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映画#145『ゴーストバスターズ/アフターライフ』

『ゴーストバスターズ/アフターライフ』
(”Ghostbusters: Afterlife”)


監督:ジェイソン・ライトマン
原作:『ゴーストバスターズ』
出演:キャリー・クーン、フィン・ウルフハード、マッケナ・グレイス、ポール・ラッド、ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、アーニー・ハドソン、アニー・ポッツ、シガニー・ウィーバー、他
製作会社:コロンビア ピクチャーズ、ブロン・クリエイティブ、ゴースト・コープ
配給:ソニー・ピクチャーズ リリーシング
公開:2021年11月19日(米国)2022年2月4日(日本)
上映時間:124分
製作国:アメリカ合衆国

Wikipediaより引用

【あらすじ】
都会での生活が苦しく、母と兄の3人で田舎町へと引っ越してきたフィービー(マッケナ・グレイス)。この町では、30年間にわたり原因不明の地震が頻発していた。祖父が遺した古びた屋敷で暮らし始めたフィービーは、リビングの床にほどこされた奇妙な仕掛けに気づく。さらに屋敷を探るフィービーが祖父の地下研究室で目にしたのは、見たことのないハイテク装備の数々だった。祖父がかつてゴーストだらけのニューヨークを救った《ゴーストバスターズ》の一員だったことを知ったフィービーだったが、床下でみつけた〈ゴーストトラップ〉と呼ばれる装置を誤って開封してしまう。それをきっかけに不気味な緑色の光が解き放たれ、町ではさらなる異変が起こり始める…。

Filmarksより抜粋

画像出典:映画.com

80年代のハリウッドを代表する名作『ゴーストバスターズ』。89年には続編、2016年には女性版ゴーストバスターズとしてリブート作品が作られるなど、その人気は公開から約40年経ったいまでも衰えていない。そして2021年、新たなる『ゴーストバスターズ』が再び公開されることとなる………

『ゴーストバスターズ/アフターライフ』、新たなるオバケ退治の始まりだ。


そもそも『ゴーストバスターズ』が何故世界的な人気を博したのか?その主な理由として挙げられるのが「コメディ」「ホラー」「アクション」といった複数のジャンルの融合というものだ。

本来は交わらないハズのジャンルたちが混じり合い、それでいてストーリーの混雑も見受けられない、当時としては非常に完成度の高い作品に仕上がっていたのである。

とは言えど、『ゴーストバスターズ』の大半を占める要素なのはやはりコメディ要素だ。秀才ではあるがいい加減な性格のペングマン博士から発せられるジョークをはじめ、非常〜〜〜に軽いノリで物語が展開される。

この「軽いノリ」こそが『ゴーストバスターズ』シリーズにおけるメインとなる要素であり、このスタンスは後の続編でも受け継がれている………今作を除いては。


いつものコメディ的要素が排除され、代わりに少年少女によるちょっぴりシリアスなゴースト退治が繰り広げられる今作。孤独な少女と親の対立、街で起こる不思議な出来事、そして少女ら家族に隠された秘密………この時点で、どうにもいつもの『ゴーストバスターズ』とは異なるものだと多くのファンたちが気づいたはずだ。

ちなみに主人公である少女の名前はフィービー・スペングラー。ゴーストバスターズのオリジナルメンバーの1人、丸メガネが印象的なイアン・スペングラーの孫娘である。ゴーストバスターズの事実上解散後、イアンが後世を過ごしていたという家にフィービーら家族は暮らすことになり、その過程で彼女らは数々の遺品を目にすることになる。PKEメーター、ビームパック、そして「No Ghost」マークが特徴的なECTO-1………。

そんなフィービーたちが、亡き祖父に代わってゴースト退治を始める………そう、今作は言わば「継承の物語」なのである。ゴーストバスターズの意志を継ぐ子供たちによる新たな『ゴーストバスターズ』、そう考えればギャグ要素の消失も頷けるかもしれない。


だが旧作の要素が全くないという訳では決してない………むしろ物語の流れは初代『ゴーストバスターズ』のストーリーを汲んだものであり、その随所に原作再現とも言うべき小ネタたちが隠されている。こういった「元ネタ探し」という1つの楽しみ方は、間違いなくリブート・或いは長いブランクを経て作られた続編作品ならではの特徴だと言える。

一方、こういったリブート的作品は原作を知らない・見ていない人でも楽しめるように作られていなければならない。例え原作再現やオマージュに力を入れていても、映画としての出来栄えがイマイチであれば本末転倒もいい所だ。

シリーズのマスコットキャラ「マシュマロマン」も登場。ちっちゃいけど。

その点に関して、今作はまさに完璧と言っても過言ではない完成度を誇っていた。原作を知らない人には「全く新しいゴーストバスターズによる活劇」として、知っている人には「かつてのゴーストバスターズを継承する物語」として、それぞれ満足して映画館を去れるような作りとして完成されている(無論、今作を隅々まで楽しめるのは後者であることに違いないのだが)。


原作の再現ネタに関して、旧キャストの登場というサプライズまで用意されている。ヴィランである破壊神ゴーザの復活はもちろんのこと、門の神ズールと鍵の神ビンツは原作通りの化け物の姿で登場。

序盤ではゴーストバスターズ本部の受付をしていたジャニーン・メルニッツが登場し、変わって終盤ではオリジナルメンバーであるベンクマン、レイモンド、ウィンストンが満を持して登場。

シリアス続きな今作だったが、彼らがスクリーンに映された瞬間に場の空気が一転。いつものベンクマンのジョークが炸裂し、これにはフィービーたちもゴーザもポカーン状態。

かつてゴーザを屠った交差ビームが効かず、ウィンストンが放った「こんなに激務だったっけ?」というセリフには最早笑うしかない。やはり『ゴーストバスターズ』にこの3人は欠かせない、そう再確認させられるような展開だった。


そして、故ハロルド・ライミスが演じたイアン・フレミングが霊体で登場する、という粋すぎる演出にファンの涙は一気に涙腺崩壊。如何なる形、それが例えCGでもハロルドを出演させた制作陣にはただただ感服せざるを得ない。

そもそもイアンは物語の最初からフィービーと出会い、交流していたのである。フィービーが地下の部屋を見つけ、まるで彼女を導くかのように勝手に動き始める引き出しやライト、そんな世にも奇妙な怪奇現象にあっさりと順応するフィービー………

今作は継承を題材にした物語であると同時に、イアンとフィービー、祖父と孫娘、家族の絆を描いた物語でもあるのだ。


実は2022年公開当時に今作を劇場にて一度鑑賞した………のだが、愚かにも私は初代『ゴーストバスターズ』を未見のまま今作の鑑賞に臨んでしまったのである。

今思えば本当に惜しいことをしたと思う………前日に金曜ロードショーで初代やってたやんけ!!!なーにそれ観ないで呑気にゲームなんかやっとんじゃ!!!と当時の自分を思いっ切りグーパンチしてやりたい所存だ。

そして今回、原作もしっかり履修した上で配信媒体にて鑑賞した訳だけれど、ありとあらゆる小ネタや伏線回収までもが成されていて観ていてとっても楽しかった。最後はふつーに泣いてもうたし。

また初代『ゴーストバスターズ』にて監督を務めたアイヴァン・ライトマンが亡くなり、息子のジェイソン・ライトマンが今作の監督を務めたというのも何だかとても胸アツだ。作中だけでなく、こういったメタ的な方面でも「継承」の要素が出てくるとは………

昨今では忌避されがちな過去作のリブートだが、こういう原作愛に満ちたものが増えることを祈るばかりだ。

それではまた、次の映画にて。

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