映画#108『エリジウム』
環境問題、階級差別……現代社会におけるシビアな部分を抽出したダークSF。
「地球の環境がダメになっちゃった!よぉし地球脱出だ!!」という世界観、及びタイトルにもある上流階級の国民のみが移住できるスペースコロニー「エリジウム」の形から『インターステラー』を想起させられた人は多いはず。
んじゃあ地球の人々はどんな暮らしをしているのかというとそりゃーもう酷い。高級街なんてものは存在せずスラム街オンリー状態。何ならまともな医療機関すら存在せず、最早街として機能していない。
その一方でエリジウムの中は非常に綺麗かつ整った設備を備えているが故に、地球の下流階級の人々はエリジウムへの移住、及び向こうの設備での病気の治療を夢見ていた。マット・デイモン演じる主人公・マックスもまたその一人。
主人公が何かと不憫な目に遭わされる映画は多々あるが(『ジョーカー』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などなど……後者は不憫どころじゃないかもしれない)、マックスの境遇もまさしく踏んだり蹴ったりだ。職場の工場では何の変哲のない日々を過ごし、刑務所の観察処分はいつまで経っても消えず……
挙げ句の果てには工場長からの理不尽な命令の末に被曝し、余命5日の命に。こんな理不尽なことあってたまるか、という不条理に満ちた展開……我慢の限界を迎えたマックスは「上」、即ちエリジウムに赴き、自らを治療することを決意。
弱り切った身体に鞭打たせ、パワードスーツを身に纏い、自らの運命に抗い、壮絶な戦いへ身を投じる……。
というわけで「自分が生き残る」ただそれの為だけに奔走し続けるマックス。余命5日という残酷な真実を告げられて間もないのにも関わらず行動に移せるのは尊敬にすら値するが……
何故主人公がここまで「生き残ること」に固執しているのか、その真意を私は全く読み取れなかった。理不尽な死に方をしたくないからなのか、或いは純粋な生存本能によるものなのか……
最終的にマックスの脳内に「全人類をエリジウムの住民として再設定する」というデータが埋め込まれ、そのアップロードのためにはマックス自身の命を捨てなければならないという事実が発覚するが、その決断にマックスは「いいんだ、やれ」とOKサインを出す。
直前にマックスの幼馴染とその子供(末期の白血病に罹っている)に出会ったことで気持ちが揺らいだというのは想像に難くないが、「そんなに簡単に自分の命捨てちゃうの!?あんなに生きたがってたのに!!??」と少々驚いてしまった。
とはいえ、現代社会における問題に鋭く切り込んだダークな雰囲気が際立つSF系の作品にしては、「上流階級 VS 下流階級」という明確な対立構造も相まって、特段難しいことを考えずに鑑賞できる作品に仕上がってはいるというのが率直な感想だ。
私自身、「なんか難しそうな作品だなぁ」と若干構えていた為に、このギャップはむしろ喜ばしいものだったと言える。加えてアクションシーンにて用いられた銃などの装備も、(若干見た目が汚れてはいるけれど)性能はしっかりと近未来的世界観に準じたものであったため、これもまた「ダークSF」らしい要素だったなと腑に落ちる。
けど強いて言うならアクションはもう少し丁寧な映像にして欲しかったかも……良くも悪くも荒々しすぎて何が起こっているのか全然わからん。笑
それではまた、次の映画にて。
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