競馬をめぐる物語って良いもんですね…
優駿を読み終えました。
上巻については以前書いたとおり。
この記事で「人間~~!!」と唸っているのですが、下巻も「人間~~!!」でした。
凄まじい。
生が迸っている。
ウマのクロが生まれ、オラシオン号となり、ダービーを制覇するまでの3年間。
たった3年で人は出会い、変わり、死ぬ。
それだけなのだけど人間にはドラマがありました。
上巻はオラシオンを取り巻く人々の起~承までが描かれ、上手く惹きこまれました。
下巻は私たちの見ていた彼ら彼女らが向かうべき方向を定め、日本ダービーに向かうにつれて人生の歩みを進めます。
正直なところ、あまりにも人間臭いため好きになれないところも多い登場人物たちだったのですが、後半にもなるとそれぞれのバックボーンを知り、行動の理由が見えてくると途端に愛おしく思えてきて、最後の方はページをめくる手がもう、上がり3ハロン31秒。
オラシオンをめぐって人生が変わった人々のこれからがますます明るいものになっていれば良いと願うばかりです。
『優駿』は北海道と大阪の二つをメインに描かれていました。
オラシオンの生まれた北海道の牧場は、都会の埃っぽい俗世と対照的に風が澄んでいて、広くて涼しい。
実際に草原に立っているわけでもないのに、文字だけで空の広さが、青草の匂いが、馬の駆ける足音が頭の中でありありと表現されるようでした。
牧場の光景は読後しばらく経った今でも何の苦労もなく思い出せるほど印象的。
個人的に好きだったのは多田の馬券。
オラシオン以外のすべての馬券を買うことで、疫病神としての役割を果たすのが粋で、すこし皮肉めいていて思わず笑ってしまいました。
競馬に関心がない人も、きっと熱くなれるし、ウマのことが好きになれる。
そんな一冊でした。
好きだなあ、ウマ。
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