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化粧品で活躍する粉体を深堀り|化粧品アウトプット#30

きむっちです。

化粧品において粉体が大きな役割を果たしています。#29でも紹介しましたが、顔料では粉の状態で使うことが多いわけです。

今回の記事では化粧品で活躍する粉体の性質そのものについて深堀していきます。

この記事を読むことで、粉体について深めていくことができますよ。

【この記事を読んでいただく前に】

この記事を読んでいただく前に#29で解説した色材(しきざい)のことを振り返っておくとさらに面白くなりますよ。

#29の記事はこちら

化粧品での「粉体」とは

まず、化粧品における「粉体」というのは、次のようなものになります。

粉体(化粧品):粒径20nm~20μmの粉

ここで、長さの単位として次のようになります。

1μm(マイクロメートル)
 :1mm(ミリメートル)の1/1000倍

1nm(ナノメートル)
 :1μm(マイクロメートル)の1/1000倍

この大きさを見るためには顕微鏡(けんびきょう)が必要になります。

顕微鏡についてもう少し詳しく知りたい方はこちらをご覧くださいませ。

【粉体の2種類の性質】

ここで、粉体には次の2種類の性質があります。

● 物質としての性質
● 粉体・粒子としての性質

【粉体の評価方法】

粉体を評価する方法として、次のようなものがあります。

● 嵩密度(かさみつど)

粉としての単位体積当たりの重さを見ます。
この重さによって充填度合いが変わることになるんですよ。

● 粒径分布(りゅうけいぶんぷ)

粉体の粒子の大きさ(粒径)も影響します。
細かいところになりますが、20μmと200μmのものを水に分散させると全く異なるのです。

また、ある程度の粒径のバラつきもあります。

さらに、粒径のバラつきによって化粧品の中での分散性に影響することもあるんですよ。

水や溶媒に分散させたときにドロドロしたものになるのか、サラっとしたものになるのか、大きく異なります。

● 細孔分布(さいこうぶんぷ)

目で見えないような粉にも小さな穴があります。
そして、粉の作り方によって穴の大きさが変わることがあるんですよ。

穴の大きさのバラつきのことを細孔分布(Pore distribution)と言います。

ミクロ粉体の細孔の大きさを見るために液体窒素の温度下(-196℃)での窒素ガス(N2)を吸着・脱着を通じて評価することがあります。

また、この細孔分布の測定を通じて粉自体の表面積を評価することもあるんですよ。

窒素吸着から得られた粉自体の表面積のことを比表面積(ひひょうめんせき)と呼ぶこともあります。

詳しい説明は省きますが、BET比表面積と呼ぶこともあります。

● 触媒活性(しょくばいかっせい)

小さい粒子になるほど触媒活性も影響してきます。
洗剤に含まれているゼオライトはシリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)でできていて、イオン交換以外に酸塩基触媒として使われることもあります。

シリカとアルミナではSiとAlの価数が違うと電荷のバランスが崩れるんですね。それによりゼオライト表面での酸塩基反応が起こることになります。

ゼオライト以外の粉体でも微粒子になると触媒活性を発揮しやすいものがたくさんあるんですね。

その1つとして酸化チタンがあります。

酸化チタンは顔料としても使われるのですが、光触媒(ひかりしょくばい)としても機能することがあるんですね。

そのため、化粧品として使う場合でも光触媒特性を把握しておくことが大切になるのです。

触媒活性が高いものを使うと化粧品全体としての影響も出てしまうことも。そのため、触媒活性の評価も必要となります。

また、触媒活性を抑えるために粉体にコーティングが施されることもあるんですよ。

● 接触角(せっしょくかく)

車に乗っているときに雨が降ると水滴が残りますよね。これはガラスの上に水滴が乗っかっている状態だからです。

この水滴がまったくくっつかないもしくは雨の水滴がガラスに付いた瞬間に広がったら水滴として残らないですよね。

このようになるのはガラスの上についた水滴の広がり方が異なるからです。
この水滴の広がり方を角度(かくど)として評価するわけです。

このときに得られた角度の値を接触角としています。

この接触角をわかっておくことで化粧品の濡れ性(ぬれせい)にも大きく響くんですね。

外に出かけたときに化粧をして化粧が落ちてしまうのも、化粧品の濡れ性が大きく影響しているんですよ。

このようなことから、接触角の評価も大きな要素になります。

● その他

その他として次のようなことも影響します。
詳しく知りたい方は下に添付した書籍からご覧くださいませ。

 ● 表面色の制御
 ● 等電点
 ● 生体親和性制御

最後に

化粧品での粉体を小さく見ていくと相当深いところまで考えられていることに気づかされました。

化粧品では粉体そのもの以外の性質も加味して作られているので、1つの化粧品が市場に出るだけでも素晴らしいことなんですね。

これから化粧品開発に携わられる方は粉体としての性質をさらに深く勉強してみてはいかがでしょうか。

次回のお知らせ

次回は化粧品が紫外線をどのように防止しているのかについて解説していきます。

化粧品でも光触媒の話が出てきますよ。お楽しみに!

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最後までお読みいただきありがとうございます。

もっと詳しく知りたい方はこちらの本を参考にしてみてください。

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コメントもめっちゃ嬉しいです。

<きむっちの自己紹介の記事はこちら>

光触媒についても少し触れています。



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