【WEBディレクション】サイトを作るのは、家を建てるのと一緒【大事な家を大事に建てよう】
今回はサイト構築について
今回は、この記事を見て書こうと思い立った記事です。
サイトを作るのは、そしてそれを制作会社にお願いするのは家を作ることに似ています。
なので、家を作ることに例えつつ、サイト作りにどう取り組んでいけばよいかを考えてみましょう。
どんな家が欲しいの?
家を建てるのであればまずどんな家を建てるかを決めるべきですね。
・建売住宅を買って、オプションで選べる分だけを決める(マンション含む)
・注文住宅を買って、全てを決める
・買わずに借りる
大体このパターンだと思います。ちなみにシェアルームというものもあります。このnoteがそうですね。
では、それぞれの違い、メリデメを書いておきます。
・シェアルーム
それほど考えることはありません。与えられたスペースに与えられた方法で、好きなことを書くだけです。その代わり、出来ることも少ないです。
<メリット>
・安い。
無料、もしくは安価で利用できる
・手軽に始められる
やろうと思ったら最短1分くらいで始められます
<デメリット>
・自由なデザインにできないことが多い
・分析などもほぼできない
・マネタイズもアフィリエイトくらいはできる場合がありますが、本格的なビジネスは難しいと考えてよい
・ドメイン(サイトのURL)も自社のものを使うことはできないことが多く、提供会社のものを使うことになります
・基本の枠を超えること、例えば会員システムを提供していないレンタルサービスで会員システムを導入したり、大規模な負荷がかかること、システム連携などはできない、もしくはやりにくい
・CMS(コンテンツマネジメントシステム・記事入力画面のこと)も選べません
・買わずに借りる
レンタルサーバを借りて、そこでWordPressなどを使って始める場合です。自由が利く分、自分でいろいろと準備が必要になります。
<メリット>
・自由が利く。デザインもドメインもCMSもマネタイズも基本的には注文住宅並みに何でもできる
<デメリット>
・使える容量が決められている、もしくは増やすとお金が追加でかかる
・システム間連携などはやりづらい
・サービス側がサーバ(OSの入ったコンピュータ)のみしか用意していないことが多いので、何でも自分でやる必要がある
・建売住宅を買って、オプションで選べる分だけを決める(マンション含む)
こちらは制作会社に業務委託して、その制作会社の持つCMSを使うパターンです。借りるパターンまでが月額せいぜい数千円だったとしたら、こちらは月額数万円以上のお金がかかります。
<メリット>
・技術的な内容は制作会社にお願いできる
・レンタルサーバよりもさらに自由度が高い
・使う容量次第でお金はかかるが、ほぼ無限大に利用可能
・システム間連携なども比較的やり易い
<デメリット>
・費用が高い(注文住宅よりは安い)
・始めるまでに比較的時間がかかる。内容にもよるが1か月から半年の間くらい
・このパターンを選ぶ場合はデザインも一から決める場合が多いため、デザイン費用が別途かかる
例:良い制作会社があったら教えて欲しいくらいです。紹介してトラブルがあった場合に責任が取れないので記載は止めておきます
・注文住宅を買って、全てを決める
世間で言うスクラッチ、というやつです。CMSの仕様からデザイン、機能まで全てを決め、作ります。一番自由度が高い代わりに費用も高く、難易度も高いです。
<メリット>
・基本的に何でもできる
<デメリット>
・費用が高い。数百万から数千万まで
・難易度が高い。全てを決められるということは細かいことに関しても全て決めるということ
お勧めは?
どれがお勧めですか、という問いには、どのくらいの規模のものを作りますか、という問い返しが必要になります。
本当にただ情報を発信したいだけで、会社も何も関係ない。もしくは会社は関係あるけどまずはユーザーの反応を見るためにトリガーサイトを作りたい、ということであればシェアルームで十分です。
会社の仕事で作るのだけど、情報発信だけだし、本当にテキスト配信できればいい、ただしドメインは自社のものを使いたいし、デザインはあるていど社のサイトと統一感が欲しい、ということであれば買わずにレンタル、ということになります。
情報発信や簡単なショッピングサービス(EC・Eコマース)がやりたい、カスタマイズなどはほぼ必要ないが、WEBサイトの構築経験者がおらず、誰かに任せたい。そういう場合には建売住宅が良いでしょう。ただし、後述するように完全にお任せ、というわけにはいきませんのでご注意を。
それ以上の、完全にオリジナルな機能やカスタマイズが必要だったり、システム連携をしたり、CMSにも自分たちの考えた要求を入れたいんだ、ということでしたら注文住宅を買う必要があります。
あまりよく分からない、ということであれば、私が例示したように自分のサイトを家だと思ってシェアルームの規模なのか、注文住宅が必要そうなのかを想像してみましょう。趣味だったらシェアルームでいいや、と思えるでしょうし、会社の事業であれば最低でも建売か注文住宅が必要そうだな、と考えることができるでしょう。
どんなことに気を付けるべきか
家に例えたのは、サービスや規模などを見る以外にも、利用する際にも適用できるからです。
シェアルームを決めるときに考えることは何でしょう?
例えば一緒に住む人のことを気にするかもしれません。部屋の広さを気にするかもしれません。部屋の使い勝手を気にするかもしれません。
それをブログサービスに置き換えると、そのサービスの雰囲気や利用しているユーザー層(アダルトはあるかないか、など)、使える容量、入力画面の使いやすさなどに気付けるでしょう。
貸家を借りる際には何に気を付けていますか?
部屋の広さや使い勝手、上下左右の住人、値段、どれくらい部屋の中をいじっていいかを気にするかと思います。
レンタルサーバと考えると、容量に対しての値段、初期費用など、管理画面の使いやすさやサーバの設定方法など、さらにどのくらいカスタマイズが可能か、などが気になってくるでしょう。
建売住宅であれば、どんな土地に立っているか、隣との距離はどうか、そしてやはり広さや使い勝手が気になると思います。また、購入なので値段は大きな問題です。値段に対してどのような家が手に入るのかはよく吟味する必要があります。
それは翻って、その制作会社が提供しているCMSの使い勝手や基本機能、どのくらいオプションが選択できるのか、費用感はどの程度のものなのか、または他の利用者の利用状況が自社サーバのパフォーマンスに影響しないか、なども気になってきます。
注文住宅でしたら、どの建築会社に頼むかが一番大事ですね。どんな家を作るのか、平屋なのか二階建てなのか、車庫はどの程度の広さを取るか、屋根はスレートか瓦なのか、庭をどうするか、はたまた二世帯住宅であればどのように住み分けるべきなのか、玄関は一つか二つか、リビングは一つか二つか、などまで気にしなくてはいけません。
この辺りの話しを次にしてみましょう。
注文住宅を上手く建てるには
一番大変なので注文住宅を例に出しましたが、建売でも貸家でも気を付けることは同じです。
まず、家は住みたいと思った人が建てられるものではありません。
たまに建てちゃう人もいますが、それはそういう人なのであって、ほとんどの人は自分で家を建ててしまおうと考えはしないと思います。
つまり、建築会社や建築士にお願いすることになります。
これが、WEBサイトでいうと制作会社にあたります。
皆さん、住みたい家を想像したことってありますよね?
でも、具体的に居間は何畳で、電源はいくつくらいどこに欲しくて、ドアにガラスは必要か、どんな家具を置く予定なのか、収納はどの部屋にどのくらい欲しいのか、玄関は広い方が良いのか、靴は何足くらい置くのか、バリアフリー対応が必要か、トイレは洋式か和式か、電気は何W必要か、車庫の扉は必要か、庭は土か芝生か、どんな木を植えるのか、郵便受けは必要か、などなど考えたことはありますか?
たぶん、そこまでは考えたことが無いと思います。
それがWEBサイト構築でも言えます。
グローバルナビゲーションにどんなカテゴリを配置するか、サイドカラムは右か左か両方か、コンテンツはどんなものを提供するのか、会員サービスは展開するのか、会員からどんな情報を収集するのか、規約はどうする、メルマガは発行するのか、個人情報をどのような形でダウンロードするのか、分析タグはどうするのか、どこをどのように計測したいのか、広告はどこに配置するのか、その大きさは、数は、アクセスランキングはどのように集計するのか、どのように見せるのか、関連記事は新着順で出すのか、AIで関連度合いを計測するのか、デザインの色味は、遷移先は、キャッチバナーは、SNSへのリンクは、ヘッダは、フッタは、どこに何を配置するのか。
制作会社はあなたがどんなWEBサイトを作りたいかを聞きたいと思っています。漠然と「カッコいいサイト」ではなく、「こういう目的でこういうサービスをするので、必要な機能とページはこれだけある。デザイン面はユーザー調査や業界の他サイトを比較した結果こういった色味が好まれているし差別化もできるため、この色をメインカラーにビビッドな感じでアクセントをつけたい。各ページに必要な要素はこれだけあり、各機能がどんな目的で最低限どんなことができないといけないかはここに書いてある」と言ったようにあなたの頭の中にあるものを全て具体的に書き出す必要があります。
もし、それが頭の中に無いのであれば、そこから考えてくれる建築士=コンサルタントにも発注しましょう。
そして、自分の作りたいサイトが具体的になってから制作会社に連絡を取り、そこから初めてどんなWEBサイトを構築していくかを話し合いましょう。
より具体的であればあるほど制作会社はあなたの理想に近く(理想通りにはできません)作ってくれます。
「あなたの頭の中にあるものをすべて具体的に書き出す」ことを「要求定義」と言います。
この情報だけでは、残念ながらWEBサイトの構築には入れません。
制作会社と「どんなWEBサイトを構築していくかを話し合う」ことを「要件定義」と言い、あなたの要求定義からさらに細かく内容を決めていきます。
この要件定義の段階で初めて、どんな建材を使うべきか、配管をどうすれば要求が満たせるのか、シンクの高さは何センチにするべきか、その素材は、収納の扉は両開きにすべきか片開きで良いのか、窓の高さはどのくらいで通常のガラス素材なのか二重サッシなのか、コンセントの数と位置、高さは、コンセントカバーはどんなものに、スイッチの大きさは、バリアフリーで床の段差は何センチまで許されるのか、防音性能や耐震性能、断熱材はどのようなものを使うのか、などなど
WEBサイトで言うと、フォームのバリデーション(入力制約)はどうするか、サムネイルの画像サイズは、グロナビの表現方法は、クリック時の動きをどうつけるか、ページが存在しない時の404は、サイトマップXMLの作りは、リンク色は、規約はべたテキストかインラインか、セッションの保持期間は、カテゴリの他にタグは必要か、どのくらいのアクセスに耐えられるべきか、ダウンタイムはどのくらいを許容できるのか、応答速度は、などなど
その要件定義を基に、制作会社は開発言語を何にするか、DBの構造は、フロントサーバは何台にすべきか、フレームワークは、APIに何を採用するか、などを決めていきます。さらにどんなスケジュールでどういう風に作っていくかを部品単位で決めていきます。
これが設計です。
間違えちゃいけないこと
ここで間違えてはいけないことは、最初に掲載した記事にもあるように「建て主の権限を越えない」ことです。
要求を満たすために制作会社が選ぶフレームワークを指定しない、とか、DBのエンジンを指定しない、ましてや言語を指定しない。制作会社によって得意なつくり方というものがありますし、相性もあります。
要するに設計にまで立ち入ってしまうと、上手く行かないことが多くなります。当然、要求通りの設計になっているかは確認する必要があります。ですが、こう作れ、と指定するのは素人としてやってはいけないことです。
そのために要求をしっかりと決め、要件定義で真摯に話し合い、決まった後は信頼して待つことが大事です。
もう一つ、お金と時間です。
これも建て主が指定することは基本的にできません。
予算は決められます。無制限に豪華なものを建てられても困りますから。
ですが、予算内で何ができるかを決めるのは建築会社ですし建築士です。そこが擦り合わないのであればグレードを落とすなり機能を削るしかありません。それを無理言ったとしても、決して良い物はできません。
なぜなら、制作会社も人件費を使って請け負っているからです。家を建てるのが大工さんなら、WEBサイトを作るのはエンジニアさんです。予算は削らないがグレードの高いものを作れ、と言ってしまうと、制作会社は実入りに対して余計なコストをかけなくてはならなくなります。
当然不満も溜まりますし、モチベーションも上がりません。なるべく早く終わらせたいと思うでしょうから、丁寧なつくりにもなりません。
スケジュールも同じです。
いつまでに作れ、と言ってしまうとエンジニアは無理をしなければなりません。夜中まで働き、土日も出勤して作ることになりかねません。
人間疲れると当然良い物は出来上がりませんし、ミスが多くなります。
結果としてグレードの低いものが工期遅れで出てくる結果につながります。
こればかりはいくら頑張っても無理なのです。
予算やスケジュールについては要求定義を提示する際に盛り込んでおき、制作会社から無理なスケジュールであると指摘があれば従いましょう。
要求定義の段階で、あなたはそのWEBサイトがいつまでに作れるか想像できますか? できないと思います。
だって、あなたは作る人の実力も、人数も、作り方もまだ知らないのですから。
だったら余裕を持ったスケジュールを持つか、事前にコンサルタントや制作会社に相談して現実的なスケジュールを決めましょう。
社内事情も上司の圧力も、良いWEBサイトを作るための材料にはなりません。
むしろ、逆に悪くする材料になってしまいます。
そして、それは結果的にあなたの評価を下げますし、モチベーションを下げていきます。
さらには利用するユーザーにも悪影響が出るでしょう。
だって、クオリティの低いWEBサイトの一番の被害者は、いつだってユーザーなのですから。
サポートいただけると嬉しいです。 いただいた費用は画集や資料、イラスト制作ガジェットの購入に充てさせていただきます。