フィルムだとデジタルよりも撮る枚数が減ります。
それだけでなく、撮るものも変わります。
なぜでしょう。フィルムでしか撮らないものがあるのです。
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それは、持つカメラによって見えるものが変わるということです。
デジタルで撮るときは、目の前のものをためらうことなく「記録」していきます。感覚の表面が反応する感じ。それができるのは「何枚撮ってもタダ」だからです。
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フィルムカメラを手にしている時は違います。
1枚撮るごとに70円。単なる記録のためにシャッターは押せません。
だからフィルムで撮るときは、より波長の長い、感覚の深くまで入り込んでいるものだけに反応します。表面だけの情報はfilter outされるのです。それがどんなfilterなのか言葉にできませんが、フィルムに写っているものには「自分=世界」を知るための鍵がありそうです。
フィルムだけに写されたもの。
「ぽっかりとあいた空間」や「ただ存在しているもの」が多いように思えます。それらは、「物語がはじまる前」あるいは「物語の終わった後」のシーンのようにも見えます。
前にも書いたように、フィルムに写るのは過去と未来を内包した「不在」と言えるのかもしれません。