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変わって変わらず

本当にお前最高なんて言葉と共にグータッチをする男女、深夜の鳥貴族、298円の焼き鳥が並ぶテーブル。俺らはまじで俺ら1年の頃からずっとこんな感じだからなんて私を振った男の子は後輩に笑って話す。そう、ずっとこんな感じで付かず離れずな時間を過ごした。

身長が少しだけ高くて偶にすごく冷たい事を言う人、笑うとただでさえない目がなくなっちゃう人。私の大学になって初めて好きになった人はそんな人だった。どこが好きだったのかは未だにによく分からないし今の彼に対する好きのカテゴライズもわからない。ただ今も特別に仲がいい。隣にはそんな彼、同じテーブルにはNaporiの彼、状況を知っている人が見たらカオス過ぎて酒がよく進むと思う。少なくとも私は面白くて酒が進んだ。

彼のことを恋愛的に好きだった時の話はきっとまたいつか書きたくなるだろうからその時に書く、今日は最近の話を書きたい。後輩に仲良いですねなんて言われた彼は冒頭の言葉を言った。彼を恋愛的に好きだった私と私を恋愛的に好きではなかった彼。それでも未だに2人で遊んだり電話をしたりする。後輩にそんなに仲良くて羨ましいです、なんて言われるけど恋愛的にゴタゴタした事がある私達の関係は彼の優しさによって支えられてる。感謝なんて言葉じゃ足りない。一緒にカフェを巡った日、並んでラーメンを食べに行った日、一緒に朝ごはんを食べに行った朝、私の美容室に付き合ってくれた原宿、コーヒー片手にお散歩した冬のある日、家まで迎えにきてくれた秋、失恋した私を励まそうとLINEで必死に笑わせようとしてくれた冬。ゴタゴタしたあともこんなに沢山の思い出を作った。気まずくならなくてよかったと親友にこぼしていたと聞いたがそれは私のセリフ。今でもかけっこをしたり肩を組んだり意味もなくハイタッチをしたり仲がいいのは私をシャットダウンしない彼の優しさのお陰だ。     そんな彼から嫌いな同期がいると相談を受けた。私にそんな話をする彼は初めてで、そんな話をしている姿を見たのも初めてだった。私に言っちゃっていいのと笑って返した私になんとなく聞いて欲しかったと言った彼。この前の同期会に来なかったのは嫌いな同期が来るのが分かったからだと言った。俺もお前と飯食いたかったんだけどなぁ〜なんて言葉と共にハイボールを飲み干す彼。こんな事を言われてもドキドキしたり期待する事は無くなったけどやっぱり嬉しいものは嬉しい。少し嘘をついた、割とドキッとしてしまう。

そんな弱音を吐いた彼を見て思い出すのは参加してるサークルの最終試合の帰り道。冬の寒い夜に皆で帰りながらに2人で並んで帰った。1年を振り返るとあまりに早くその中には2人でも皆でも多くの思い出があった。もしかしたらこの最後の試合でチームを辞めるか長期で休むかもしれないと相談をされていた私。自分の立ち位置への責任、自分の力不足など普段強気の彼からは想像もできない弱い脆い部分を見せてくれた。そんな私は上手い事も言えず素直に思う事を紡いで返すと言う日々を暫く過ごした。そんな中、最終試合がやってきた。結果は惜しくも敗れ泣き崩れる先輩方を見ながら静かに泣いていた私の頭の中には、もしかしたら彼がこのチームからいなくなるかもと言う一抹の不安で頭がいっぱいだった。その帰り道の話である。ホームで彼が唐突に今日までずっとありがとうと言った。出会った時の話から最近に至るまでの日々を2人で振り返った。私との思い出を話しながら本当に楽しかったありがとうと笑う彼はあまりに愛おしくて終電近い雑踏としたホームで私は何故か泣いた。お前泣くなよと笑いながら、思い出を追加で話す彼。本当に楽しかった、ありがとう、今日が最後かもしれないけど本当に楽しかった、と言葉をどんどん投げつけてくる彼とぜんぜん泣き止まない私。

そんな半年前の話を思い出しながら隣で座る彼を見る。なんだよと口角を上げる彼の顔はやはり私が1番好きな顔。いや?ただかっこいいと思ってなんて言ういつもの流れ。写真撮ろうよと言うと珍しく笑ってくれた。2人で写真を撮ると隣の彼がカッコ良すぎて溶けた顔をしてしまうのは今日も同じ。

なぜかハイタッチをさせられた初対面の春の日、好きなアーティストが同じと言うことでハモリながら歩いた新宿、些細なことで喧嘩をして口を聞かなかった1週間、私のご飯を作りにきた夏、毎日LINEをした夏休み、一緒におでんを食べた冬、映画を一緒に見た池袋、2人で道に迷った八王子、多分きっと卒業までもっと積み重なる思い出。彼への気持ちは変わってもきっとその時も今日と相変わらず私たちは仲がいい。

やっぱりお前最高だわと笑う彼の隣で早く彼女作りな〜なんていう私。早く幸せになってね、私が1番君のこと好きだったし幸せにくる自信あったけどなんて思う深夜の帰り道。

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