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ま!(そすーまん!)の記事

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#読書感想文

『熊の場所』を知っていますか? —逃げ出した私と向き合う私

※この記事は2022年4月頃、個人ブログに書いた文章に一部加筆・修正を加えて再掲したものです。 熊の場所とは 私の好きな作家のひとりに舞城王太郎がいます。  今回紹介する「熊の場所」は氏の書かれた小説『熊の場所』に登場する概念で、私はあるタイミングでこの小説を読んでいたく感動したので、ちょっと読んでいってください。 あらすじ 「熊の場所」の主人公は小学生の宏之。舞台は福井県西暁町。  宏之はある日クラスメイトのまー君がランドセルの中にねこのしっぽを隠しているのを発見する。

7月に摂取したものをまとめておく場所

 摂取した創作物って見返す機会があったほうがいいよね~って思ったのでまとめておきます。  ジャンプ本誌とジャンプ+はほぼ毎日摂取しているので、当月に連載が始まったものと、なんか書きたいものをピックアップします。  来月はヒロアカ最終回が控えているので書くことがあればヒロアカも書くことになるでしょう。 【漫画】逃げろ松本  7月にジャンプ+で連載が開始したミステリ?サスペンス?漫画。  ロードレースを引退した松本ヨシノブが殺人事件の罪を着せられて、逃亡するという第一話でど

冬期限定ボンボンショコラ

 ずいぶん前に読んだのですが、感想を書いたらマジで小市民シリーズが終わってしまうので二の足を踏んでいました。  でも、書かない選択肢はないですから書きます。  小市民シリーズは春、夏、秋、巴里と来て最終章の冬までやってきました。  『冬期限定ボンボンショコラ』は最終章と銘打たれているとおり、おそらく最終巻となるでしょう。  あるいは、巴里の続きで短編が出る可能性もありますが、とりあえず本筋はこれにておしまい、かな。  私は知り合いにおすすめされて2ヶ月足らずで駆け抜

完全教祖マニュアル

 みなさん、仕事は楽しいですか?  私はできれば働くのは最低限にして好きなことだけして生きていたいです。  同じような人がいたら、宗教を創始することをおすすめします。  つまり、あなたは会社員から教祖にクラスチェンジするのです。  でも、急に教祖って言われても……  そんなとき、『完全教祖マニュアル』が手元にあれば大丈夫です!  今回は『完全教祖マニュアル』の魅力をお伝えします!  ド嘘です。すみません。  こんな本を読んでも教祖にはなれません。  本気で信

巴里マカロンの謎

 また読みました、小市民シリーズ。  夏期、秋期は連作短編・長編だったのですが巴里マカロンは番外編らしくそれぞれが独立した短編が4つ収録されています。  私に小市民シリーズをおすすめしてくれた人のお気に入りも巴里マカロンだそうで、やや期待値高めで読みました。  収録されているのは以下の4編。 ・巴里マカロンの謎 ・紐育チーズケーキの謎 ・伯林あげぱんの謎 ・花府シュークリームの謎  パリ、ニューヨーク、ベルリンは読めたのですが花府は知らんなあと思っていたら花府=フィ

秋期限定栗きんとん事件 感想

 また読みました、小市民シリーズ。  上下巻あるのでゆっくり読もうと思っていたんですが、上巻は3日で、下巻は6時間くらいで読み終わってしまいました。  長編なので続きが気になってしょうがない。  上巻を読み終わって、仕事の休み時間に下巻を買いに自転車に乗りました。それくらい面白い。  夏期限定で袂を分かった常悟朗と小佐内さんはそれぞれ別の人と付き合うようになり、これまでは常悟朗の一人称で進んでいた物語はサブ主人公の瓜野くんの視点も交えながら進みます。  この瓜野くん

『夏期限定トロピカルパフェ事件』

 読みました。  このところ読書スピードが加速しています。  小市民シリーズはとても読みやすく、ライトな読み口なのにビターな読み味でとても満足感があります。  それでいて6冊もシリーズが出ていて、最近完結したので安心して読み進められますね。  冊数が多かったり、途中でシリーズが断絶していたりしないのは利点です。  文庫に収録されているのは全部で6編の掌編や短編で、そのうち4編は書き下ろしです。贅沢!  春期限定の時点で刑事事件に首をつっこむほど危ういことをしていた

『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信

 また本を読みました。  先月あたりから普段より読書欲3割増しです。  知り合いに紹介してもらった『春期限定いちごタルト事件』。  『氷菓』や『インシテミル』などで知られている米澤穂信先生の青春ミステリです。  10年以上前にも知り合いがおすすめしていたようなきがするのですが、何の因果かこのタイミングとなりました。  同じ青春ミステリとしてどうしても比べてしまうのは『氷菓』から始まる古典部シリーズ。  古典部シリーズも記憶が正しければほとんで読んでいるはずで、アニメも

競馬をめぐる物語って良いもんですね…

 優駿を読み終えました。  上巻については以前書いたとおり。  この記事で「人間~~!!」と唸っているのですが、下巻も「人間~~!!」でした。  凄まじい。  生が迸っている。  ウマのクロが生まれ、オラシオン号となり、ダービーを制覇するまでの3年間。  たった3年で人は出会い、変わり、死ぬ。  それだけなのだけど人間にはドラマがありました。  上巻はオラシオンを取り巻く人々の起~承までが描かれ、上手く惹きこまれました。  下巻は私たちの見ていた彼ら彼女らが向かうべき

『正欲』に気付かなかったマジョリティ

 朝井リョウさんの『正欲』を読みました。  以前から書店で見かけることはありました。  これまではあまり気に留めていなかったのですが、映画が公開されたとのことで購入しました。  はじめの期待はそれほどだったのですが、読んでよかったと思いました。 正欲とは 作品の中でメインテーマとなっているのは特殊性癖です。  人によっては異常性癖という人もいるでしょうね。  要はあまり一般的ではないフェティシズムのことです。  私にもあまり大っぴらにはできない癖があります。  

相沢沙呼 / invert 城塚翡翠倒叙集 / 講談社文庫(読書感想文)

 『ivert 城塚翡翠倒叙集』を読みました。  前作のmediumは職場の知り合いにおすすめしてもらって、ついでに貸してもらって読みました。  mediumの最後を読み終わって(この展開ならもう続きは無理だろうな)と思っていたら続編が出ているではないですか。  続きが気になってすぐに本屋に寄りました。  本書は「雲上の晴れ間」「泡沫の審判」「信用ならない目撃者」の三編から成る倒叙集です。  雲上と泡沫はオーソドックスな倒叙ミステリで、城塚翡翠を探偵役にして倒叙をやるな

小説『優駿(上)』の感想を書き損ねた

 noteのネタが枯れ始めるとライフワークの読書を題材にしがちなのですが、その中でも読書感想文は比較的書きやすいと思っています。  自分の頭の中にあることをお出しすれば足りるので、細かい裏付けとか確認しなくてもある程度ババッと書けてお手軽です。  いつか出そうと思っていた感想のうちのひとつに『優駿(上)』がありました。  下巻を読んでから…と思っていたフシもあり、なんとなく出せずにいたのですが、まさかのタイミングで事故が起きてしまいました。  2024年4月10日にJ

「優しい人」と言うのなら

 「あたまのいいひと」について、前回の3X+1の日に記事を書いた。  そのなかで「やさしさってのは振る舞いだ」という旨の一文があるんだけど、これは実は引用で、公開してから引用だって示したほうがよかったんじゃなかったかなって気が付いたんだけど、それよりも別の記事にしてしっかり書いちゃった方がいいなってことも思った。  これは舞城王太郎の『パッキャラ魔道』に出てくる一文。  『パッキャラ魔道』は私の好きな短編で、前回の記事タイトルにも入れてわかる人にはわかるようにしたんだけど、

『ほにゃららサラダ』 / 舞城王太郎

 みなさんは舞城王太郎という名前に聞き覚えはあるでしょうか?  舞城王太郎は私の特に好きな小説家の一人です。ぜひ紹介させていただきたい。  まず、舞城王太郎という作家がどんな人物なのか。  はっきり言うとさっぱりわかりません。いえ、これには語弊しかないのですが……。  舞城王太郎はメディアへの露出をしておらず、いわゆる覆面作家として活動をしているためはっきりとした情報が全くないというのが正しいのです。  2001年に『煙か土か食い物 Smoke,Soil or Sacri