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むかしの恋人/北海道と茨城と

過去の出来事。
そこにあったモノや感情。
それらが消えることはありません。

「その事実」は「その時間」に存在し続けます。

それを憶えている人がいなくなっても。
太陽の光が消えても。


好きだったお店はほとんどなくなり、仕方なく駅でご飯を食べてしまう。

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札幌に来ています。

10年10ヶ月暮らしたこの街を離れて16年。
いまも至る所に過去の出来事が消えることなく息づいています。

それは単なる「自分の中の記憶」ではありません。
「その時間」に「その事実」が明確に存在しているのを感じるのです。

過去形ではなく現在形として。


ふと見上げる一本の木の白さが時空を超えている。

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恋焦がれた時期があって、
そこで過ごした歳月があって、
離れたあとの時間がある。

札幌の街は「むかしの恋人」です。

いまは失われた「恋する気持ち」
それさえも「その時間」では現在形として輝いています。

「生きる」とは時空間座標の中に「消えない事実」を刻んでいくことです。

「過去」は「現在」と等価です。


20代の最も長い時間を過ごした場所。

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明日、新千歳空港から茨城空港に帰ります。
かつての場所から、いまの場所へ。

北海道と茨城県。
魅力度1位と最下位ですが、わたしはどちらも大好きです。
いや、いまは茨城の方が好きかもしれません。

飛行機の窓から茨城の風景が見えるとほっとした気持ちになります。


眼下の街ではきっと7人くらいが数学の問題に頭を悩ませ、2人がラジオDJの言葉にツッコミを入れ、6人が恋人と抱き合い、11人がYouTube広告のスキップボタンを押しているのです。その事実をこの世界に刻みながら。

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この先いつまで茨城に住んでいるのか分かりません。
いや、人生だっていつまで続くか分かりません。

でも、「終わること」は「消えてしまうこと」ではない。


「むかしの恋人」である札幌の街を歩きながら、そんなことを思っています。


北海道と茨城県は実はけっこう似ています。畑がどこまでも広がっている感じとか、ちょっとガラの悪い道民/県民性とか。セイコーマートは茨城にもたくさんありますし、北海道に多い山岡家は茨城で始まったお店です。メロンと言えば夕張?いえ、生産量1位は茨城。野菜生産量と漁獲量は1位が北海道、2位が茨城…茨城は北海道の陰に隠れた(北海道のせいで目立たない)県とも言えそうです。

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「科学」と「写真」を中心にいろんなことを考えています。