモフしながら。
ゆい「人が大量に死ぬ時ってのは、天界と地獄の上の奴らで話し合って決めてんだよ。人口調整ってやつだよ。そこの木偶の棒が現世の人が大量に死ぬような流行病を知らねぇってのは、異常な事が起きてんだよ」
      閻魔、石出に大きな枝を
      叩き込もうとするも、寸止めし。
閻魔「誰が木偶の棒だ。でもそのクソ餓鬼の言う通りだ。(呟く様に)…現世で何が起きてる?何故天界から知らせが無い?天界にも大量の亡者が送り込まれてる筈だが…」
      石出、頭の上で寸止めされた
      大きな枝をそっとのけて、
      閻魔から遠ざかる石出。
      するとそこへまた、
      亡者が一人堕ちてくる。
      運悪く石出の上に堕ちて来る亡者。
      その一連を見てたゆい。
ゆい「ハハハッ!どんだけ運が無いんだよ!…って…え?なぁ閻魔…」
      閻魔、振り向いて。
閻魔「クソ餓鬼…てめーの口を縫ってやろう…か…あ?」
      堕ちて来た亡者は、
      他の亡者達とは異なり、
      真っ白な見た目の女性で、
      背中には、焦げて小さくなった翼が。
      その亡者が閻魔を見つけ、
      慌ただしく駆け寄る。
藤井ルビー(28)「あなた!閻魔様ですね!」
閻魔「確かにそうだが」
      ゆい、閻魔の顔を見る。
      不思議そうな表情を浮かべる。
      石出、また飛散した体の中心で
      口だけがパクパク動いている。
石出「何で俺だけ…。ていうか、初めて見る亡者だ。まるで…」
      ゆい、ルビーを見ながら。
ゆい「天使みたいじゃんね」
      閻魔、ニヤリと笑い。
閻魔「みたいじゃねぇ。天使だ。堕天なんて滅多に見れないぞお前ら。数千年ぶりだ。…ハハハッ!女!よっぽどの事をしたのか?」
      ルビー、閻魔に対して、
      真剣な眼差しで。
ルビー「現世が…大変な事に…。お願いです。どうか助けて下さい」
      閻魔、ルビーを見つめ。
閻魔「話を聞こうじゃねーか」

*    *    *    *
     
      木でできた丸テーブルに、
      ルビー、石出が座り、
      閻魔は仁王立ち。
      ゆいは、亡者の檻の前で腕を組み、
      話を聞いている。
ルビー「今から、半年程前になります」

○ 天界・神の部屋(回想・半年前)

M ルビー「天界で、神様が唐突に仰ったのです」
      神、大きな椅子にふんぞり返り、
      鼻の穴に小指を突き刺し。
      神の両サイドには、美人な天使。
神「なんかさ、人口増え過ぎじゃね?ちょっとキモくね?全然戦争もしなくなっちゃってさ。あれなの?馬鹿なの?何増え続けてんの?ガイアも怒っちゃうよ?」
天使長「おっしゃる通りで」
      神、鼻から小指を抜き、
      指先に着いた鼻糞を、
      左隣の天使の裾で、拭きながら。
神「あれよ?増え続けてんのは現世だけじゃなくてよ?なんか天界もさ、手狭になってきてない?これ以上増えちゃったらさ、いつかあれよ?僕達住めなくなっちゃうかもよ?」
天使長「…おっしゃるとお」
      神、話を遮って。
神「飽きた飽きた。その返し飽きたわー。真面目が過ぎるよって。真面目が過ぎるよ何処までもってか?ハハハッ」
      天使達、愛想笑い。
      神、続け様に、爪をいじりながら。
神「現世の人口調整はしなきゃじゃん?神としてさ。でも、それすると、天界が手狭になっちゃうじゃん?もうさ、全員地獄行きでよくね?」
      天使長、慌てて。
天使長「神様、流石にそれは地獄の閻魔様が…」
      神、あくびをしながら。
神「ん?あー。そんな奴いたね。顔も思い出せねーし、いんじゃね?別に。僕の方が上っしょ?位置的にもさ。雲の上だし。ね?まさしくってやつだよね?マジウケんね」
      天使、神に聞く。
天使長「…。神様がお望みとあらば。では、我々はどうすればよろしいですか?」
      神、少し考えて。
神「とりあえず現世で流行病撒き散らしてきなよ。あのー、何だっけ?ほらあのー…スペイン風邪とか、ペストの時みたいに。あれ1番簡単に人口調整できっしょ?んで、それで死んだ奴らはとりあえず地獄行きで。よろね」

○ 天界・神の庭園(同)

      ルビー、天使長に詰め寄る。
ルビー「天使長!こんな事が許されるんですか?」
天使長「神様がそうしろと命ぜられたのだ。我々天使は、言われた事をやるまで」
ルビー「おかしい。こんな事っておかしい。じゃあ何で私達は、何不自由無く、天界に住めるんですか?私達が今から振り撒く、流行病で亡くなる人達は、皆地獄行きなのに。その中には、数多くの善人もいるでしょ?こんなの差別ですよ!」
天使長「神が皆地獄行きとおっしゃってるのだから、そういうものだと、納得すれば良いじゃないか。分かったらその形だけの正義感は、胸に閉まっておきなさい」
      天使長、ルビーの元を去る。
      ルビー、何も反論出来ずに、下を向く。

○ 天界・神の食堂(1ヶ月前)

      天使達が、食堂で話している。
天使A「もう現世行った?」
天使B「え?…うん」
天使A「そっか。正直…見てらんないよな」
天使C「しかもさ、まだ日の浅い天使達なんて、まだ現世に家族や友達もいる訳だろ?泣いてたぜ。なんだかな…」
      ルビー、それを近くで聞いている。
ルビー「……」

○ 天界・ルビーの部屋(1日前)

      自室で天井を見つめる。
      自分の現世での思い出を思い出す。
      両親、親友、恋人。
      大切な人達が、病に侵された挙句、
      地獄で苦しむと思うと、
      居ても立っても居られなくなる。

○ 天界・神の部屋(次の日・朝)

      ルビー、ずかずかと神の部屋に入る。
ルビー「神様!もう止めましょう!今からでも遅く…」
      ルビー、神に翼を焼かれる。
ルビー「…っ!?きゃあーーーー!!」
神「君…誰?とりあえず天使の翼無くなったって事で、君、堕天ね?え?待って待って!チョー久しぶりに言ったんだけど!」
      ルビー、天界から真っ逆さまに堕ちる。
      ルビー、堕ちながら考える。
M ルビー「止めなきゃ!守らなきゃ!大切な人達を!」

○ 地獄(現在)

ルビー「…という事がありまして」
      石出、呆気に取られる。
石出「…適当だなー神ってのは…」
ルビー「はい。もう私には、どうすればいいか…ですから閻魔様の力で、どうに…」
      閻魔、激怒。
閻魔「んだあの下膨れ野郎ーーーー!!!!」
      閻魔の怒声で、亡者達、倒れる。
      ルビー、石出、卒倒する。
      ゆい、ボフベアが耳を塞いでくれてる。
      閻魔、小さな声でブツブツと何かを
      喋っている。
      閻魔、鼻息荒く。
閻魔「おい!てめーら準備しろ!」
石出「はい?何の準備ですか?」
閻魔「現世に行く準備だろうが!」
石出、ゆい「は!?」
ルビー「現世に行けるんですね!」
閻魔「あぁー。但し、“お前達だけ”な」
ゆい「は?アンタは?」
閻魔「俺は地獄の王だぞ?地獄からは出れねーんだよ。神の野郎もそうだ。だから亡者の部下達に行かせんだろうが。天界なら天使。地獄ならてめーら」
      閻魔、膨大な何かを石出に渡し、
      石出、重みで潰れる。
閻魔「鬼だ」
石出「ぐえっ」
ゆい「何これ?」
閻魔「まぁあれだ。地獄の便利アイテムってやつだ。現世で言う、銃やナイフみてーなもんだ」
      ゆい、ボフベア、目を輝かせる。
ゆい「うひょー!」
ボフベア「ボフ!ボフ!」
      閻魔、3人と1匹に向かって。
閻魔「てめーら!神の野郎に、一泡吹かせてやれ!」
ルビー「私は、大切な人達を守る為」
      石出、地獄アイテムを手に取り。
石出「じゃあ俺は…元カノの子供を見るついでに…」
ゆい「未練がましいっ!キャー!」
石出「うるせーな!」
ルビー「要するに、大切な人の、大切な人を守る為ですね!立派です!」
石出「……。そっす」
ゆい「あっ。嘘ついた」
      石出、ルビーが、ゆいを見る。
ゆい「……。えっ?何?ゆいも言わなきゃダメな感じ?チッ。じゃあこの地獄のアイテムで、日頃のストレスをぶつける為に」
石出「おい」
ルビー「…多分立派です!」
石出「おい!」
      ゆい、ルビーを指差し。
ゆい「コイツ、真面目過ぎて面白れー!」
閻魔「てめーらコッチに来い!」
      亡者が堕ちてくる管の下に3人を
      誘導する。
ゆい「そういや、どうやって現世に行くの?」
石出「あっ。ほんとだな。どうやっ…」
      閻魔、強引に管を3人に
      向けて引っ張り、呟く。
閻魔「体が爆散しねぇーように、気ぃつけろ」
      3人、管に物凄い勢いで、
      吸い込まれる。
      石出の断末魔。
石出「今何てーーーー!?!?」

○ 東京(夕方)

      ボフベア、石出を往復ビンタ。
      石出、目を開ける。
      空が広がってる。
石出「空だ…」
      ゆい、寝ている石出に言う。
ゆい「そんな事言ってる場合じゃ無さそうだけど」
      石出、慌てて起き上がる。
      目の前には、大きなバッタの大群。
      蝗害の様。
石出「んだよアレ?」
ルビー「アレは、可視化された病です。アレが人体の穴という穴から侵入するんです」
ゆい「んじゃとっとと終わらせて、閻魔に休暇でもせびるか!」
石出「バッタキモくね?」


〈第一話 完〉


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