見出し画像

映画「アアルト」 アアルトの⼈⽣と作品の追憶

東京都青梅市にあるミニシアター「シネマネコ」にて映画「アアルト」を見てきました。

シネマネコとは、東京都唯一の木造の映画館(ミニシアター)で、青梅市の静かな町並みにひっそりと佇む、水色の外観が素朴で可愛い建物です。

建物内にはカフェやグッズコーナーも併設されており、ミニシアターならではのマイナーで面白い映画を見ることができます。

シネマネコ
JR青梅線  東青梅駅 徒歩7分


木の香りが心地良い館内を奥へ進むと、スクリーンへ。
シネマネコのスクリーンは1室です。

この日は「アアルト」上映最終日だったため、それなりにお客さんが入られていました。

このドキュメンタリー映画は、フィンランドを代表する建築家「アルヴァ・アアルト(1898-1976)」の生涯について順を追って語られていくものでした。
シンプルでモダンな「北欧デザイン」というスタイルをつくり出した第一人者です。また、家具ブランド アルテック(Artek)の創業者であり、北欧デザイン史を語るには欠かせない偉大な人物です。

映画はアアルトの建築やデザインにフォーカスを当てたものというよりは、彼の人物像や、彼の人生の回想でした。

デザインや建築についての知識は書籍を読んだり展示会に行けば得られるものが多いけれど、そのどこでも知ることができなかった彼の人柄、妻アイノに宛てた手紙を通して彼女との関係性などを初めて知ることができて、とても面白く満足感のある映像でした。

ところで昔の偉人って身内宛ての手紙が全世界にめっちゃ公開されてるよね・・・


アルヴァ氏の人柄は全く知らなかったのですが、白黒写真から受け取れるイメージや建築に対する拘りなどから、なんとなく「寡黙で頑固者の職人気質な男性」というイメージがありました。

ですが実際は人から好かれ、コミュニケーション能力が高く、野心家で商売上手。また異性の影も多く、周囲の人物曰く「色気のある人生」だったそうです。

妻に宛てた手紙にも「私が不貞をはたらいていることは知っているだろう、君とは対等になりたいから君も好きにしてほしい」「私は君のモラルが好きなのではなく君自身が好きなんだ(だから不貞を働いても問題ない)」みたいな内容が書かれていたようで。笑
妻アイノからの手紙には、彼のそういった奔放な性質や海外の仕事で長く家を空けることに悩まされているように見え、「私は疲れたわ」「あなたが帰ってくるまでには機嫌をなおすわね」のような言葉から、「子供がいて仕事がある以上に幸せなことなんてないわよね」など自分に言い聞かせるような言葉から、「今までにないくらい愛しています」などの愛の言葉を書き記すなど、彼への愛憎混じりの葛藤が見られました。
それでも夫婦として繋がっていられたのは、かけがえのない創造の時間を共に過ごした絆や、彼の人柄やアーティストとしての才能に理屈や道徳的な正しさだけでは語れないところで強く惚れ込んでいたのかなあと思いました。


ほとんどのミニシアターでは上映が終了してしまったようですが、神奈川の早稲田松竹(5月11日〜5月17日)、小田原シネマ館(5月17日〜5月23日)ではこれから上映予定だそうなのでぜひ!

映画では建築やデザインについて詳しく解説されることはないため、できれば少しでもアアルト夫妻の携わった建築や家具の知識を取り入れてから見てみると、より面白いかもしれません。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?