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血流と大循環の要衝 ーBTPとはー

BTPとはBlood Trigger Point(当社の造語)の略で、概念は血流が滞りやすい要衝を指している。MTR Method™️では血流を最適化させる筋肉チューニングがメインとなるが、チューニングをかける部位には優先順位がある。いくら栄養摂取を強化しても、筋拘縮によって血管が圧迫されて血流が滞っていればその栄養が足先まで届かないので栄養改善の効果は半減する。だから、要衝となる筋拘縮を確実に解除し血流を確保していくことで酸素と栄養が行き渡りチューニング効果も上がってくるのだ。チューニングセラピストたちは、チューニングをかけて血流を促進することで同じ部位でも筋肉の反応速度が有意に変わっていく事を指先で確認している。體の末端にいけばいくほど、大循環の要衝を開放する事の効果は計り知れない。MTR Method™️では、必ずしも痛む場所を最初にチューニングするわけではないが、これは全身を俯瞰しBTPの概念に則ってルートを辿っているからなのだ。

大循環の要衝となる股関節屈筋群

上の図を見ると一目瞭然だが、大動脈と大静脈が股関節屈筋群の中央を縦断している。大循環は、特にアスリートが硬く凝り固まるほど酷使する大腰筋と腸骨筋、そしてプロネートしている大腿骨を象徴するように、脚の内側を膝頭に向かって走っている。我々がサッカー選手を人體の研究対象としているのは、足関節を酷使するプレーの特性と、人體力学の基本からかけ離れた負荷の高い動きが多いからなのだが、これまで出会ったプロサッカー選手たちは全員がこの股関節屈筋群の筋拘縮が過剰に蓄積し血流障害が起きているという現状は当初の想定通りだった。

大循環が滞ると下肢部への血流が阻害され、酸素と栄養が共に不足することで筋拘縮のさらなる蓄積を招き、それと同時に老廃物を回収代謝できずに炎症や浮腫が起きやすくなる。そして、この悪循環は足関節(足首)のシェイプとなって顕著に現れてくる。現役のプロサッカー選手の多くが足首から足自体に問題を抱えており(*自覚症状がない場合が多い)、足首の浮腫がひどい選手は触診するまでもなく筋拘縮の塊のような脹脛やアキレス腱をしている。ほとんど伸縮することがない脹脛やアキレス腱は筋反射の機能を失いただの重りとなって體の負担になっていく。脹脛は痙攣しやすく年数回は肉離れ様の状態になる。キレやスピードを特徴とするオフェンスの選手はアキレス腱断裂という大怪我を負うリスクも高くなるのだ。さらに、一つ付け加えるなら絶好調の時こそ危険なのだ。「好事魔多し」とはまさに大怪我前の絶好調の選手のパフォーマンスそのもの。筋肉が硬く縮こまり怪我寸前の状態の體は硬い棒のようになっており反撥力が閾値を超えている。縦への突破の速度が上がり、まるで飛び跳ねているよう状態の選手の體は本当に注意深くチェックしておきたい。

比較するわけではないが、ここにメッシ選手とネイマール選手の足首の画像がある。この足首をご覧になれば、どういう脚を目指すべきかご理解いただけるだろう。最高峰のケアをしているのは間違いないであろうトップオブトップの選手たちだが、この足首は幼少期から捻挫の処置を怠らず常にキレを発揮するための足関節の柔軟性を維持してきたはずだ。足首と同じくらい注目したいのがうっすらと筋肉のシェイプがわかる程度の腹直筋だが、おそらく過剰に筋肉トレーニングはしていないのだろう。この奥に大腰筋がどっしりと構えているのだが、きっとそこまで筋拘縮は蓄積していないと思われる。足首に浮腫がないのは大静脈が老廃物を回収し内臓から正常に代謝している証なのだ。

前掲の筋肉図で赤く囲ったところが滞りが起きるBTPの代表的な部位を具体的に記すと下記の通りとなる。
・大腰筋下部
・腸骨筋下部
・恥骨筋
・長内転筋中腹
・大内転筋


これらの部位は言わずもがな大循環の要衝なのだが、アスリートが全般的に筋拘縮を蓄積させやすく、一般の人でもここは硬く凝り固まってる方がほとんどだろう。セラピストやトレーナー諸氏もこの部位を触る事は多いと思うが、実際に筋拘縮を取り切る施術ができるセラピストは少ないと断言しておく。専属トレーナーがついているプロサッカークラブの選手でも、実際は全員がガチガチに硬く凝り固まっており血流障害を起こしているのを目の当たりにしている。足首は浮腫んでぼやーっとしており無駄に太く、足の甲まで老廃物が溜まっている。足底は板のようの硬く土踏まずがない。BTPの要衝が筋拘縮で堰き止められており足先まで血が循環していないのは明らかなのだが、これが多くの怪我の原因だと氣づいているスポーツドクターも少ないようだ。その証拠にいまだにスポーツの現場ではアイシングが横行している。アイシングは止血作用のみ有効でそれ以外では筋拘縮を促進してしまう。患部の腫れは炎症の場合と内出血の場合があるが、ほとんどの場合は炎症で済んでいるはずだ。炎症ならば冷やさずに蒸しタオルなどで軽く温めて炎症を促進し治癒するまで安静にする。だいたい3日から4日で炎症は治るはずだが、それでも痛みが残るなら筋拘縮による酸欠を疑う。自然治癒が體にとって優しいのは言うまでもないが、それ以上に患部付近の急性の筋拘縮を早く解除しておきたい。コールドトレーニングや温冷交代浴はその効果と状況を理解した上で取り入れるべきものだ。

我々のMTR Method™️では過度な筋肉トレーニングを推奨しないと宣言している。(*初動負荷トレーニングは筋拘縮の低減につながるのでおすすめ)それはメリットよりデメリットが多いのが明白だからだ。プロアスリートになる頃、つまり20歳前後のサッカー選手の體を触るとすでに股関節屈筋群は筋拘縮の塊で圧痛さえ感じないほど凝り固まっている選手も珍しくない。つまり、この時点で下肢部への血流が著しく阻害されているので、大腿部などはいくら筋骨隆々でもほぼ使えない筋張った筋肉が多くただの錘状態になっている。見た目の筋肉量と実際に機能する筋肉量は有意に違いがある。ただし、これを科学的に測定する技術がないためずっと見過ごされているのだと推察される。

特に氣をつけてほしいトレーニングが、アスリートの誰もが実施する錘を担いだスクワットだ。そして、近年定番化した感のあるコアトレーニング(体幹トレーニング)もひどい血流障害を引き起こす典型だ。大循環の要衝となる大腰筋、腸骨筋、恥骨筋、内転筋を過剰に酷使し過ぎるためにトレーニングをすればするほど筋拘縮は蓄積していく。筋肉チューニングのスペシャリストを自称する我々でも、長らくこうしたトレーニングをしているアスリートをしなやかに素早く動く弾力のある體に戻すには、数ヶ月間を要するのはすでに何名かの選手で実証済みだ。社会毒を排除し、理想の食事に変え、サプリメントで足りない栄養を補助をするなどの栄養改善を実施しても肝心の栄養素がなかなか體全体に行き渡らなければ、いつまでも感触や血色が悪い下肢部のままなのだ。痙攣しやすい脹脛。捻挫を繰り返すたびに悪化していき底背屈ができなくなる足関節。拇指球と小指球と踵の接地バランスが崩れたオーバープロネーション(過回内)。足趾はただついているだけで血の氣もなく仮死状態。つまり、筋拘縮によって血管が圧迫されて血流が滞っている限り、栄養改善してもいつ大怪我をしてもおかしくない危機的体質からの脱却は難しいと言わざるを得ない。

トレーニングやゲーム後のクールダウンの意味は、熱った體を冷まし疲労物資や炎症物質を流すことにあるのだが、大静脈が滞っていたらどうなるだろうか。體を冷ます効果はあるだろうが、肝心の老廃物の代謝はうまく行われない。そこで、筋拘縮を少しでも自然解除して血流を促すためにプロアスリートにおすすめしているのが、天然芝の上を裸足で歩いたりスロージョグをする自然体のクールダウンだ。ヒトは裸足で生活する動物だった時代が圧倒的に長い。諸説あるが人類史は600万年と言われている。我々ホモ・サピエンスに限って言えば20万年だ。では、靴の歴史はどうだろうか。紀元前7000年頃にヨモギの樹皮で作られたサンダルが世界最古の靴と言われているが、革靴に至っては紀元前3500年頃にやっと初登場する。つまり、人類が靴を履くようになってまだ日が浅いという事になる。みなさんも一度、子どもの頃のように芝生の上を裸足で歩いてみると良い。全身の力が抜けてリラックスしているのを実感できるはずだ。私はこれを開放感と大地と肌が直に接する事で全身の流れが整う効果と考えている。

さらに欲を言えば普段からできるだけ靴を履かないようにする。足趾がしっかり動くサンダルを履く事で足先から血流を促し筋拘縮を低減できる。この足活を快適に過ごせるのがワラーチというサンダルだ。私は今年初めてワラーチで越冬した。雨の日も風の日も、そして雪の日でさえも裸足でワラーチを履いて歩いた。こうして一冬を超えて寒さにも耐えられる足になった。シェイプも原始人類のそれ近い野生味を帯びてきたが、足に着目して生活すればするほど、これほどまでに足が貴重な役割を果たしていると実感する。ましてや足でボールを蹴るスポーツのサッカーであれば、なおさら足の再生に取り組むべきと確信している。

話が「足」にまで及んでしまったが、BTPの結論としてまずすべきは筋拘縮を徹底的に解除し、大循環の要衝をおさえ、全身に酸素と栄養素を行き渡らせ、老廃物を回収排泄するような血流を確保することに他ならない。私たちのMTR Method™️で再生したJ1サガン鳥栖44番の堀米勇輝選手の軌跡をノンフィクションにまとめた。4ヶ月での再生はこれまでの最短記録だが、プロアスリート自身が本質を捉え自ら能動的に取り組む事で時間は短縮され、人體再生からパフォーマンスアップへフェーズを変えていく事ができる。こうした本質に氣づいて一念発起し新たなチャレンジに動けるか、いつまでも先入観や固定観念に縛られ同じトレーニング、同じケアを繰り返すかは結局は本人自身の決断次第である。

「血球・血流・血管」という3つの血が、私が人體研究において新たに疑問が沸いた時に戻る原点になっている。血球は血そのもの、特に血の約半分を占める赤血球。血流は今回触れた血の流れ。血管は動脈・静脈から毛細血管までの全長12万Kmにも及ぶ全身に張り巡らされたパイプライン。體の不調があれば、このいずれかがおかしいはずなのだ。プロアスリートに限って言えば、この3つの血を最適化しておけば怪我は未然に防ぐ事ができると考えている。もちろん不慮な事故はあるだろう。接触プレーでの怪我は対人スポーツにはつきものだ。それでも血の状態を最適化しておけば怪我の被害を最小限に食い止めることができだろうし、怪我後の回復も早まるのは間違いない。つまるとろこ、「整えるべきは血球・血流・血管」と言う3つの血になる。長文になるが、ぜひ我々のMTR Method™️についてもこの機会にご覧いただきたい。プロアスリートのみなさんにとって輝かしい現役生活のお役に立てるのは当然だが、引退後の豊な人生にも寄与できると確信している。

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