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日本の真ん中で桜と富士山を撮る

季節の先取りこそ、日本の伝統美。
着物や器の絵柄といい、食材といい、和の文化は旬を大切にしてこそ美しい。
私にとって、そんなことを特に考えさせられるのが桜の季節です。

まだかまだかと期待の高まるなかで美しく花開き、
艶やかに春を染め上げたと思ったら、あっという間に散っていく桜。
東北や北海道ではまだこれから楽しめる場所もあるようですが、
早くも青空にはためく鯉のぼりを見かけ、
今年の桜は終わってしまったなぁとしみじみ思いながら、
桜餅と柏餅はどちらかに決めきれず、しっかり両方頬張っています。

実のところ仕事では、今年のサマーシーズン用の
取材撮影や原稿制作も終わり、もはや夏休みくらいの勢いなのですが、
一方でまったく季節に追いついていないのが自分の感覚。

先々週に見た桜の印象がいまだ脳裏を離れず、
ぼんやりと春霞のかかったアタマで過ごしている私は、
日本の伝統的美意識からの落伍者なのかもしれません。

いつだって、季節を先取りすることよりも、
名残を惜しむことのほうに意識が向いてしまうのは、
子供の頃から常に人に後れをとってきた私の宿命なのか、
それとも単なる感性の鈍さなのか。。。

しかし、こんな無粋な人間にとっても、やはり桜は美しい。
毎年、花粉症のせいで桜が散るまでは外出をしぶる我が夫の尻をたたき、
今春はなんとか山梨の名物桜見物に行ってきました。

身延山久遠寺のシダレザクラや慈雲寺のイトザクラ、
日本最古の樹齢約2000年を誇る「山高神代桜(やまたかじんだいさくら)」、
樹齢330年の「わに塚の桜」などなど。
「山高神代桜」と「わに塚の桜」はいずれもエドヒガンザクラだそうで、
山梨ではソメイヨシノが作り出す春の景色とは、
また違う趣を楽しむことができます。

さらに山梨の魅力といえば、桜と山々とのコラボレーション。
特に富士山とのコラボレーションともなれば、
なおのこと日本人としての心がくすぐられてしまいます。

現地に行くまで知らなかったのですが、「わに塚の桜」は、
その向こうに富士山を望む絶景が有名なスポットだったようで、
撮影ポイントには、桜×富士山狙いで訪れていらっしゃるカメラマンさんが大勢。私は全然、装備を揃えていなかったものの、せっかくなので
皆さまの中に混ざり、なんとか隙間から撮影にトライしてきました。

この撮影中、隣で撮影されていた方々の会話で聞こえてきたのは
「インスタにはすぐアップしたほうがいい」
「特に富士山の写真は鮮度が命」といったようなお話。
旬を大切にする日本の伝統的な美意識が、
現代のSNS文化にもしっかり息づいていることを
思いがけず、目の当たりにした時間でした。

ちなみに「わに塚の桜」が立っているのは、日本列島のヘソ(中心)の候補地の一つである山梨県韮崎市。まさに中心地とされる韮崎市大草町のすぐ近くです。

日本列島のヘソとはどこか?という議論には、いくつか説があるそうですが、
韮崎市大草町は、「最北端・稚内市と最南端の鹿児島県佐多岬の二点を円で囲んだ中心点と、日本の最東端・南鳥島と最西端・与那国島との中心の経緯が交差する中心地」なのだそう。

いまいちよく理解していませんが、ともかく、
日本の真ん中に立つ桜と富士山のコラボレーションなんて
なんだかすごくパワーがもらえそうな気がしませんか?

まだ訪れたことがないという方は、ぜひ来春!カメラを持ってお出かけください。地元の方によると、富士山は夕方のほうが姿を現しやすいそうです。


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