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「オンライン授業」とか言ってるが、それでも『学校で学べる』には、結局敵わない、という話。

はじめに。この記事は現在緊急事態宣言に伴う臨時休校を、全面的に反対、否定するものではありません。実際、臨時休校によって、生徒や教員の感染リスクが大幅に減少したと実感しています。また各自治体によって程度の差はありますが、新型コロナウイルスの感染者数が、以前に比べて頭打ち、あるいは減少しているという報告があることも事実です。

ただ、このままでは学校で授業をすることが困難な状況が続き、学校教育が崩壊し、子どもの学力が低迷すると予想したので、今回記事を書きました。

学校で授業しないと、意味ないんじゃないの?

ご存じの通り、大半の公立学校は、2020年2月28日(金)から現在まで、臨時休校となってしまいました(一部の地域や分散登校を除く)。児童生徒たちは、従来の春休みをまたぎ、もう2カ月以上まともに学校で授業を受けていません。

また、その状況を打開するために、オンライン授業や学校向けウェブシステムによる学習指導、学校や家庭におけるさらなるICT機器の整備や充実、といった対策が、一気に話題になりました。

しかし、結論から言います。
んなことやっても、たいして意味ねーよ……。

確かに、一部の学校の児童生徒に一定の効果はあると思います。ただ、全体を総括して見れば、さほど大きな効果は得られないだろうと思ってしまいます。

古臭い考えかもしれませんが、「学校に来る」ことに意味があると私は思います。その主な理由をいくつか挙げました。

理由その1. 学校に来ることでモチベーションが上がる

最近、在宅勤務などのテレワークが導入された会社も多いかと思いますが、実際やってみると、大人でさえ自律し仕事に集中することが難しい。ましてや子どもが、テレビやゲーム、お菓子など、誘惑の多い家の中でまともに集中して勉強することは、もはや困難です。

子どもたちにとって、学校は「勉強できる場所」「授業を受ける場所」なのです。また、学校に来ると、教室にはクラスメイトがいます。親友がいます。ライバルがいます。共に高め合える仲間がいます。そこに行けば、モチベーションが自然と上がり、授業を受ける気になり、頑張れる。

しかし、家庭は孤独です。

勉強できる場所や従来の環境を奪われた子どもたちは、そう簡単に家で勉強することができません。

Q.「でも、宿題は家でやってるよね?」
A.「宿題なんて20分~1時間で終わる。45分×5時限(=4時間弱)とは時間が全く違うよ。短時間の集中ならできるでしょう。」

理由その2. オンライン授業は「授業」ではない

もともと、オンライン授業は以前にも存在しました。大学進学予備校で実施されている「衛星授業」など。有名実力講師の授業を、最寄りの予備校あるいはパソコンやスマホがあれば、全国どこにいながらも視聴することができるという大変画期的な仕組みです。

あの授業形態が成立するためには、2つの要因があります。
1. 生徒のモチベーションが、かなり高いこと。
2. 講師の指導スキルが、むちゃくちゃ高いこと。

この両者がそろうことで初めて成立します。

学級には、それぞれ個性を持ったさまざまな児童・生徒が在籍します。
モチベーションが高い子どももいれば、低い子どももいる。

モチベーションが高い子供たちは、オンライン授業でも主体的にやる。
しかし、モチベーションが低い子は、全くやれない。

そう、モチベーションが低い子どもにとって「オンライン授業」はただの「電子画面」。授業なんかではないのです。大学進学を諦めない浪人生のモチベーションとは、訳が違う。

実際学校でよくある光景ですが、
「勉強なんてつまんねー。もう寝よっと。おやすみー。」
こんな子どもはどこの学級にもいる。そして居眠りしている子どもがいたら、必ず先生は、
「起きろ!がんばれ!」「大丈夫か?もう少し頑張ろう!」
と、励まし起こします。

オンライン授業で、寝てる子どもを起こしてモニターに集中させる自信は、悪いが全く無いな。というか無理だろ……。

(もちろん子どもを起こすことが目的ではないので。あくまでひとつの例として紹介しました。)

理由その3. 学ぶことは、師が与えるコンテンツではなく、師そのもの

これは個人的な教育観なのですが、学問はその内容より、誰から学ぶかが大きいと思います。要するに実際に会った方が影響力が大きいということです。

例えば、ある先生に直接指導を受けたくて、その先生が所属する大学を受験、または講演会やシンポジウムに参加しようと考えている。しかしその教授は既にオンラインサロンを開設して、月額1000円でインターネットを介して直接受講することができる。

そのとき、あなたは直接会える、また直々学ぶ機会を辞めて、オンラインサロンに入会し、オンライン授業を受講するだけで満足するか。そんな訳ないですよね。やっぱり直接会って学びたいですよね。

学びは、実際に会うことによる対話だと思います。

実際に会わないと、感じ取れないことって多くあります。知識という事実だけではなく、その人からにじみ出る情熱や苦労や体験談が、エッセンスとして知識に注ぎ込まれている。そうすると、得た知識からは、師からの想いも詰まっています。これらは、学習者の知的好奇心を大いに刺激してくれます。

また知識だけではなく、その人から感じられる空気感、人柄、ノンバーバルコミュニケーションを直接感じ、「尊敬する師から直接学ぶことができた」という経験が、更なる自分のモチベーションにきっとつながります。向上心があれば、次のステージでもまた新たな学びを得ることができるはず。

学びには、知識や技術だけではない、学ぶ意欲、ヤル気がとても肝心。

これはメディアスクリーンの弱点で、さすがにリアルには勝てない。師の想いは十分に伝わらないでしょう。

理由その4. 視聴環境の違いが、大きな格差を生む

子どもが教室に集合して授業を受けることのメリットは、「みな平等である」ということ。座席の配置など細かい授業環境は異なるが、みな同じ授業時間の45分を使い、全員に発言権が与えられる。これが平等である。

しかし、家に帰れば家庭環境は大きく異なる。

ハイスペックなパソコンを持ち、3Dメガネをかけ、バイノーラルイヤホンを装着し、大型スクリーンで投影される授業を視聴できる家庭。

一方は中古のおさがりスマホしか持っていなくて、格安モバイルのポケットWi-Fiから飛んでくる電波を拾い、5インチの画面にかじりついてやっと授業を視聴できる家庭。

ICT機器の充実という点だけで比較した場合、どちらの家庭で育つと、より学力を大いに伸ばすことができるのかは、明白。この違いは、とてつもなく大きな教育効果の差に広がっていく恐れがあります。

理由その5. オンライン授業に参加できない子どもがいる

これは上記の理由その4.にも共通していることがあります。

経済的な理由や、複雑な家庭環境など、何かしらの理由でで通信環境が全くないという家庭が、実際存在します。もし通信環境がなくても、大阪府のように府がすべて金を出すことによって、各家庭の通信環境を整備し、全生徒のオンライン授業の参加を可能にします。

しかし、本質はそこではないのです。
環境が整備されても、オンライン授業に参加できない子どもがいるのです。

一人では勉強ができない、全く集中できない、パソコンやスマホを操作することができない、スクリーンが見えない、聞こえない、長時間椅子に座ることができない、そもそもオンライン授業が「授業」であるということを認識できない、など、挙げればきりがないほど、子どもは多様です。

そしてその子どもたち全員をすべて満足させるオンライン教育は、現時点では存在しません。そしてこれからも、それは不可能です。

アフターコロナを見据えて

オンライン授業は「会う」に係るコストを大幅に減らしてくれています。学校で行う授業の場合は、学校へ行くための「時間」や「交通費」や「体力」が、コストに該当します。そして何より、オンライン授業によって、コロナ感染のリスクを格段に下げています。

しかし、感染リスクさえ除けば、これらは高が知れている小さなコストです。

「授業や学校生活で得られるもの」と「学校に来るコスト」天秤にかけたとしても、やっぱり得られるものの方がはるかに大きいでしょう。

教員がAIに奪われる?そんなことないよ。授業など学校で体験できるリアルは、まだまだ子どもたちにとって必要とされているはず。

そして結論は、「学校に集まり授業することで、子どもたち全員の教育を保障することができる」ということです。現時点で、オンライン授業のインフラが整っている、いないに関わらず、子どもがオフラインのリアルに集合しないと授業にならないのが現状です。

もどかしいのですが、今は白旗を揚げて、感染予防を徹底し、治療薬を待つしかないのかな、と途方に暮れています。その間に、アフターコロナを見据えて、学校向けに開発されているウェブサービスの勉強と試行をしようと思います。

今後の学校は、もう以下のどれかになりました。

その1.
感染完全防備をまとい、全校児童生徒ソーシャルディスタンスを死守し、授業の度に教室や校舎を徹底的に消毒しながら、従来の学校生活を送る。

その2.
初等教育からではなく、生まれた時から、メディアスクリーンに馴染み、オンライン授業ありきの育児を実践しながら、新たな
学校教育のプラットフォームを築く。

その3.
その1.とその2.を融合させた、新未来型教育活動に学校と社会がシフトしてゆく。

アフターコロナまじかよ?どれも重いなぁ。
とりあえず来月からどうなるんだろう?

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