詩

花束を持った男の子が電車のシートで涙ぐんでいる

野原で見つけたものはみんな宝物だった頃、わけのわからないものを拾った。
柔らかくて、でも硬い芯があって、それでいてポケットに入れるのをためらうくらいのトゲが生えていた。

窓の下に置いておいたら、いつしかそいつは羽を広げくちばしを尖らせお話を始める。
それって、世界の秘密。
私がここにいていいことの証。

両手でそっと包んで空に投げたら、もう二度と帰ってこなかった。
たった一枚青い羽を残して。

花束を持った男の子が電車のシートで涙ぐんでいる。
卒業式なんて本当はいつもないんだ。
あなたはその黄色いシートの上で涙を拭い、自分を大人に変えていく。
この地球に青い羽根だけ残して。

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